映画 ″鉄道員(ぽっぽや)″ 舞台の駅、120年余りの歴史に幕【惜別・根室本線 部分廃止③】 | 湘南軽便鉄道のブログ

湘南軽便鉄道のブログ

「湘南軽便鉄道」です。

本ブログは鉄道・バス・船舶・航空機等について、記録も兼ねて記事掲載。

その他、5インチゲージ自家用乗用鉄道「湘南軽便鉄道」についても掲載。路線は湘南本線(ベランダ線・路程約0.01km)があったが現在廃止。新たな庭園鉄道敷設の構想中。

(前回記事の続き)

(″鉄道員(ぽっぽや)″ ロケ地の幾寅駅)




さよなら根室本線 
〜富良野・新得間部分廃止〜
2016年(平成28年)8月31日の台風10号被災により、東鹿越〜新得間の鉄路が長期間不通(バス代行)のJR根室本線。
不通区間を含む富良野〜新得間は元々利用客が少なく、JR北海道の単独維持困難路線に含まれることもあり、2024年(令和6年)3月31日(日)の最終運行をもって富良野〜新得間(実際上は石勝線と合流する上落合信号場まで)部分廃止。





●在りし日の根室本線③ 後編
根室本線のキハ40普通気動車と代行バスを乗り継ぎ、午前8時14分 幾寅(いくとら)駅到着、ここで下車

台風災害により長期間列車が来なくなった駅は、鉄路が復旧することなく、そのまま廃止になる。

JR根室本線部分廃止後は、東鹿越〜新得を結ぶJR代行バスは運行終了になり、バスの路線網が変わる。


幾寅駅は北海道空知郡南富良野町の中心駅で、鉄道利用者の殆どは、幾寅駅近くの高校に通学する学生


幾寅駅の駅舎には、実在しない「幌舞駅(ほろまい)」の駅名板が掲げられいる。
ここは、1999年(平成11年)公開、俳優高倉健主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地になった駅。幌舞駅は映画設定上の架空の名称で、炭鉱輸送の終着駅として登場。


実際の駅名「幾寅駅」はこちらに小さく表示

駅前には映画で使われた気動車のカットボディを保存

映画撮影のために改装された幾寅駅の駅舎(幌舞駅」は映画設定上の駅名)

駅舎内へ。

駅舎内は、映画ロケーション記念展示コーナーになっている。






幾寅駅発車時刻表。鉄路不通の現在は全てバス代行輸送。下り方面4本、上り方面5本のみの閑散区間だが、富良野駅〜幾寅駅間は朝夕を中心に高校生が大勢利用。
「汽車見にきたんかい、汽車見にきたんなら、もう夕方まで汽車こねえよ。」(映画セリフ、以下同)


映画セットの駅舎内は今も綺麗に保たれている。




映画ポスター





駅舎内は、綺麗に飾られた花の良い香りが漂う。


ホーム側


根室本線のホームは、駅舎から一段高い位置にある。


駅舎脇には、国鉄時代のコンテナが置かれている。




こちらが本当の駅名

ホームから見下ろす駅舎


台風災害で鉄路が途切れ列車が来ないホーム。月日が経ち、線路は日に日に雑草に覆われていく。

東鹿越駅、富良野駅方面を望む。


新得駅、帯広駅方面を望む。

幾寅駅は、かつて大正時代から昭和時代初期にかけて、幾寅森林軌道(馬車鉄道)の駅土場があった。

ホームから望む駅舎と、南富良野町の中心・幾寅の街

駅前には、映画に登場した気動車のカットボディ

住民の通り道だった、いわゆる「勝手踏切」

かつては、石狩地方と道東(帯広、釧路方面)を結ぶ重要ルートだったが、短絡ルートの石勝線開通とともに、根室本線滝川〜新得間は閑散ローカル路線と化し、ついに鉄路が無くなる。

東鹿越駅、富良野駅、滝川駅方面に延びる線路

廃止が決まり、二度と列車が来ることはない不通区間の線路には雑草が生茂る。
「鉄道が出来る前の原野に戻って鉄道は忘れ去られちまうさ。思い出が残る。楽しかった思い出が。」


新得駅、帯広駅方面に延びる線路

腕木式信号機がオブジェとして保存

駅前には映画記念植樹

駅前には、映画で登場した気動車「キハ12  23」(キハ40 764)のカットボディを展示保存

この展示車両は、映画撮影用として大改造したもので、映画撮影後は定期列車や臨時列車として営業運転していた。車両の経年劣化を表現するために映画スタッフによりわざと「汚し」も入れられている。展示保存を開始してから時も経過し、国鉄首都圏色の塗装自体が雨雪で本当に色褪せてきた。

