※画像は哲学堂公園内哲理門に安置されている幽霊像。最近新しく色つきのレプリカにしたらしい。
 
鎌倉駅から江ノ島へ向かう江ノ電の途中駅に「和田塚駅」がある。この江ノ電の駅名にもなっている「和田塚」。
 
ここは「鎧武者の幽霊が出る」等との噂もあり、一部では「心霊スポット」として知られているそうだ。
 
この和田塚、鎌倉時代の有力御家人である和田一族の戦没地だと言われている。
 
参考
【和田塚】
 
【和田氏】
 
またここは、鎌倉に残る唯一の高塚式古墳で、土器や埴輪も出土しているそうだ。
 
明治の中ごろまでは「無常堂塚」と呼ばれていたらしい。
 
 明治25年(1892年)、道路建設の為に塚の一部を掘り返したところ、おびただしい数の人骨が出土。その人骨は「和田合戦」のものだろうと推測され、この地に「和田一族戦没地」の石碑が建てられた。
 
参考
【和田合戦】
 
その和田合戦の中心人物が和田義盛である。
 
参考
【和田義盛】
 
和田義盛は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武将・御家人。初代侍所別当。
しかし、2代鎌倉幕府執権の北条義時の挑発を受けて挙兵に追い込まれ、幕府軍を相手に鎌倉で戦うが敗死し、和田一族も滅亡した(和田合戦)。
 
この、和田義盛の骸(むくろ)もここ和田塚に眠っているらしい。
 
なので、この和田塚では和田氏の怨念か鎧武者の霊がうろつくという噂があるようである。
 
参考
鎌倉怨霊散歩~「和田塚」
 
今回はこの和田義盛にちなむ別の場所を新年早々に散歩してきたので紹介したい。
 
そこは「和田山」といって義盛の武蔵の地における「居城?」であったとも言われている。
 
参考
哲学堂公園と和田義盛
 
そこは眼下に妙正寺川を望む丘陵となっており小高い丘だ。
 
そして現在その地は中野区が管理する「哲学堂公園」となっている。
 
参考
【哲学堂公園】
 
この哲学堂公園、その名の如く哲学を題材としたスポットが数多く設けられ、それをたどりながら散策することができるようになっている。
 
参考
【哲学堂公園】
 
実は公園マニアの憲さんであるが、この公園には一度も行ったことがなかった。
 
中野区がという東京の西部に位置しているということもあり、また最寄り駅から少し遠いというのも理由であった。
 
しかし、ロシアのウクライナ侵攻が終わらない現在、世界が混沌としているまさにこの2023年の年頭に「哲学的思考に立ち返る」という意味でも「哲学堂公園」に行く価値があると判断し新年3日に思い立って行くこととした。
 
正午、最寄りの西武新宿線の新井薬師前駅に降り立つ。
そこから歩くこと15分くらい、妙正寺川を越えると哲学堂公園は見えてくる。
 
この哲学堂公園、哲学館大学=現在の東洋大学を建学した哲学者で教育家の井上円了博士によって“精神修養の場”として、哲学世界を視覚的に表現し、哲学や社会教育の場として作られた。
 
参考
【井上円了】
 
園内はくだんの和田山に作られ、台地上の中央庭園を中心に、妙正寺川沿いの傾斜地、低地など高低差や地形の変化を生かした作りとなっている。
 
そして、この公園内の“哲学”を具現化した“77場”を散策することにより、哲学を理解する上で必要な概念を学ぶことができるとし、その地割り意匠は、井上円了博士が百年以上前に特異の着想をもって作り上げられたものなのである。
 
