クレーン謙公式ブログ -4ページ目

芋虫

芋虫は葉っぱを食べ続けた。
何故なのかは芋虫にも分からなかったが、それでもひたすら食べ続けていた。

周囲を見渡すと、植物の葉は芋虫に食べ尽くされていた。
しかしそれでも、芋虫の食欲は収まる事はなかった。
芋虫は他の植物の幹へと移り、そこに生い茂る葉っぱも食べ始めた。

他の昆虫達は芋虫の事を迷惑そうに、または見下すように芋虫を見ていた。
「なんという醜く、いじきたない生き物なのだろう」
他の昆虫は芋虫をそのように見ていた。
しかし、芋虫はそんな事はまったく気にならなかった。
周りの環境がどうなろうと、自分の姿が醜かろうが、そんな事は芋虫にはどうでも良かったのだ。

芋虫はひたすら食い続けた。

まるまると太った芋虫は、ある日食べるのを止め深い眠りについた。
夜中になり月明かりが芋虫を照らし出すと、芋虫の体中から糸が吹き出した。
芋虫は自分の体に起こっている変化を成るにまかせた。
そしてやがて糸が太った芋虫の体をすっかりと覆い尽くした。

暗い静寂に包まれた芋虫は更に深い眠りに入った。
そこで芋虫は声を聞いた。
それはどうやら芋虫に語りかけているようだった。
「・・・誰ですか?この惨めな私に呼びかけるのは?」
と芋虫はその声に言った。
「どうやら君は、生きようという意思をすっかりと無くしているようだね」
とその声は答えた。

「誰でですか、あなたは?」
「私はこの世の全てだよ」
「この世の全て?つまりあなたはこの世の創造主、という事ですか?」
「まあ、なんとでも呼べばいいだろう。私の事を創造主と呼ぶ者もいるね。しかし名前なんてどうでもよかろう。私の事を呼んだのは君かね?」

「いや、僕はあなたの事を呼んだ覚えなんか無い」
「いや、君は心の中で問うたではないか。なんの為に生きているのか、と」
「確かに僕は心の中でそのように言った。しかし、創造主を呼んだ覚えなんかないですよ」
「問うという事は、答えを求めているという事じゃないか。私が答えそのものなんだよ」
「やめてくださいよ、宗教の勧誘は。僕は宗教なんかに興味はないんだから」

「宗教は人間が作った物だろう?君は昆虫なんだから・・・・」
「いや、ですから僕はあなたと漫才をやる気もないんですってば。もう、ほっといてください」
「しかし、そう言いながらも君は依然として問う事を止めていない。問う事を止めていないから私が答えている」
「あなたは誰なんですか?」
「だから言ったじゃないか。私は問いに対する答えである、と」
「ははあ、分かったぞ。これは僕が眠りの中で自分で言っている自問自答なんだ」

「なんとでも解釈すればいいだろう。しかしそれは君が生きる事を止めていない何よりの証拠なのだよ」
「いや、僕はもう生きるのにバカバカしくなりました。ただブクブクと太る為に食べて一生を終えるのが。だからこのまま眠りにつかせてください」
「それが本当の君の望みならば、そうすればいいだろう」
「・・・・助けてくれないんですか?」
「私は誰も助けはしない。私に出来る事は全ての生き物の選択を尊重する事だけだ」
「・・・・神も仏もないですね」

「どうやら君は私の事をよく理解していない。私はプロセスその物なのだよ」
「プロセスに人格なんかあるんですか?」
「だって君は現に私に話しかけているじゃないか」
「あの~、もう少し芋虫の僕にも分かるように言ってもらえませんか?」

「私はこの宇宙に存在する材料の全てだ。そしてその材料を使って何を成すかを選択するのが君という存在なのだよ。
太陽は宇宙に漂うガスを使って自ら輝く事を選択した。
そして地球は太陽の重力を利用して太陽の周りを回転する事を選んだ。
そして地上の植物は太陽の光を食物にして地上に花を咲かせる事を選択した。
創造や進化とはそういう事なのだ。
このプロセスが私という存在だ。
君は選択をしなければいけない。
君が自らの意思で選択をすれば、君は奇跡を目撃する事が出来るだろう。
・・・・君は奇跡を見たくはないのかね?」