映画「鉄道員(ぽっぽや)」用改造車「キハ40 764」
映画撮影用として、当時釧路運輸車両所に所属していたキハ40 764をJR北海道苗穂工場で大改造。同作品に登場するキハ12形を再現するため、側窓部をバス窓風に、車両前面のパノラミックウィンドウを平窓に、前照灯を1灯式に改造。
また、塗装は経年劣化の汚しを表現し、形式番号表記は「キハ12  23」とし、映画撮影に使用。

撮影終了後は、JR北海道旭川運転所に配属し、前照灯をシールドビーム2灯化、本来の形式番号「キハ40 764」を小さく追加表記。
根室本線の滝川〜富良野〜幾寅〜落合間の臨時快速列車「ぽっぽや号」等として走行。その後石北本線で運用された後に廃車となり、車体は2分割され、幾寅駅前でカットボディを展示保存。


バス窓風に改造された側窓

床下の台車


内部も見学できる。



キハ40のパノラミックウィンドウの一部を塞ぎ、平窓に改造した跡がうかがえる。

実際のキハ12形気動車は22両製造されたため、23番目のキハ12という意味で「キハ12  23」としたそう。



カットボディ化される前の営業運転時は、車内に映像モニターがあり、走行中に映画関係の映像が流れていた。

昭和20〜30年代のいわゆる「バス窓」を再現



車内には、映画「鉄道員」出演者のサイン色紙を展示。主演の高倉健をはじめ、小林稔侍、大竹しのぶ、田中好子、志村けん、吉岡秀隆、広末涼子など。








国鉄マーク「JNR」が入った扇風機

外板だけキハ12形を再現したバス窓風に改造した苦労がうかがえる。キハ40形極寒地仕様の窓が二段開閉式ではなく、一段上昇式だったため、バス窓風に改造できたといえる。




バス窓に改造されたキハ40





車両前面のパノラミックウィンドウは、平窓化


本来の形式番号「キハ40  764」は小さく表記


幾寅駅の駅前には、映画撮影用の建物セットがいくつも残る。






奥の山には、国設南ふらのスキー場(南富良野町営)が見える。















「もう夢でしかあえんな」

「俺とお前とでこのぽんこつに引導渡してやるで」


「キハはいい声で鳴く。新幹線の笛も、北斗星の笛もいい声だけど、キハの笛は、聞いて泣かさる。」

南富良野町は、JR根室本線廃止後、幾寅駅舎や駅周辺の鉄道用地をJR北海道から取得し、観光資源として残す予定。

「キハの笛は胸に響くでしょ。わけもないけど胸にひびくんや。聞いて泣かせるうちはぽっぽやもまだまだ、まだまだや。」


2014年俳優 高倉健没..あれから間もなく10年。2024年春、鉄道員(ぽっぽや)の鉄路はその歴史に幕を閉じる。





《NPO法人南富良野まちづくり観光協会SNSより》
幾寅駅かつての駅スタンプ

幾寅駅現在の駅スタンプ






幾寅駅前からは、占冠村営バスが、JR石勝線のトマム・占冠方面とを結ぶ。




幾寅駅から再び列車代行バスに乗り、鉄道員(ぽっぽや)の舞台を後に…


幾寅(いくとら)駅午前8時58分発の、JR北海道の代行バスに乗車。運行会社は、ふらのバス。
空知川上流の人造湖・かなやま湖が、バスの車窓に見え隠れする。


東鹿越(ひがししかごえ)駅、午前9時07分到着

東鹿越駅で、根室本線の普通列車に乗換え

東鹿越〜新得間が長期不通のため、実質上終着駅の東鹿越駅。根室本線・富良野〜新得間の廃止が決まり、このルート上にある東鹿越駅も間もなく廃止の運命にある。

無人の駅舎

富良野・滝川方面に向かう列車本数は一日5本のみ。うち1本は快速。



根室本線、東鹿越始発・滝川行き普通列車に乗車


キハ40形1700番台気動車

富良野方面へ延びる線路

国鉄時代の気動車が今も残る。




午前9時15分、東鹿越(ひがししかごえ)駅を発車


空知川上流部の人造湖・かなやま湖を渡る。



金山(かなやま)駅

根室本線の廃線予定区間を行く。

この駅も間もなく長い歴史を終える。


国鉄時代の塗色のコンテナが置かれている。


下金山(しもかなやま)駅(ホームは反対側)

山間部から富良野盆地へ。
夕張岳や芦別岳などの山々


山部(やまべ)駅

空知川(そらちがわ)を渡る。



布部(ぬのべ)駅(ホームは反対側)
木製電柱が残る。

  
午前9時54分富良野(ふらの)駅に到着
この滝川行き普通列車は、富良野駅で10時07分まで13分間停車(滝川到着は11時12分)

「北海道のへそ」と呼ばれる富良野は、北海道のほぼ中心に位置することから、へそ祭りが有名





★動画(動画撮影は2023年(令和5年)9月上旬)↓↓





(次回へ続く)