(抜粋)
金の流出を防ぐために、国家が規制を設けてそれをコントロールせねばならず、これはその意味では一種ローカルで閉鎖的なシステムをとって世界に金融市場を閉ざすことに他ならない。

一方これに対し、金の出入りが一切自由になっている金本位制採用国の場合は、そうした規制を全部撤廃し、金という共通語を介して誰でも自由に規制のない金融市場にアクセスできることになっており、その限りではこれは世界に開かれた自由でグローバルな金融システムを意味していることになるわけである。

豊富な金を国内に集めている米国だけはいちはやく金本位制に復帰することに成功しており、その唯一グローバルな金融市場をもつ米国経済には、世界中から資本が流入して空前の好景気に沸き、株価は連日高値を更新して、ほとんど天井知らずの有様だった。

それを羨望の目で見ていた各国のエコノミストにとっては、自分の国も金本位に復帰して「世界に開かれた金融市場」を実現すれば、米国のように資本が流入してきて好景気になるはずだと考えても、無理もなかったかもしれない。

チャーチルは金本位復帰を強行する。そして英国に続いてオランダ、カナダ、ベルギー、イタリア、フランスなどが続々と金本位に復帰し、それ以前に復帰を果たしていたオーストリア、ドイツなどと合わせて、文字通りそれは世界の趨勢となった。

日本の場合は井上準之助蔵相が先頭に立ってその復帰を訴えた。金本位復帰- - 日本の立場ではそれは「金解禁」となる- - は、一種の金融自由化だったから、未だ未熟な日本の経済をそんな厳しい競争に曝して大丈夫なのかという不安も一部にないではなかったのだが、井上蔵相は、これまで甘えていた日本の経済は、そういう厳しい競争に曝してこそ一人前に生まれ変わると主張し、世論の後押しもあって日本も一番遅れて金本位システムへ参加した。( ある意味ではそれは第一次日本版ビッグバンと呼ぶべきものだったかもしれない)

途方もない不運が重なって、災厄はそんなことが表面化する余裕さえも与えないほど、余りにも早く襲ってきた。それというのも、間もなく米国で「暗黒の木曜日」で知られる例の株価の大暴落が発生したからである。しばらく間を置いて、オーストリアの投資銀行「クレディット・アンシュタルト」が破産し、その金融危機は連鎖反応式に各国に飛び火していった。

皮肉なことだが、せっかく完成したばかりの金本位制度による「第一次金融スーパーハイウェイ」は繁栄の新しい幹線になるどころか、その最初にして唯一の仕事は、大恐慌を各国に高速で送り届けて回ることだけだったのである。

(コメント)
伝達する力、機動力が高くなるというのが世界に開かれた金融市場の特徴のようである。
金そのものを貨幣として実際に流通させる事が金本位制のようだが、要は金(きん)さえあれば経済活動できるよということでルールをシンプルにする役割があるということで、世界に開かれた自由でグローバルな金融システムを指すようだ。
デメリットは、良いことも悪いことも高速に送り届けるシステムのようである。
少しまえに、インフルエンザかなんかのウイルスが世界各国に送り届けられワクチンを作る作らないということがあったがそんな感じなのか。
それにしても要はエラー処理がないのか、それともエラーを把握しきれないのか、エラー処理を作成してる暇がないくらい忙しくてついていけないのか、よく分からんがシステムとしてまだ構築中という感も否めない金本位制。今もそれは引きづっているのかもしれない。
(抜粋)
米銀行の金利が日本の銀行の金利より高い状態にありさえすれば、他の条件がどうだろうが資金は米国に流れてくるというのだから、政治力で無理矢理日本側に金利を下げることを約束させてしまえばそれで問題解決なのである。( 8 0 年代の日本で、銀行に貯金するのが馬鹿馬鹿しいというほどに金利が下がってしまったというのは、実は一つにはそのしわ寄せがここへ来ていたというわけである。)

金利差以上に現代の為替市場を大きく動かすものが、政府高官のちょっとした発言である。
米国の財務長官などがその筆頭であろうが、投機資金は彼らのちょっとした発言に敏感に反応して、危ないところからどっと逃げ出したり押し寄せたりしたりするのであり、しばしばそれが従来の経済常識とは逆方向の資金の流れを作り出し、普通なら金が寄り付かない条件の揃っている国に大量に資金が流れ込んでくる場合がある。


(コメント)
無理やり日本に下げさせるってすげーことするよな。
あと今の総理の発言は為替市場に影響をもたらしているのか気になるなぁ。
(抜粋)
要するにそうした質的・量的な「使い出」を意味する「購買力平価」が通貨価値を決定する最大要因だということになる。つまりその国の実体経済が国内にどれだけ豊富な品物などをもっているかということこそが、すべてを決定する鍵だったのであり、現在でも極めて長期的に見る限りはやはり通貨価値を決めているのは基本的にはそれである。しかしもし現在、為替市場の真ん中へ出かけていって、今日の円相場の変動がそういう要因で動いたのかとでも質問しようものなら、あなたは一体何年前の時代から来た人ですかと呆れられるに違いない。

つまり現在の為替相場を支配しているのは、むしろ巨額の資金を動かす投資家たちであり、各国間の金利差だの政府高官の発言だのにそれが過剰に反応して一斉にドルや円を売り買いすることで、通貨の相場が決定されてしまうのである。

現在、毎日為替市場を飛び交ってそれを動かしている1 兆ドルを超える巨額の投機資金は、あたかも一個の意志をもった生き物の如く、ただ自分を太らせてくれるところだけを選んで嵐のように通過していく。

そしてそれらの資金が国境を越えていくのは、何もその国で何かを買うための購買力を期待していくわけではない。むしろ一泊限りの宿泊のつもりでホテルの入口から入口へ渡り歩くようにして、その一泊の間に0 .0 0 1 % でも余計に自分を太らせてくれる保証がありさえすれば、これらはそこへ向かっていく。

(コメント)
ものを買いたいからこの国の紙幣を持つということは昔の話のようである。
一泊の間に0 .0 0 1 % でも余計に自分を太らせてくれる保証のあるもの情報が重要のようだ。
移り変わりの背景はまず投資家有利の金融市場ができたことだが、その要因になったイギリスのビッグバンが気になる。線路全体を海外と直結して国際社会に開放するのだがそれに至った理由はなんだったけなぁ。
wikipediaみると「イギリス企業の姿は消えたまま、ロンドン市場は活況を呈す現象が生じた(テニスのウィンブルドン選手権ではイギリス人のプレイヤーは姿が見えず、イギリスは場所を貸しているだけである)。」とある。
要は企業をあきらめて投資家のための国にしたのだろう。恐らく日本などに経済で負けたので国として他の生き残り策を考えたということなのか?そうだとすると国民無視もいいところのような気がする。国として成立するのか?
イギリスが国としてビッグバンに踏み切った背景知りたいなぁ。
日本も適度にイギリスに負けていさえすれば三大金融市場のロンドン・ニューヨークのスーパーハイウエイ化にならなかったのかも。アメリカも日本に負けていたからちょうどイギリスと手を組むいい機会になったのだろう。