小説『強敵を求めて』。 | 趣味部屋

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~ファイナルファンタジーⅩⅣ(FFⅩⅣ)~
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『小説-FFⅩⅣ(ナルシャ編)』・設定。



ゼン視点

アーファの件が解決し、メルナがヴォイドに戻ってからは平和な日が続いた。
いや、平和過ぎて暇だった。
ナルシャに飛空挺を修理してもらったからまた旅に出るのもいいのかもしれない。
しかし、ここにはブレイドという強者がいる。
何度か手合わせをしているが、一向に勝てる気がしなかった。
いや、むしろ差が開いている。
…差ではなく、対策されているのかもしれない。
自分はある程度の実力があり、強いと自負していた。
だから、強い者と戦うのは好きだった。
そんな私が心が折れかけるなんて思ってもいなかった。
それ程までにブレイドとは私の中で大きな壁だった。

「…ん?」

朝になっても居間にブレイドがいなかった。
…となれば、ナルシャと一緒に寝室で寝ているのかもしれない。
ブレイドが寝坊なんて珍しい。
となると一晩中…もしかしたら朝までだったのか。
お盛んなことで。
流石に水を差すわけにはいかない。

「…おや、起きておったのか?」

家の中にヴォイドゲートが開き、中から現れたのは人間体のメルナだった。

「元気そうで。」
「そちらも元気そうで何よりじゃよ。」

久し振りに会った。

「何か面倒事?」
「う、うむ…。だからこそ、ゼンに頼みたいのじゃよ。」

面倒と言われてやる気が出るはずもなく。
でも、暇なのもある。

「内容は?」
「アーファの件じゃ。」
「だと思った。」
「こちらの世界でアーファを匿える場所が欲しいのじゃよ。」

妖異をこっちに連れてくるってこと?

「許されると思う?」
「そこはゼンが何とかするのじゃよ。」
「嫌。」

はっきりと断る。
妖異にも様々な者がいることは理解している。
しかし、だからと言って受け入れるのとはまた別の話。

「そもそも、何故そんな必要が?」
「アーファの件がヴォイド内に知れ渡った結果、彼女を配下に加えようとする輩が多くてのう。いかんせん、光という稀有な力に加え、潜在能力も高い。戦力として申し分無いじゃろう。」
「変な話に聞こえる。アーファは妖異十二階位の中では第二位に値するだけの力を持つのでは?そのアーファを配下にするには相応の力が必要。ましてや光の力の持ち主。かつてのメルナのように第一位ですら苦戦するのでは?」
「不意を付かれたとは言え、妾が撤退した相手じゃ。」

やっぱり負けは認めない、と。

「…何か失礼なことを考えておるじゃろ?」
「いや。」
「まぁよい。…逆を言えば、味方にさえしてしまえば第一位妖異にも勝てる可能性が生まれるのじゃよ。美味しい話じゃろう?」
「やはり、その大前提がおかしい。アーファを味方に、という点。」

第一位に歯が立たない輩がアーファに勝てるとは思えない。
力以外にどうやって従わせると?

「変な話でもあるまい。奴等はそんなことを考えておらぬのだから。」

納得。
当たって砕けろなわけ。

「しかし、アーファなら問題無いのでは?」
「確かに彼女の力であれば敵を消滅させることさえ容易いであろう。問題なのは彼女の性格。争いを好まぬ性格故に追い返すだけにしたいとのこと。…理想こそ口にしても実力が伴っておらぬ。戦闘経験の少なさ故に自分の力を制御出来ず、つまり手加減が出来ないのじゃ。今のままで戦えば必ず敵は光の前に消え去る。であれば、彼女は戦わないという選択をするじゃろう。」

強き力を持つ故の悩み、か…。
確かに力とは持っているだけでは意味は成さない。

「だから、匿いたいと。…今までどうしていたわけ?」
「無論、妾とダガドが護っていた。」
「ダガドが?意外。」
「彼の者が護る戦いをするはずも無い。アーファを山車にして強敵と戦…。」

