(抜粋)
大恐慌が空前の災害となった原因は、先ほどのものも含めると大ざっぱに言って次の3点にまとめられる。それは
① まず先ほど述べたように、「第一次金融スーパーハイウェイ」の負担に各国が耐えかね、荒療治なしにはそこからの離脱ができなかったこと。
② 第二の、しかしもっと本質的な理由として、世界全体が「過剰生産」の状態に陥っていたことがあげられる。つまり世界全体の生産能力が向上したのに逆に需要の側が飽和して、大量の「売れ残り」が発生していた。
③ ところがそういう問題が生じていたというのに、「運営の不備」すなわち世界経済をどう運営するかについて、責任者不在のうえ、運営マニュアルにも問題があった。
の3 点である。

需要そのものは先進国ではそろそろ「石炭文明」時代の需要がほぼ飽和状態となり、「石油文明」への移行のちょうど端境期にあった。しかし後者の代表選手たるべき自動車などはまだまだ金持ちのためのもので、もう一段階のコストダウンに成功して本当に大衆化が始まるにはまだ十年ほど待たねばならず、現実には全体として需要は飽和傾向にあったのである。

そのため大量に発生したその種の在来型製品の売れ残りをどうにかできない限り、大量失業の発生はいずれは避けようのない宿命であったと言えるだろう。そして3 番目の「運営の不備」の問題については、まずいことにちょうどこの時期の世界経済は、いわば盟主的存在が英国から米国へ移行する引き継ぎ期にあり、最終的にどちらが世界経済を支えるかについて、責任者のポストが空席となっていた。

さらにまた、ちょうどこの時期がケインズ経済学の登場前の時期にあって、各国の経済当局の頭が古い経済学に支配され、例えば米国の経済政策がアクセルを踏むべき場所でブレーキを踏んだりするなど、とにかくマニュアル自体もなっていなかったことも、病気をさらに重くするのに一役買っている。

(コメント)
大量に製品が作られ大恐慌が起きているのは、今の観点とそう変わったものではない。
これを解決するための突破口は石油文明だったようだ。
今の不況の突破口はなんだろう?
(抜粋)
「第一次金融スーパーハイウェイ」が破綻した後、各国はそこから何とか脱出を図ろうとするが、このように経済的災害を各国に運ぶ水路と化した国際的金本位制のもとでは、各国が個別に国内経済救済を行なおうとしても、金融政策の面で手足の自由を縛られてそれができない。

かといって国際社会はもはや経済的に無政府状態で、誰も他国や世界のことなど考える余裕がなく、自国の経済的不都合をこの排水パイプから押し出して他国に押しつけることしか考えようとしなかった。

そこでそれに耐えかねた各国は、災害の波及を最小限に食い止めるために次々と金本位からの離脱を行なっていく。その結果ないし反動として起こったのが、いわゆる悪名高い「ブロック経済化」である。

これは常に第二次大戦の原因として語られるものだが、要するにグローバル経済の崩壊の中で各国が、とにかく自国の安定を図るため自分の勢力圏でローカルかつ閉鎖的な経済圏を作り、とりあえずそのブロックの中で体勢の立て直しを図ることである。

このため英国が「オタワ協定」によって英連邦圏をブロック化したことに始まり、米国が南北米国全体で、フランスが旧植民地でそれぞれ排他的な経済圏を作った( またソ連はすでに共産主義経済圏を作っている)。そしてそういうものを作れず、寒風吹きすさぶ世界経済の中に宿無しのように放り出されたドイツと日本が、自分たちもそういうものを作ろうとして強引な軍事力に頼ったということが、通常第二次大戦の原因として語られている。

(コメント)
ブロック経済⇔金本位制のちょうどよいバランスってあるんじゃねぇのて思ってしまうのだが。
ケインズはどんな感想持っているのだろう。
(抜粋)
古典的な安定した1 9 世紀の金本位制の場合、とにかく英国経済というものが圧倒的に強力な存在として中心に居座っていたことが、この時との決定的な違いだった。( 第二次大戦後の安定したドル体制などの場合は、米国経済がやはり圧倒的存在として中心にあった。)

これは水路で言えば、ちょうど山の上に巨大な湖があって、そこから低地に向かって経済が安定した川のような一方通行の流れを作っていたようなものである。それに対して「金融スーパーハイウェイ体制」の場合は基本的に高低差のない平坦な水路で水が自由にどちらの方向へも流れられるようなものであると思えばよい。そのため前者はちょっとぐらい地面が傾斜したぐらい何ということもないのに対し、後者はたった1 度傾いただけで水路全体が大逆流を起こしてしまうのである。

(コメント)
ざっくりいうと資本が根付かないということなのかなぁ。
資本を動かしているのがどこかの投資銀行にいて自分の金儲けしか考えない人物で、政府が責任をもってそれをコントロールすることが難しいとのこと。
こういう人に資本を持たせることを規制すると機動力がなくなるのが弊害なのだろうが、一長一短あるわけだから有効なルールはつくるべきなんじゃないかなぁ。
俺素人だけどあまりにも当たり前のこと言っている気がして少し困惑気味。