お風呂に行くときは眠そうで気怠そうだったのに、上がってきたら、条くんは元気になってた。
さっそく私をベッドに引き込んで抱きしめてキスをして…なんかちょっと若い子みたいな性急さに戸惑う。
「条くん」
私は条くんの顔を両手で挟んでキスを止める。
「…なに?」
赤みをさした顔と、尖った喉仏が色っぽい。
「…元気だね」
「…だめ?」
って首を傾げる。
「だめじゃないけど…さっき居眠りしてたじゃない」
「ああ」
「今日仕事納めなのに、帰り際に色々仕事頼まれて大変だったって言ってたでしょ?だから疲れて…」
「さっき寝たら元気になった」
って私の体に腰を押し付けてくる。
「…そう…みたいだけど…//」
条くんが私の手を取って、導いた。
「…お前のせいだから」
握らされて、赤くなって条くんを見返したら、
「なんとかしてよ」
って、いきなり激しいキスをされた。
***
「なるほど。ということは、昨日は仕事納め且つやり納めの日だったわけだな」
健に言われて、ブッとウィスキーを噴き出した。
マスターがお絞りを手渡してくれる。
「は?何聞いてたの?桜を今日空港まで送って行ったって話がなんでそうなるんだよ?」
お絞りで口を拭きながら隣の健を睨む。
「え?だって上野さん今日からしばらく沖縄なんでしょ?だったら昨夜やったんでしょ?で、今年はもうやれないんだからさ、やっぱ昨夜がやり納めじゃん」
健の右隣で宝がグラスを持ってニヤニヤしている。
「なぁ?宝、そうだよなぁ?」
健に肩を叩かれて、宝が頷く。
「まあ、そういうことだよね」
「宝っ!」
「いや、でも条くんの話の主旨はさ、やり納めじゃないと思うよ?」
「え?そうなの⁇」
「そうだよ!なんでやり納めを声高に主張しないといけないわけ?」
すると健が口の横に手を立てて、いきなり叫び出した。
「僕はーっゆうべーっ大好きな彼女とーっ今年最後のーっエッチをしまし…」
「未成年の主張じゃねーよっ!」
ペシッと頭を叩く。
「イテッ!」
「内容的にまずいでしょ」
って宝が笑う。
「あ、そっか。学校の屋上でそれはないよね」
「言ってろよお前ら」
俺はそっぽ向いて、ウィスキーをあおった。
すると宝が、
「大変だったね。条くん。上野さんを送ってったその足で桃ちゃん迎えに行ったんでしょ?」
って言った。
俺はすぐに振り向いて宝を見た。
「そうだよ!それ!俺が言いたかったのは、それ!」
さすが宝!
すると、
「ああ、なんだ。そっちか」
って健がとぼけた顔して笑った。
「愚痴ね」
「は?愚痴⁇」
「え?愚痴でしょ?女のためにあっちこっち駆けずり回らされて疲れたっていう愚痴」
そうか…。愚痴か。俺はこいつらに愚痴りたくて飲みに誘ったのか…。
「で、桃ちゃんは?桃ちゃんの相手しなくていいの?」
「ああ。あいつ友達と飯食いに行ってそのまま友達んとこ泊まるって」
「あ、そうなんだ。え?こっちいる間ずっと?」
「そうなんじゃない?」
「お前、泊めてやらないの?」
「……だって…なんかそれ…微妙じゃね?」
俺が言うと、健と宝が黙り込んだ。
しばらくして、
「…たしかに、微妙だ」
とふたりが同時にうなずいた。