(抜粋)
一般市民の立場からすると、そういう安全な貨車があれば、いわば一種の避難所として金庫代わりに使うことができ、危なくて裏庭に置いておけない手持ちのドラム缶燃料を、皆がその貨車の中に持ち込んでくるだろう。つまりそれが、市民がインフレ下で資産をなるたけ金利の高い銀行に預けて保全しようとすることに相当しているわけである。

「経済全体への影響」という条件の方はどうなるかというと、実は面白いことにこちらも結構うまく対応がつくのである。まず現実の経済社会では、一般にそのように高金利状態にすると、金融の鉄道網全体がいわゆる「金融引き締め」状態となり、企業や経済社会全体に送り届けられる資金の量が減ってしまうという現象が起こる。そのためもしそれまで社会にマネーが過剰に供給されてインフレ状態に陥っていた場合、それを行うことで結果的にその資金の供給を正常なレベルまで減らすことができるわけである。

一方鉄道での表現ゲームの世界を見てみると、貨車をそのように鉄板で覆った場合、各貨車の自重が重くなって車内スペースも狭くなり、一両当たりに積める積荷の量はその分だけ減ってしまうということになるだろう。つまりその場合には、鉄道網全体が輸送できる燃料弾薬の総量も前より少なくなって、戦場全体にそれらを僅かしか送り届けられないことになり、結果的に社会全体に対するその供給量が減ることになって、現実とも対応がつくわけである。

(コメント)
「金融引き締め」というキーワード出てきた。高金利状態にすると、金融の鉄道網全体がいわゆる「金融引き締め」状態となり、企業や経済社会全体に送り届けられる資金の量が減ってしまうという現象が起こるとのことだがある意味神の手なのか?それとも運べる量にも限りはあるということなのか。
(抜粋)
「高金利」や「低金利」などと言われても、それらの話は理屈を頭で一応理解しても、どうも何だかなかなか頭の中に定着してくれないものである。それらは何度聞いてもすぐに忘れては覚え直すことの繰り返しになってしまい、そしてそれは経済に対して苦手意識を持つ人に共通しているように思われる。
しかし読者に尋ねたいのだが、第1 章が比較的容易に理解できたことの裏には、それを「鉄道」のイメージで捉えて、金融全体を歴史的にドイツの国鉄などと対応させるという、一種の世界観の力が意外に大きかったのではあるまいか。

経済常識の一つとして一般に「デフレの時には低金利になる( または逆に、インフレの時には高金利に
なる)」というものがあって、その話がこの章の内容と接点をもっているからである。そのためこれをうまく鉄道の話に翻訳して、先ほどのインフレとデフレに関する何枚かのイラストの中にはめ込めば、表現の糸口が得られるのではないかというわけである。


(コメント)
軍事戦争と経済戦争を対応付けて高金利と低金利、言い換えるとインフレとデフレを表現しようというものである。
(抜粋)
経済の世界に入っていこうとする時には、もう一つ大きな障壁があったように思うのである。それは「金利が上がれば株が下がる」という話で、経済ニュースなどでその話が出てくるとよくわからず、そこで一挙に自信が崩れて、自分にはまだ経済はわからないという挫折感に見舞われることが多かったのである。

大体「金利が上がれば株が下がる」というが、そもそも株価というのは企業の経営状態を反映する一種の指標であって、株の上がり下がりは本来、そういう企業業績のデータで決まるものではないのか? 常識に照らしても、例えばある企業がヒット商品でも出せばその会社の株は高くなるし、不祥事でも起こせば一挙に値下がりするものであり、株価は基本的にそれらで決定されるはずである。

ところが現実にはどうやらそれだけではないらしく、経済ニュースではこの話が何か重要なものとして頻繁に出てきてそこでまず困惑してしまう。それどころかその話は意外に大きなものであるらしく、過去に起こった経済の話題でも、しばしばこの話の応用バリエーションとして「金利が上がったショックで株が急落した」とか、あるいは逆に「株価暴落の危機に際して金融当局が利下げに踏み切って事なきを得た」などというものが出てきて、そこで自分がまだわかっていない、という感覚に陥ってしまうのである。

しかし後になって振り返ると、どうやら先ほどの最初の難関と合わせてこの二つこそが、経済を理解しようとするとき最初に乗り越えるべき障害点だったらしい。もう少し正確にいうと、実はこの話の背後には経済世界のもう一つの重要なコアがあって、この話はそれが最も目につく形で表面化している現象の一つだったため、そういう印象となって現れていたのである。

ところがこちらの方は、経済世界の中でしばらく暮らしていれば自然に覚えてしまうことなので、一般には「習うより慣れろ」的な扱いが普通であるらしく、逆にそのためこれから経済を本を読んで一から学ぼうという人にとっては思いのほか大きな障害となりがちなのである。

(コメント)
今までの話から「金利が上がれば株が下がる」を推測してみる。
金利があがると設備投資がしにくくなる。そうすると資本主義経済だと問題だ。
会社の機動力は失われて商品の値段も下がっていく。機動力を保ちやっと平衡を維持できるからだ。
そのため会社として機動力を失うと評価が悪くなり株価も下がるということか。