夏の終わりごろから毎年数件受けることがある「微熱」の相談。
漢方薬の中にはこの微熱に対して効果のある処方がいくつかあります。
微熱の相談は多くが病院の検査で原因不明とされていることが多く、数か月に及んでいる方は「治らないのではないか?」とか「大きな病気を見つけれていないのではないか?」と不安になっていることもよくあります。
微熱の対応はその原因を的確に漢方的に見極めることが大切です。
風邪を引いたりして発熱後に微熱が少し残り、胃腸の調子も少しすぐれず、口が粘ったり、乾いたりするときには小柴胡湯や柴胡桂枝湯を選びます。このタイプは微熱が始まって数日ぐらいの時が一番よく効くタイプで、漢方的には邪気が少陽位に居座っているといいます。これらの処方を飲むと小便が少し多く出てきて微熱が下がっていきます。
胃腸風邪を引いた後にもこの微熱が出ることがあり、この時もこれらの処方を用います。あと軽い腎盂炎にも使われます。
扁桃腺が腫れて微熱が出る場合には、小柴胡湯や柴胡桂枝湯に桔梗石膏を同時に使うと症状がよくなります。
神経質な方や神経を使いすぎて微熱が出てくることもあります。この場合神経症状が伴っていることがよくあり、最近受けた相談では心因性の膀胱炎や不眠症が出ている方がありました。
この場合、微熱を下げるというよりは神経を落ち着かせる、漢方的には気の乱れを解消し、よく眠れるようにしてあげると微熱が下がってきます。
膀胱炎症状を伴っている方には清心蓮子飲がよく効き、不眠症の方には加味帰脾湯と黄連阿膠湯がよく効きました。
あと、過労や手術、出産が原因で微熱が続く場合があります。漢方では「虚労の熱」と呼んでいる状態で体の中に本来あるものが不足して起こる発熱とされています。
過労の場合多くは「気虚」という状態で発熱していることがあり、この場合「気を補う」ということで微熱がとれます。気はエネルギーですから本来「気が不足」すると冷えると思われますが、脾胃や肺、腎の気が少し足りない状態になりそれが回復できないとほかの臓腑の気が補おうと盛んになりすぎて発熱するのではないかと思います。この時には「気を補う」補中益気湯を中心にして対応すると少し時間はかかりますが微熱が取れてきます。
手術や出産でも気虚になって微熱が続くこともあります。また手術や出産の場合、「血虚」という体の栄養状態のバランスが崩れて微熱が出ることもあります。この場合は当帰や何首烏の配合された漢方薬を使うと微熱が引きます。