そこまで言ってメルナは口を閉ざした。
失言した…そう思ったのかもしれない。

「なる程、私もそこにいれば強い妖異と戦えるわけか。」
「…しまったのじゃ…。」
「メルナ。私をその場に。何、迫り来る妖異共を蹴散らせばいい…そう簡単な話であると認識した。間違い無い?」
「っ…。」

メルナにしてみれば面倒事が増えた認識だろう。
私自身、面倒事を増やしたと自覚している。

「…わかった。説得が通じる相手ではないことは妾もよくわかっておる。準備が終わったら言うのじゃよ。」

メルナが早く折れたのは想定外だった。
彼女と私は一つだったこともあり、よく知っているのだろう。
更に私は人間体の彼女を出産した母親でもある。
全く、奇妙な関係だ。





メルナが生み出したヴォイドゲートの先は、地面が草に覆われているが全て枯れていた…そんな場所だった。
ここはアーファの光の国があった場所か。
今ではそんな光は無かった。

「…何これ?」

家みたいのが建っていた。
…家?

「ダガドの力作…とのこと。」

ただの直方体。
家と言われれば家だと思う。
メルナと中に入るとそこにいたのは幼い少女と大きな黒い犬。

「ほう、来たのか。」

口を開いたのは犬。
ダガドの声だった。

「わんわん。」
「この姿は狼だ。犬なんぞと一緒にするでない。」

いや、大した差は無いから。

「その御方は…?」
「妾等と共に汝を救った人間の一人じゃよ。アラグ兵器に決定打を与えた者じゃ。」
「そうなのですね。ありがとうございます。」

一礼するアーファ。
これが本来のアーファ…。

「気にしないで。…敵は?」
「そんな頻繁に来られても面倒なだけだ。雑魚ばかりで歯応えも無い。我は強き者と戦いたいのだ。」
「アーファとダガドは妾の配下となったという情報を流しておる。」
「何だと?我が貴様の配下だと?」
「汝が言う弱き者を排除する為じゃ。第三位程度では相手にならぬじゃろ?」

第三位で第二位に挑むのはともかく、第一位に挑むのは無謀とも思える。
その上、第一位と第二位が固まっているのであれば相応の戦力が必要だろう。

「加えて私もいる。負けは無い。第一位が来ても勝てるのでは?」
「第一位…魔王とも言われる支配者達ではあるが、強いと同時に面倒な力を持つ者もいる。油断は出来ないのじゃよ。」

洗脳に長けた者もいそう。
そういう力の持ち主であれば確かに面倒そう。

「…メルナ。」
「タイミング良く…いや、悪いのか。客が来たようじゃ。」

その言葉を聞いて私は外へ飛び出した。





薄暗い世界。
よく見てみると…大群がいた。
首無しの騎士がたくさん。
デュラハン?
…いや、これは…。

「手を貸そうか?」

狼姿のダガドが後ろから付いてきていた。

「問題無い。準備運動に丁度良さそうだから。」

大剣を取り出し、大群に向かって歩き出す。
距離が縮まると敵の中で唯一頭がある騎士がいるのを確認した。
なかなかの手練れかもしれない。
敵も私を認識したのか、一斉に走り出した。

「格下か。」

ダガドが呟く。
第三位ぐらい?
ならば、本当に楽なのかもしれない。

「見かけ騙し。」

攻撃範囲内に入った敵に対し、横に一閃。
先頭の騎士達は私の大剣に吸い込まれた。

「魔を喰らえ、魔封剣!」

大剣を地面に突き刺す。
頭がある騎士の周囲にいた騎士達は全て大剣に飲み込まれた。
残るは術者らしきその騎士のみ。

「貴様、不純物が混ざっているようだが人間か?変わった力を使うようだ。」
「騎士の軍団は魔法で作り出した幻影であることは容易に看破出来た。そして、私の剣は並大抵の魔法ならどうにでも出来る。」

魔封剣は文字通り魔法を封じる剣技。
封じた魔法はそのまま撃ち返すことも可能だが、それは私が理解した場合のみ。
今のは妖異の魔法であり、よくわからないものだった。
その場合は剣の力に変換する。
大剣がうっすらと光を帯びた。