「そりゃ、勿論見たいです。しかしさっき、あなたは誰も助けはしない、と言ったじゃないですか」
「それはそうだろう。私はこの宇宙に存在する方程式にような物にすぎない。しかしその方程式を完結させるには君の勇気と決断力が必要不可欠なのだよ」
「芋虫の私なんかに勇気や決断力があると思うんですか、あなたは?」
「それを私は見たいのだ。
信じてほしい。この宇宙や生物はそのようにして進化をしてきたのだから」
「あなたが私の助けを必要としている、という事ですか?」

「勿論そうだ。
君達の選択が無ければ、この宇宙は一歩も前進する事が無いだろう。
私達はこの宇宙や自然界の共同創造者なんだよ」

「僕はてっきり、神が一方的に私達を助けるものだと思っていました!」
「そりゃ間違ってるね。君の選択がなければ宇宙は止まってしまうのだから。もうこの宇宙には全ての条件は揃っている。
あとは君がそれらの中から選択をするだけなのだ」

「後はほったらかしだという事ですか!?」
「いや違う。君が一度勇気を振り絞り、自分が望む最高の選択をすれば、全宇宙が君を手助けするだろう」
「なんだか信じられませんけどね・・・・」
「ふむ。それが君の選択ならば、きっとそうなるだろう」
「と、言いますと?」
「君は自分の作り出した繭の中で、ああでも無い、こうでも無いと言いながら一生を終えるのだ」
「神様ってそんなに優柔不断なんですか?」

「君が優柔不断だと、宇宙は総力を挙げて君が優柔不断になる環境を整えるまでの事だよ。現実は私が作り出しているんじゃない。現実は他でも無い、君が選択をしているのだ」
「あなたが創ったこの宇宙が現実なんでしょう?」
「違うね。君は現実が何なのかを理解していない。
現実とは君達の瞬時瞬時の選択の事を言うのだ。
そして君達はその瞬時瞬時の選択で栄光を勝ち取る権利を有している!」

「私のような芋虫でもですか?」

「そうだ。君は雪の結晶を見た事があるかね?」
「ああ、そういえばこの春先に雪が降りましたね。雪が積もったので間近で雪の結晶を見る事が出来ましたよ。美しかった!・・・さすがに創造主たるあなたの作品だ、と関心しましたよ!」

「ありがとう。しかし、雪の結晶は私が創っている訳ではない」
「そうなんですか?」
「繰り返すが、私は条件を与えているに過ぎない。水が何度まで下がれば凍るのか、という条件を与えているだけなのだよ」
「じゃあ、いったい誰が?」
「水の分子がそれぞれが選択をして雪の結晶を作り出しているのだ」
「水に意思があるんですか?」
「森羅万象、全てには意思がある。水は凍りゆくプロセスで宇宙や自らの美しさを表現しているのだ。だから、ひとつとして同じ形の結晶は存在しない。
何故なら、水が自分の意思でどのような形になるのかを選択しているからね。
もし仮に私が全ての雪の結晶を作り出しているとすれば、雪の結晶はひとつ残らず同じ形をしているだろう?違うかね?」

「なるほど。つまり、僕達芋虫もそれは同じだ、とおっしゃりたいのですね」
「創造者は私ではない。創造者は君達なのだ。私は条件であり、それにプロセスだ。君達は与えられた条件で常に最高の選択が出来、そしてその最高のプロセスを奇跡と呼ぶ。美しい雪の結晶は奇跡ではないのかね?
私は雪の結晶を見る度にその美しさに驚くよ!」

「神様でも驚く事があるんですか?!」
「毎日驚いているよ。君達がする選択はいつも予想外だからね」
「ちょっと待ってください!僕達はてっきり、あなたが全ての運命を握っているのかと・・・・」
「それはいくら私でも無理だな。何回でも言うが、創造者は君達なのだよ。そして生きる喜びとは、創造する喜びに他ならない。
受け身なのは程々にしたまえ。君達生き物は、広がっていく事を本質としている。
萎縮して引きこもり、流されるに任せるのは岩にだってできる。
君は岩じゃない。芋虫として最高の選択をしたまえ!」

