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小さな花火の物語

以前、英語で書いた短いお話をスイス在住のシンプソンさんが映像作品にしてくれました。
(シンプソンさんはWebデザインをやっていて、現在僕のホームページを作ってもらっています)

是非ご覧になってください。
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http://www.simpsonswissblog.com/

以下は物語の日本語訳です。

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       小さな花火の物語


昔むかしある所に小さな花火が居ました。

花火は夜空に向って旅をしています。

夜空にはとても美しい星々や月が輝いていました。

花火は星々や月に聞きました
「どうして僕たちは、みんないずれは死んでしまうのに、この世に生まれてきたのですか?」

しかし星々や月は何も答えてくれません。

そしてやがて、短い旅の後、花火は爆発をして夜空に大きな花を咲かせました。

星々や月はそれを見て、その美しさに驚きました。

最後の瞬間、小さな花火はこの宇宙で最も美しい存在だったのです。

花火は自分の事を誇らしく思い、満足して夜空の中へと消えていきました。



妬みの作り方

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「これは美味ではないか!!まったりとしてこってりとして舌がとろけるようだ!シェフ、これは何という料理なのかね?」
と悪魔がシェフに聞いた。

厨房から顔を出したシェフはいつもの13番テーブルに座っている客に言った。
「これはこれは大魔王様、いつも我がレストランをご利用いただき光栄に存じます」

「シェフ殿、今日のメインディッシュは格別だ!!舌触りといい、血のしたたるような芳香といい、今まで食した料理の中でも一番だ。もう一度聞くが、これはなんという料理なのか?」

シェフは周りを見渡しながら、声をひそめて悪魔に言った。
「大魔王様、それは『妬み』という食材を使用しておりまして、わがレストランの中でも最高級の食材なのですよ」

「ほほう。『妬み』という食材かね。シェフ殿、何故いままで、これを出してくれなかったのかね?この料理のおかげワシは100年若返ったようだ」

「お気に入っていただき、光栄であります。なるべく大魔王様様にはこれを御召しになっていただきたいのですが、しかしながら、この『妬み』という食材を作るには少々手間と時間がかかるのですよ」

「ほう?どのような手間と時間がかかるというのか?」

「大魔王様はフォアグラという食材をご存知でしょうか?」

「勿論だ。たしかガチョウや鴨の肝臓の事ではなかったかな?」

「さようでございます。基本的には妬みはフォアグラと同じような作り方をするのですよ。・・・・・ガチョウや鴨を地中に埋め、動けぬようにして上で、肝臓を強引に太らせた物をフォアグラと言います。私どものレストランでは鴨やガチョウではなく、人間を使用してございます」

「これは人間の肝臓なのかね?」

「いえ、これは元々は人間の『羨み』という部位なのです。この『羨み』という食材も調理致しましてお出しする事は出来るのですが、しかし『羨み』というのはそのままでは限りなく自然食材に近いのです。大魔王様は勿論・・・・」

「聞くまでもないだろう?ワシは自然食材は好かぬ。大体ワシは自然食や健康食ブームというのは嫌いでな。料理の醍醐味というのは退廃なのだ。デカダンスこそが料理の本質ではないのかね?」

「存じ上げてますとも。・・・・ですので我がレストランではこの『羨み』を最低でも3年は人間の体内で寝かせて発酵熟成させるのですよ」

「ほう。そうすれば、『妬み』になるのかね?」

「さようでございます。時間をかければかける程、『妬み』は味わい深くなります。これには熟練した技が必要なのです」

「ほう。それは如何なる技なのか?」

「自然な状態であれば、人間はすぐに『羨み』を口から吐き出してしまいます。
ですので、私どもは人間に自分は羨みなんか持っていない、と思わせるのです。
・・・・これがなかなか高度な技術を必要としましてね」

「ガチョウや鴨のように動けぬようにしてかね?」

「さようでございます。人間は動けなくなると、ストレスが溜まり、そうすれば妬みはますます大きくなり脂ものってくるのです」

「聞けば聞く程、よだれが出てきそうだよ!!」

「大魔王様、このお話は人間達には聞かれぬようにご注意くださいませ」

「どうしてかね?」

「もし人間達が自分に『羨み』がある、と気が付けばすぐにそれを口から吐き出してしまいます。・・・・しかしながら私どもには何千年と受け継がれてきた秘伝の裏技がございます」