「安心して。後ろの犬は手を出さないから。」
「…足は出して良いのか?」
「黙ってて。」

犬と言われるのはどうしても嫌なのかもしれない。

「一対一を望むか。良かろう。来い、人の戦士よ。」

騎士は一対の剣を取り出した。
二刀流か。
なかなか戦い慣れている。
これはなかなか楽しめそうだ。





前言撤回。
騎士の妖異との戦いは数分で終わってしまった。
足元に転がる鎧の残骸を見て溜め息を吐く。

「驚いた。随分と強くなったものだ。」

傍観していたダガドが呟く。

「試してみる?」
「ほう。構わぬぞ。」

とは言え、ダガドは強い。
第二位は伊達ではない。
…ブレイドはそのダガドを怯ませた。
なる程、大きな壁だ。
ダガドをも倒せぬようでは彼女には到底及ばない。

「そこまでじゃ。」

メルナとアーファも来て間に割り込んだ。

「全く、味方同士で戦ってどうするのじゃよ。」
「何、この生意気な娘に稽古を付けてやるだけだ。」
「この自惚れ屋にどちらが上か思い知らせてあげるいい機会だから。」
「見せ物としても面白いと思うわ。」

…うん?
今の声は…?

「貴様は何者だ?」

ダガドが声をした方向を見ていた。
どこかで聞き覚えのある声だった。
私も同じ方を見る。
そこにいたのはエレゼンの女性。
まさか、彼女は…。

「アンカルタ…?」
「お久し振りね。元気だったかしら?」

…私はかつて戦いの中を生きていた。
孤児であり、戦っていた記憶しかない。
そんな私を拾ったのが彼女…アンカルタ。
勉強、魔法、剣技…全てを教えてくれたのが彼女だった。
一緒に冒険していて楽しかった。
でも、ある日…アンカルタは妖異を追ってヴォイドゲートに入り、戻って来なかった。
今日会ったのが何年振りなのだろうか?

「年取らないと思っていたが…妖異だったわけ?」
「えぇ。言ってなかったかしら?」
「言っていない。」
「人と妖異なんてそんな変わらないことよ。」

適当なところも相変わらず。

「ま、元気そうで何より。とうの昔に喰われたかと思っていた。」
「あらあら、あなたの師匠はそんな貧弱じゃないわよ。」

知っている。
私がよく知っている。
弟子だった私が。

「して、アンカルタとやら。汝の目的は何じゃ?」
「アーファを狙いに来た者であれば斬るのでしょう?残念ながら、その子の力は私には過ぎたる力。また、あなたのような格上の妖異に喧嘩を売るつもりは無いわ。ここに来た理由は単純明快。懐かしい弟子に会いに来たのよ。」
「私に?」
「そう。先日ヴォイドに来たでしょう?気配を感じたわ。その時も急いで来たのだけれど…。」

と、顔を背けた師匠。

「迷子になって辿り着けなかったのよ…。」
「あぁ、納得。」

旅していた頃も行き当たりばったりで。
今思えばただ迷子になっていただけってわけ…。

「小娘の師か。随分と強そうだ。」
「あなたよりは強いかもしれないわね。」
「ほう。」

ダガドの姿が狼からいつもの姿に変わる。
人型六腕の妖異に。

「やめておいた方がいい。師匠は強い。」
「こちらとて日々精進している。」

構えを取るダガド。
武術?

「…噂に聞いていた時よりは強そうね。」

アンカルタは何かを手に持った。

「これは厄介。目に見えぬ武器か。」

見えない武器…透明化魔法であるバニシュを利用する方法は聞いたことがある。
しかし、その場合は魔法感知に長けた者には通じないことと魔封剣相手では意味が無かった。
アンカルタが今持つ武器からは感知が出来ない。
素材自体が透明なんだと思う。
硝子とかただ透明なだけではなく、完全に背景と同化する特殊な透明。
…いや、アンカルタのことだ。
私の推測が間違っている可能性も多いにある。