「・・・・最高の選択ですか」


「そう、最高の選択だ。君は人間という生き物の事を知っているかね?」
「知ってます。何日か前に人間に捕まって潰されそうになりました。なんとか逃げましたけどね・・・・。人間がどうかしましたか?」
「君達芋虫と人間とでは遺伝子にそんなに違いが無い事を知っていたかね?」
「あんなに巨大で複雑そうに見える生き物と芋虫の遺伝子がそんなに変わらないんですか?」
「そう。芋虫と人間は遺伝子のレベルではさほどの違いは無いのだ」
「へ~。なのにどうして彼らは、あんなに巨大でしかも頭が良いんでしょう?」

「人間が自ら選択をしたのだ」
「選択をして頭が良くなったんですか?」
「そう。遺伝子というのは私が生命に与えた条件に過ぎない。
その遺伝子を使ってどのように進化するかは、それぞれの種の自由意志で決まるのだ。人間という種は何千年もかけて自らの脳を巨大化させる事を選んだ。
そう、人間はこの宇宙の神秘を目撃する為に自らの脳を複雑化させたのだよ」
「そうだったんですか・・・・。なんだか悔しいな」
「なんだね、君も人間のように頭が良くなりたいと?」

「いや、僕は人間のように神秘を目撃するのではなく、僕自身が宇宙の神秘を表現したい!!」

「ほう、ようやく君も夢を語るようになったな。いいぞ。それで?」
「僕はあの雪の結晶のように・・・・いや、この宇宙のように美しく生まれ変わりたい!!」
「他の昆虫は僕の事を醜いと言って馬鹿にした!人間は僕を潰そうとした!
神様、僕は悔しいのです!僕は美しく生まれ変わってみんなを見返したいのです!」

「それが君の願いなのかね?」
「そうです。生まれ変わって他の虫達に羨ましがられたい!特に人間には僕の姿を見て宇宙や自然の神秘を感じてほしい!」
「なんだか復讐みたいだな」
「いけませんか?」
「いいや。なかなかいいよ、芋虫君。私は今とても感動している。君が自らの意思で選択をしているからだ。私は今、君の表層意識と対話をしているのではなく、君の魂と対話をしている」

「私達はひとつなんですね?」
「分かってきたようだね?選択やプロセスとは、つまり君自身の事なのだ。
つまり、私と君とは本来ひとつなのだよ。
君は芋虫という固有名詞なのではなく、美しく生まれ変わりたい、という願いを選択した現在進行形の現象なのだ。
この世には実は固体は存在せず、この世には移ろい行く現象のみが存在する。
君はただ、その真実を受け入れ、そしてその中で最高の選択をすればいいのだ」

「生まれ変わるのに手を貸してくれるのですか?」
「それは、もう問うまでも無いだろう。何故なら君は私だからだ。君はすでに答えを知っている」
「分かっていますが、それでも聞きたいんです」
「分かった。全宇宙は君が生まれ変わるのを強く後押しするだろう。
眠りなさい。深い眠りに入り、目を覚ますと君は私の事をすっかりと忘れてしまうだろうが、君は奇跡を体験するだろう」

声はそのように言うと、消え去り、芋虫は深い眠りに落ちた。
芋虫の体内では凄まじい勢いで細胞分裂が始まっていた。
まるで体内を引っ掻きまわされるかのようだった。
芋虫は深い眠りの中で、自分の体が凄い勢いで変化していくのを感じていたが、芋虫はその変化を受け入れ、その時を待った。
そうして何週間も過ぎた。

そして、ようやくその時が来た。
芋虫だったそれは、サナギの厚い膜を突き破り外に顔を出した。
体中が痛んだ。それに目が眩んだ。
何故こんなに眩しいのだろうか?
芋虫だったそれは自分の目がとても巨大に変化している事にまだ気がつかずにいた。
まるで自分の体が、まったく別の生き物になったかのようだった。
しかし、それでもサナギから出る事を諦めなかった。
やがて、サナギから出た蝶はその大きく美しい羽を朝の光りいっぱいに広げた。
蝶は大きな目で自分の羽を見て驚いた。
「なんという美しさだろうか!!」
そうか、その為にこの良く見える大きな目を授けてくださったのだ!!
しかし、いったい誰に授かったというのか?
蝶にはそれが思い出せなかったが、自分の美しい姿に満足した。
「これが色なのか!」
芋虫だった頃、芋虫には色が見えなかったのだが、蝶になった今では赤や黄や青などの鮮やかな色が見えるのだった。

