臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言 -31ページ目

臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言

心に移り行くよしなしごとをそこはかとなく書き連ねています。

 昨年来の新型インフルエンザ騒動では、国費(税金)で購入した約1,000億円の輸入ワクチンが使われることなく、期限切れを迎えつつあり、無駄になったと非難されている。
 また、今春からの口蹄疫の流行では、牛・豚の殺処分に伴う農家への補償費用が最終的には1,000億円近くに達し、その多くを国(国民)が負担する見込みと言う。
 さらに、今年6月28日から来年3月末まで、地方の高速道路の一部が無料化されるが、そのための経費として、国費から約1,000億円が支出される予定となっている。

 1,000億円と言うと、個人レベルでは途方もない大金であるが、国家レベル、それも年間予算が約92兆円(平成22年度)と言う経済大国、日本においては、歳出の0.1%余りに過ぎない。端数とまでは言わないが、国家財政の大勢に影響を与えるほどの金額ではない。

 国政に庶民の感覚を持ち込むことは大切ではあるが、こと金銭感覚については、庶民感覚だけでは、その是非の推し量ることは難しいかも知れない。何が無駄で、何が無駄ではないのか、判断することは容易ではない。


【高速道路の無料区間】
「平成22年度 高速道路無料化社会実験計画(案)について」
http://www.mlit.go.jp/report/press/road04_hh_000011.html

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高速道無料化の社会実験 28日スタートへ
【2010.6.7 産経新聞】

 国土交通省は7日、高速道路無料化の社会実験を28日から全国37路線50区間で実施する方針を固めた。期間は来年3月末まで。当初、普通車を上限2000円とする新料金制度と同時に行う予定だったが、国会審議の遅れで新料金制度への移行にめどが立っていないことから、無料化の社会実験のみを先行的に実施する。
 無料化の対象は、舞鶴若狭自動車道小浜西-吉川ジャンクション(112キロ)、京都丹波道路丹波-沓掛(31キロ)など首都高速道路や阪神高速道路を除く全国の高速道路約1626キロ。自動料金収受システム(ETC)の搭載や大型・普通の車種にかかわらず、すべての車が対象になる。
 無料化の社会実験に充てる今年度の事業費は1000億円。国交省は当初、6000億円を要求していたが、財政難から規模が縮小された。民主党はマニフェスト(政権公約)に原則無料化を掲げており、渋滞の状況や環境への影響などを今回の社会実験で検証した上で、段階的な実施を目指す。
 一方、高速道路の新たな割引制度は、実施に伴って休日の上限1000円割引など現行の割引制度が廃止されることに対し、民主党内から反対意見が噴出。関連法案の国会審議が遅れ、6月の実施予定が先送りされている。

 業務上過失致死傷罪が成立するためには、単に業として、反復継続して行っていると言うだけでは足りず、その業務を行うに当たって、何らかの資格や免許等が必要である場合に限られます。

 つまり、業務上過失致死傷罪に問われるのは、医師免許、運転免許、調理師免許、猟銃免許等々の免許資格を持っているものが過失により、他人に傷害を与えたり、死に至らしめたりする場合です。
 
 なお、本来、免許が必要な行為であれば、無免許のものが行っても、「業務上過失致死傷罪」は成立しますから、注意が必要です。例えば、ふぐの調理免許を持たない者がふぐを料理して、客に食べさせて、人が死ねば、業務上過失致死罪となります。

 しかし、野球選手の場合、特別の免許や資格は存在せず、アマチュアであれば、誰でも投手となることが出来ますし、たとえ、プロ野球でも、契約してくれる球団があれば、誰でも投手となることが出来ます。

 従って、たとえ、「野球ではボールが当たり、それで怪我をすること」があったとしても、ピッチャーが「過失傷害罪」に問われることはあっても、「業務上過失傷害罪」が問われることはありません。
 そして、「過失傷害罪」は親告罪ですから、被害者であるバッターが告訴しない限り、ピッチャーが罪に問われることはありません。

 木ノ元氏の「野球は、ピッチャーもバッターも専門家。一方、医療では、専門と非専門家であり、『一方的に被害を受けた』ということで、責任追及されやすいのではないか」とのコメントは、バッターも専門家だから、ピッチャーを告訴しないという意味だと思いますが、いささか不親切で、不正確なコメントだと思います。

