今回も複雑なテーマです。頚損・脊損をしっかり勉強している臨床家にとっては、何でもないテーマです。
完全麻痺の人は歩けるか?
この条件は、prime walk、walk about、wpalという歩行補助具を用いずに・・・
つまり、自分の足でということです。
現在の医学では不可能です。断言できます。
では、たびたびメディアでも取り上げられている頚損・脊損のトレーニングをする方が
「完全麻痺で歩いた」
このように取り上げています。
これには言葉の使い方に大きな問題があります。
そして、頚損・脊損の方に別の問題を引き起こす原因になっています。
まず、この歩いた方の脊髄のMRI上の画像を公開しておりませんが、完全断裂はしておらず、部分断裂、つまり不全麻痺です。
また、肛門の感覚があると思います。
完全麻痺という用語をしっかりと定義する必要があるのです。
医学用語としての完全麻痺はMRI上でも連続した神経が認められず、ケガをしてから3か月後に肛門の知覚も運動も感覚もないことを指すのです。
ケガをしてからは脊髄ショックという状態なので、完全麻痺か不全麻痺かを確定することは難しいです。
完全麻痺という名称の使用方法が専門医学を勉強した専門職としらない人の差がでるのです。
よって、「完全麻痺で歩いた」
ではなく、「不全麻痺で歩いた」ということです。
(完全麻痺では歩けません。ipsの再生医療を受けれは別です。)
不全麻痺といっても、感覚が少しあるだけの人もいれば、左右でバラバラの運動・感覚の人もおり、本当に千差万別です。
なお、「完全麻痺で歩いた」といっている方は、全く悪意がないですし、本当にご努力をされて、支援者に恵まれて歩けるようになったので、これは素晴らしいことです。
実は、私が言いたいのは「完全麻痺が歩けない」ということではなく
完全麻痺のように麻痺がかなり重い人が、「歩けない」「車いすだ」と決めつけられて、適切なリハビリを受けられていないという現状が、専門職として
「情けない、情けない、情けない」
のです。本当に頚損・脊損の方々に申し訳なく思います。
勉強しない専門職や努力をしない専門職があまりにも多く、そのような専門職にはレッドカードを出せるような仕組みが本当はあれば好いのですが、国家資格ということで過保護になっています。
私は本質的には医療機関のリハビリの質が悪いから、このようなことが起きると考えています。
医療機関であきらめられた、または不十分で不親切な対応をされた頚損・脊損の方が
リハビリにそっぽを向いて、トレーニングできる場所へ移動する。
色々な選択肢があることは、非常にいいことなので、このような施設には今後とも頑張ってもらいたいのですが、足元の医療機関のリハビリテーションの質がとにかくお粗末です。
もちろん、質が高い施設、高い人も沢山います。
また、別の問題というのは、医学的に真に完全麻痺と診断された人が歩くという目標を立てる
これが大きな別の問題なのです。
福祉機器を用いれば歩くことは可能ですが、自分の筋肉で歩くことは不可能なのです。
もちろん医学の常識を理解した上でチャレンジするのは個人の自由です。
ただ、医学用語での完全麻痺の方が歩くのは無理なものは無理なのです。
藤田保健衛生大学のグループがwpalを開発し、病院向けですが、実用化に至ったので、このような福祉機器を用いた歩行をどうかお考えください。
http://www.astf.or.jp/project/suishin/ikusei/files/22-2.pdf#search='wpal'
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