世界は様々な色で溢れており、とても美しかった。
それにこの良い匂い!
その香りはきっと色とりどりの花々から漂っているのに違いなかった。

蝶は今や生命力に溢れており、とても幸せだった。
蝶は試しに自分の羽を動かしてみた。
思いのほか、羽が上下に動いた。
「飛んでみなさい」
どこかから声がしたような気がした。
そんなバカな!僕のような太った芋虫が空を飛べる訳がない。
「あなたはもう太った芋虫ではないのですよ」
またもや、声がしたような気がした。

蝶は試しに羽をもっと激しく動かしてみた。
すると、ゆっくりと空に浮く事が出来たのだった!
やがてコツを掴むと、蝶は更に上へ上へと空に舞い上がっていった。
それはとても素晴らしい景色だった。
何よりも蝶は自分の美しさに満足していた。

美しい羽をしたその蝶は自由に青空へと飛び立っていった。
他の昆虫達は羨ましそうに、その蝶が飛ぶのを見ていた。

パウロ・コエーリョさんから日本人に向けた祈りのメッセージ

世界的ベストセラー「アルケミスト」の著者パウロ・コエーリョさんからお願いされて、
日本人への祈りのメッセージを訳しました。

是非コピペをして広めてください。
よろしくお願いします。

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日本の為に祈ります

主よ、我々の住むこの惑星を守りたまえ
私達は日々、悲劇と直面しながらこの星の上で生きています

私達が行う日々の復興活動が私達にとっての最善/最高の結果であります事を

破壊された生活を立て直す勇気を私達に与えてください
失った物を回復させる勇気を私達に与えてください
永遠に失われたものを受け入れられるように勇気を与えてください
決して後ろを振り返る事なく、前進する勇気を与えてください
私達の魂がこの苦難を乗り越えられますように
 
主よ、私達に熱意/情熱を与えてください
熱意/情熱は、それに真剣に取り組んでいるかぎりは
全ての事は可能だという事を私達に教えてくれます

主よ、この地球が種を小麦へと
小麦からパンへと変える力を与えてください
そして私達を決して一人きりにしないでください

主よ、私達に思いやりを

しばしば、私達は裸なのに服を着込んでいると思い込んでしまうのです

主よ
勇気、復興、連帯と情熱の意味を教えている日本の友人達の事を忘れないでください

アーメン


~パウロ・コエーリョ~
http://paulocoelhoblog.com/2011/03/13/we-pray-for-japan/

イラン政府、パウロ・コエーリョの全作品の発禁を決定

サンパウロ新聞より:
http://www.saopauloshimbun.com/index.php/conteudo/show/id/2909/cat/1

はじめは、なんの事やらさっぱり分からなかったが、どうやら背景には上記の記事に書かれたような政治的な背景があるのかもしれない。

しかし、パウロのブログなどの詳細を読むと、
その政府に通達をしたのが(日本で何というのかは不明だが)イランの宗教省だという。
そうなると、さっぱり分からない。

何故なら、パウロ自身はイスラムに対してはリスペクトを表明しているからだ。
ベストセラーの「アルケミスト」もイスラム世界を背景にしており、
西欧とイスラムの架け橋になるような画期的な物語だった。
現に、この小説はイスラム圏にもファンが非常に多い。
(パウロ自身はカソリックである)

去年の9月11日にアメリカのキリスト教団体がコーランを焼こうとした時もパウロは抗議していた。
(その事をイランの宗教省は知っているのだろうか?)

イラク戦争の時にはブッシュ政権に下記のような抗議をしている↓
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/paulo_coelho.html



このニュースは日本ではあまり知られていないので、ここに掲載し少しでも日本人の目に止まるようにします(パウロには多大な恩義があるので)。



パウロ・コエーリョ:
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに生まれる。1974年、ブラジルの軍事独裁政権に対する反政府活動に関与との嫌疑を受け、短期間投獄される。
1987年、『星の巡礼』(O Diário de um Mago)を執筆刊行して、作家デビューを飾る。
1988年に出版した第2作『アルケミスト - 夢を旅した少年』(O Alquimista)はべストセラーとなり、38ヵ国の言語に翻訳された。
現時点では「アルケミスト」は世界中で6500万部も発売されており(アメリカではいまだにベストセラーリストの上位)、世界で最も読まれている作家の一人。

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