※本日3話めの更新です!
の続きです。
桃の話では、友達の同棲相手が急遽帰省を取りやめたので、桃の居場所がなくなったということだった。
他に行くあてもないし、ホテルも一杯だし…と言われれば、仕方ない。
ただ、桃や千帆と暮らしてた頃と違って男の一人暮らしだ。手狭だし、部屋数も無い。
俺の寝室やベッドを貸すのはどうかと思うし(桜とも寝るベッドだぜ?)…
「もちろん、私、ソファでいいよ」
「あ、そう。じゃ、悪いけどそうして」
「お風呂入れる?お湯張ってくるね」
「あ、いいよ。やるよ」
「いいって」
「あ、じゃ、先入っていいよ」
「ありがとう。もう身体冷えきっちゃって」
桃が先に入り、交代で俺も風呂に入った。
風呂から上がると、桃が晩酌の用意をしてくれていた。
「飲むでしょ?色々買って来たの。乾杯しよ?」
テーブルに並んだつまみに見覚えがあった。千帆と晩酌するときに好んで食ってたものだ。
「バカ。お前未成年だろまだ」
「言うと思った」
桃が酎ハイの缶を持って、
「ノンアルでぇす」
って肩をすくめて微笑む。
風呂上りの艶っぽい千帆とよく似ていた。
千帆の思い出話をしたり、お互いの近況を報告し合ったりした。といっても、ほとんど桃が喋って俺は聞き役だった。
「ところで条くん、彼女は?」
「……」
無視して、ビールをあおり、つまみに箸を伸ばしたけど、絡みつくような視線は無視できなくて…
「いるの?」
「…ああ」
パクッとつまみを口に放り込む。
「ふぅん」
桃が頬杖をついて唇を尖らせる。
「裏切り者」
まるで千帆に言われたみたいで…ドキッとした。
「私、まだ彼氏いないんだぞ」
「あ、そ」
「なのに、条くん早いよ」
空になったグラスを見つめる。
「もう一本あったっけな」
立ち上がって冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
早い…ってか、千帆より前に桜とは付き合ってたわけで…とか言っても仕方ないし、言う必要もない。
テーブルに戻り、プルトップを引いて、缶を開ける。
「あの人なの?」
ドボドボ……ビールの白い泡。
「ん?」
溢れそうになった泡を慌てて吸って、唇を拭う。
「ママを病院に連れてってくれて、私の答辞をママのために撮って見せてくれた…」
「ああ…。うん。そう」
「やっぱり…」
桃は、はぁ…と肩を落としたかと思うと、いきなり俺のグラスを引っ掴んだ。
「あ!こらっ!」
桃は俺が止めるのも聞かずにビールを一気に飲み干して、ダン!と空のグラスをテーブルに置いた。
「…桃…?」
こえーっ。目がすわってんだけど…?