 なお、「怪我」で済まず、バッターが死亡した場合には、野球選手でも「過失致死罪」に問われます。こちらは、被害者が死亡しているので、当然ながら、親告罪ではありません。

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混迷する”医療事故調”の行方
「大綱案は欠陥品、対話型システムの確立を」◆Vol.39
民主党議連WGで木ノ元氏、「広尾病院事件の最高裁判決でも21条問題は解決せず」
【2010年5月27日 m3.com】

 民主党の「適切な医療費を考える議員連盟」の「医療安全管理と医療訴訟に関するワーキングチーム」は5月26日、第2回会議を開催、弁護士の木ノ元直樹氏が講演した。
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◆なぜ野球のデットボールは業務上過失致傷罪にならないのか
 第1回会議に続いて出席した埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター教授の堤晴彦氏は、「我々は刑事免責を求めているわけではない。悪いものは悪い、でいい。しかし、何が業務上過失致死に当たるか、それが分からないのは問題。警察や法務省など、誰に聞いても説明してくれない。それは恐らくできないからだろう。医療、国民、法曹界が納得できるよう、何が業務上過失致死罪に当たるかを議論する場を作りたい」と述べると同時に、「野球ではボールが当たり、それで怪我をすることがある。なぜデッドボールで業務上過失致傷罪が問われないのか。医療も、手術したら合併症が起こり得ることを承知の上でやっている」と問いかけた。

 この点について、木ノ元氏は、「野球は、ピッチャーもバッターも専門家。一方、医療では、専門と非専門家であり、『一方的に被害を受けた』ということで、責任追及されやすいのではないか」とコメントした。
 子宮頸がんとヒト・パピローマウイルス、肝がんとC型肝炎ウイルスなど、ある種の細菌やウイルスが癌(がん)の原因の一つとなっていることが知られている。
 日本人に多い胃がんについても、胃の中に棲み付く細菌ヘリコバクター・ピロリが原因の一つとして知られている。

 そこで、胃がんを予防するために、胃の中からヘリコバクター・ピロリを積極的に駆除・除菌しようと言う医師も少なくない。
 そうした医師らの主張によれば、5年間で5400億円の費用を掛けて、除菌を行えば、少なくとも15万人の胃がん患者の発生を防止し、総額約1兆円の医療費が削減できるという。差引、年間約1,000億円の節減効果があると言うことになる。

 医療費とは、患者サイドから見れば、支払いであるが、医師サイドから見れば、収入である。年間1,000億円の医療費削減と言うことは、医師一人当たりにすると、30万円の減収ということになる。
 多くの医療機関では、この減収を補うために、新たな健診・検査、治療・指導に取り組むことになると予想されるので、トータルの医療費が減少することは、恐らくないだろう。

 とは言え、患者の選択肢として、ヘリコバクター・ピロリの除菌を認めると言うのは、一つの選択肢であると思う。

 除菌による胃がん発生の抑制効果は、ほぼ明らかとなっているのであるから、個人レベルでは、十分に価値のあることであろう。ただし、除菌の効果がどの程度、持続するのかについては、明らかではない。
 一度、除菌に成功しても、数年後に再び、ヘリコバクター・ピロリが棲み付いて、また除菌しなければならないというのでは、費用対効果の面で効率が悪いだけでなく、耐性菌の発生や薬剤による副作用と言う除菌のデメリットも拡大してしまう。

 そういう意味では、すべての感染者への除菌推奨は時期尚早かも知れないが、選択肢の一つとして、保険適用とすることも広く認めて良いのではないかと思う。あるいは、薬剤費のみは全額自己負担とし、その他の費用については保険適用する、いわゆる「混合診療」を積極的に認めても良いのではないかと思う。

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胃がん予防にピロリ菌除菌 学会が「全感染者の除菌」推奨、「証拠不十分」の声も
【日本経済新聞 2010年5月28日】

 胃に感染するヘリコバクター・ピロリ菌は、胃がんを引き起こす要因の一つとされる。昨年、日本ヘリコバクター学会が、すべてのピロリ菌感染者に対して除菌を勧める指針を公表した。胃がん予防の観点から、ピロリ菌除菌の効用はどこまで分かっているのだろうか。
 「現状のままピロリ菌感染者を放っておけば、日本の胃がん治療費は数千億円も膨らむ。除菌治療を進めるのは今しかない」――。日本ヘリコバクター学会の理事長である北海道大学の浅香正博教授はこう強調する。同学会は昨年、すべてのピロリ菌感染者を「ヘリコバクター・ピロリ感染症」と位置付け、抗生物質の投与による除菌治療を推奨する指針をまとめた。