「ほう、それはすごいな。どのような裏技なのか聞かせてもらえぬか?」

「勿論ですとも。
それは実はとても簡単な事なのです。
『羨み』はとても不自然な物だと思わせればいいのです。
羨ましいという感情はは本当はとても自然な物なのですが、人間達に羨ましがる事は恥ずかしい事だと思わせれば、人間は羨みを溜め込んでしまうのですよ。
私達はこれに成功しました。
おかげで、人間の社会や宗教は『羨み』を『間違った』感情として禁じたりしています。しかし羨みを禁じた所で、それは無くなる事はなく、長年熟成された後に『妬み』に変化するのです。
その結果私どもはあなた様に、この最高級食材を供給する事が出来る訳です」

「シェフ殿!!君はマイスターだ!!君のような人材こそが本物の職人と呼ぶにふさわしい!!」

「ありがとう存じます。大魔王様、本日のデザートなどはいかがでしょうか?」

「勿論だ、いただくとしよう」

シェフが指を鳴らすと、厨房からウエイターが皿を持って現れ、悪魔が座る13番テーブルの上に置いた。

「これはいったい何なのかね?一見するとプリンのように見えるが?」

「大魔王様、これは我がレストラン一番の自慢の一品『憎しみ』でございます」

悪魔はスプーンを手に取り、『憎しみ』をすくい上げ口の中に入れた。
悪魔の顔色は真っ赤になり歓喜あふれる表情へと変化した。

「なんと美味な!!まるで滋養強壮剤のようではないか!」

「人間が我々に食材を提供してくれるからこそ、私どもの商売も成り立つ訳ですな。いや、まったくありがたい事です・・・・・」

そのようにしてレストランの夜は更けていった。
レストランの外では今日も人間達の営みが繰り広げられていた。

海の波の物語

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以下の物語はトルコの作家セルダル・オズカンの「失われた薔薇」からの引用です。
著者に許可をいただいたので、ここに掲載します:



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「・・・・ダイアナ。きみの苦しみは、どうやっても僕には分からないと思う。
きっと誰にも分かりはしないだろう。だから僕が何を言っても大した慰めにはならないと思うが・・・・。
事情が違うのは分かっている。でも、祖母が死んだとき、僕はとても辛かった。
どうすれば受け入れられるか分からなかったんだ。
その時、ある物語を読んだ。そしてとても感動したんだ」
ダイアナは以前、母がよく本を読んでくれた事を思い出し、涙を抑えきれなくなった。

「どんな話だったか、聞かせて」

「うん」
マサイアスは言った。

「海の波の物語なんだ。
・・・・・波は温かな太陽を浴び、心地よい風に吹かれながら、ぐんぐん進んでいった。
まわりのあらゆる物に微笑みつつ、浜辺へと近づいていくんだ。
ところが急に、自分の前を進んでいた波が一つまた一つと大きな岩にぶつかって砕け散るのに気づいた。
激しくぶつかって、粉々に砕けて消える。
『ああ、神様』波は叫んだ。
『僕もああやって終わるんだ。まもなく、僕も砕けて消えるんだ』
その時、横を通り過ぎようとした別の波が取り乱した最初の波に気づいて尋ねた。
『どうしたんだい?何がそんなに悲しいの?
ほら、こんなに素敵な天気じゃないか。太陽を見てごらん、そよ風を感じてごらん・・・・』
すると、最初の波が答えた。
『だって分からないのかい?ほら、前を行く波はみんな、あんなに激しく岩にぶつかっている。
そして跡形もなく消えていくんだよ。僕らももうすぐ、ああなるんだ』
『ああ、その事か』二番目の波が言った。
『だけど、分からないのかい?君は波じゃないんだ。
君は大海原の一部なんだよ』」


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セルダル・オズカン Serdar Ozkan

1975年トルコ生まれ。アメリカでマーケティングと心理学の学位を取得、その後母国トルコに戻り、イスタンブール・ボスポラス大学で心理学の勉強を続ける。2003年トルコで発表された『失われた薔薇』は稀にみるベストセラーとなり、その後著者自らの英訳により30カ国に翻訳権が売れ、世界中で多くの読者を獲得している。
現在、世界各国でベストセラーに更新中。

http://www.amazon.co.jp/失われた薔薇-セルダル-オズカン/dp/4863320515
セルダル・オズカン ホームページ
http://www.serdarozkan.com/

著者にはイスタンブールでパウロ・コエーリョさんに紹介していただき、
パウロさんのブログにここにアップしたイラストを描きました。
http://paulocoelhoblog.com/2011/03/29/30-sec-read-you-are-not-a-wave/
時期が時期だけに、実はこのイラストで波を描くのは無茶苦茶抵抗があった。
なので、アップした画像のようにとても抽象的なイラストになった。
しかし、後にセルダルさんからわざわざ「失われた薔薇」を送っていただき、読んでみると物語にそのまま当てはまるようなシーンが描いていたので驚いた。


「失われた薔薇」は第二の「星の王子様」「アルケミスト」と各国で話題になっています。
是非読んでください。