その一部を紹介しよう。
 
●唯物園(ゆいぶつえん)=唯物的寓意を持つ一帯
 
参考
【唯物論】
 
●唯心庭(ゆいしんてい)=唯心論を具現化。唯物園と対をなす。
 
参考
【唯物論】
 
●演繹観(えんえきかん)=思想の原則によって推論する“演繹”を表した小亭
 
参考
【演繹】
 
●帰納場(きのうじょう)=事実を集めて立論する“帰納”を表した三脚鼎立の休息台
 
参考
【帰納】
 
と、園内を散策するだけで哲学用語を学習することができるのだ。
 
さらに・・・、
 
●鑽仰軒(さんぎょうけん)=徳を仰ぎ尊ぶ建物
 
●感覚巒(かんかくらん)=“巒”とは“山”のことであり、我々の経験が耳目などの五感によっていることを表している
 
●二元衢(にげんく)=“衢”とは「分かれ道」のことであり、唯物園と唯物庭の岐路にあたり、物と心の二者対立を、あらわしている
 
等々・・・、「漢字マニア」にもたまらない地割り意匠となっている。
 
さらに、着目すべきが公園内の古建築物である。
 
●四聖堂(しせいどう)=この化粧品メーカーのような名前の建物は本尊として哲学的思想を表しており、東洋哲学の孔子、インド哲学の釈迦、古代西洋哲学のソクラテス、近代西洋哲学のカントが奉祀されている。
 
●六賢台(ろっけんだい)=六人の東洋の賢人として日本、中国、インドの三国より二人ずつ、聖徳太子、菅原道真、荘子、朱子、龍樹、迦毘羅が奉崇してある
 
参考
【龍樹】
 
【迦毘羅】
 
●三学亭(さんがくてい)
日本の神儒仏三道の碩学である、平田篤胤、林羅山、釈経念を祀る
 
参考
【平田篤胤】
 
【林羅山】
 
憲さん随筆
憲さんの歴史的大発見!江戸時代、日米安全保障条約は存在した!『安政の日米安保条約』!
この随筆で憲さん「林羅山」について触れている。
 
【凝然】
 
さらに、井上円了博士の作った77場とは違うが・・・
 
●哲学の庭には
・老子
・キリスト
・釈迦
・アブラハム
・エクナトン
・達磨大師
・聖フランシス
・ガンジー
・聖徳太子
・ユスチニアヌス
・ハムラビ
(詳細略!)
の彫刻像が配置されている。
 
参考
【哲学の庭】
 
と、このように哲学堂公園の建築物や庭に古今東西の哲学者や学者がごった煮状態でまつられており、散策するだけで頭がクラクラしてしまう感覚に襲われるすごい公園なのである!
 
そして、その中でも憲さんが一番興味をもった建物が「哲理門」である。
 
参考
妖怪とあまりにも深すぎる哲学的な公園「哲学堂公園」
 
この哲理門、通称“妖怪門”と呼ばれているそうだ。
屋根瓦の「軒巴瓦」の瓦頭(がとう)に「哲」の文字が入っていてカッコいい。
 
参考
【軒巴瓦】
 
そして普通、このような門には仁王像が奉られているのだが、この哲理門は右側に天狗、左側に幽霊の像が安置されている。
天狗を物質界、幽霊を精神界の象徴として不思議・不可解を表しているんだそうである。
 
なんとも奥が深い!
 
そして、この「哲学堂公園」は鎌倉の「和田塚」と同様心霊スポットとしても知られているそうだ。
 
参考
哲学堂公園
 
と、この哲学堂公園まさに井上円了の脳内一大哲学テーマパークであり、足を踏み入れると凡夫の脳ミソではとてもついてはいけず頭がクラクラすること請け合いです。
 
ということで、是非とも皆様にも一度散策されることをお勧めします。
 
ただし、散策は花見も兼ねて春がいいと思います。
 
参考
哲学堂公園の桜
 
どーよっ!
 
どーなのよっ?
 
追伸
ただし、井上円了や哲学館について注意しなくてならないのは、彼は“宇宙館”内に“皇国殿”を設け「世界万国内皇国為最美」(世界万国の内、皇国をもっとも美しとなす。)とし、建学当時、国民道徳の大本と考えられていた「教育勅語」の精神を普及徹底させるためには、学校教育のほかに社会教育や民間教育をおこす必要があり、また東洋の文明と日本の独立を維持するうえにも、仏教の再興が必要であるという円了の持論にもとづいたものであり、極めて国家主義的、国体思想に基づいていることにも注意を払わなくてはならない。