国内に6000万人
 ピロリ菌はらせん状の形をした細菌で胃の粘液にすむ。感染すると、胃炎や胃潰瘍(かいよう)から胃がんに進行しやすくなる。ほかにも様々な病気を引き起こす原因になると考えられ、多くは除菌で予防につながるという。
 日本人は約6000万人が感染しているといわれる。子供のころに水などを介して経口感染すると考えられており、上下水道の未整備な時代に育った中高年以上でとくに感染者が多い。東海大学の高木敦司教授は「日本ではピロリ菌陽性の慢性胃炎患者のうち、毎年3~5%が胃潰瘍になり、0.5%が胃がんを発症している」と説明する。
 今回の指針の根拠になったのが、浅香教授らが2008年に英医学誌ランセットに公表した研究論文だ。早期胃がんで内視鏡手術を受けたピロリ菌感染者505人を2グループに分類。一方にピロリ菌の除菌をし、もう一方は除菌をしなかったところ除菌したグループで胃がん再発率を約3分の1に抑えられることが分かった。同学会は除菌治療によって胃がんを予防する効果が確認できたとしている。
 ピロリ菌の除菌治療は、まず感染の有無を調べる。はき出す息や血液・便などから調べる手法、胃の組織の一部を取りだして調べる手法がある。感染が分かったら菌をやっつける抗生物質など3種類の薬剤を朝・夕食後の1日2回、1週間服用。これで80~90%の人は除菌に成功するが、うまくいかなかった場合は薬の種類を変えてやり直す。下痢や軟便、味覚障害などの副作用が出ることもあるが、一過性だという。

大半は自己負担
 現在、除菌治療に健康保険が適用されるのは、胃潰瘍と十二指腸潰瘍がある人のみ。それ以外の人が胃がん予防などのために実施すると全額自己負担となり、数万円の費用がかかる。ヘリコバクター学会などは、除菌治療の保険適用範囲を拡大するよう国に働き掛けているが、ピロリ菌感染者は数が多く、必要な医療費が膨大になってしまう懸念が出てくる。
 東邦大学の三木一正名誉教授らはバリウムを飲んでX線撮影する現行の胃がん検診に代わり「ペプシノゲン法(PG法)」を提唱する。胃がんの前段階である胃粘膜の萎縮の有無を血液検査で調べる手法で、X線による検診の10分の1以下の費用でできる。
 浅香教授は50歳以上の5400万人にPG法による胃がん検診をし、その結果、対象者に除菌をしたと仮定して費用を試算。5年間で5400億円の費用がかかることが分かった。ただ5年間で胃がんによる死者を15万人減少させ、年間3000億円といわれる胃がん医療費が3分の1に削減される。「長期的には医療費も大幅に削減できる」と主張している。
 ピロリ菌が胃がんを引き起こすことは、今ではほとんど疑いのない知見だ。国立がん研究センターの津金昌一郎予防研究部長を主任とする研究班が過去に40~69歳の男女4万人を15年間追跡した大規模疫学調査によると、ピロリ菌感染者は未感染の人と比べて胃がんを発症するリスクが5.1倍。菌に感染していながら陰性と判定された「隠れ感染者」を含めると約10倍になることが分かっている。
 もっともC型肝炎ウイルス感染者が肝がんに移行する場合などと比べ、ピロリ菌感染者で胃がんを発症する人の比率は高くない。このため、すべての感染者に除菌を推奨する指針に対しては慎重な意見もある。大規模に除菌治療を実施した場合、抗生物質に対する耐性菌のまん延や、思わぬ副作用などの不利益が起こらないとも限らない。
 津金部長は胃がん予防のためのピロリ菌除菌について「状況証拠的には有効」としながらも「エビデンス(根拠)は十分ではない」と指摘する。禁煙や高塩分食品の摂取を控えるなど、別に有効な胃がん予防法もあることから、全感染者への除菌推奨には「さらなる根拠を待つのが現実的だ」と話している。