「そこまでじゃ。」

再び割り込むメルナ。

「久々の再会なのじゃろう?ダガド、水を差すのはいかがなものか。」
「我には関係の無い話だ。違うか?」
「そう、汝には関係が無い話。故に汝の出番は無いのじゃよ。」
「…なる程、そういうことか。関係が無い部外者は引っ込んでいろ、と。下らぬ。」
「戦いたいのであれば別がおるじゃろう?」

メルナのその言葉で何かに気が付いたダガドはある方向に向かって走って…いや、跳んでいった。

「…しかし、本当に大きくなったのね。しかも、強くなって。」

アンカルタは私の周囲を歩く。
私を観察するように見ながら。

「あの頃既に私の方が大きかった。」
「そうだっけ?…そうだったかもね。」

と、私の正面に来たアンカルタの右目の瞳に魔法陣が浮かび上がった。

「それは?」
「あぁ、私の魔眼はどれも見せたこと無かったっけ?これはライブラの魔眼。…あら、ゼン…。」

アンカルタはにやりと笑む。

「一生そういうことに縁が無いと思っていたのに…処女卒業していたのね?」
「それはその…。」

ついでに出産経験もあるわけで。
産まれたのはそこの化け物だけれども。

「いずれこの私が貰ってあげようと思っていたのに。ついでに女の悦びも。」
「いや、遠慮する。そもそも経験はあるわけ?」
「女性経験だけなら。色々と役立ったから経験豊富よ。」

…深堀するのはやめよう。

「…ちなみにアンカルタはどれくらいの強さ?」

メルナに聞く。

「アーファよりも強いのではないじゃろうか。汝の師であることを考えると尚更のこと。」

この師匠がね…。

「戦ってみればわかるよ。強いからね、私。」
「どうだか。私があっさり勝つかもね。」

私は大剣を抜き、お互いに武器を構える。
アンカルタの透明武器。
形状がわからない。
そう、剣技を使うが剣ではないかもしれない。

「…はっ!」

先制攻撃で大剣を振り下ろす。
しかし、簡単に防がれてしまった。
アンカルタが片手で持つ武器に。
おかしい。
アンカルタが妖異だから怪力だとしてもこんな簡単に…?

「自分も使用する破壊魔剣は自身で受けたこと無かったかしら?」

まさか、パワールーイン!?
敵の力を下げる破壊魔剣。
破壊魔剣も魔法剣の一つ。
魔法剣は文字通り魔法を剣に付与する剣技であり、僅かでも詠唱が必要。

「無詠唱で破壊魔剣を…?」
「そうよ。」

冷静に考えると不思議な話ではない。
今、対峙している相手は私の師であるアンカルタ。
彼女の強さは過去の私にもよくわかっていたはずなのに。
私もあの頃に比べれば強くなった。
だからこそわかる。
彼女が強者であることが。

「っ…。」

鍔迫り合いの状態から更に力を入れる。
しかし、全く動かない。
パワールーインを受けてしまったのは痛手だ。
ただでさえ力比べで勝てるのかわからないと言うのに。
どうする?
考えないと…。

「時間切れよ。」

アンカルタは私の剣を払い、後ろに下がりながら魔法を発動した。
何の魔法かはわからない。
でも…。

「…魔封剣!」

魔封剣で封じる。
…いや、これは…!?

「かかったわね。」

全身が痺れ、片膝を着く。

「一体何が…!?」

痺れは剣から来た気がした。

「魔封剣は私が教えた剣技よ。対魔封剣の魔法なんて存在しないと思っていたのかしら?」

そんな魔法があったなんて…。
であれば、魔法剣や破壊魔剣の対処方法も用意してあるのだろう。
…あるならちゃんと教えて欲しかった。
しかし…。

「…ふぅ…。」

地面に大剣を突き刺し、剣先から私にかかっている魔法効果を放出する。
この技は私が編み出した。
地面が魔法で汚染されるからあまり使いたくないが、ヴォイドなら知ったことか。
しかし、この程度なら汚染も自然回復するだろう。

「見事。」

誉めてくれた。
しかし、これでパワールーインと魔法効果による痺れは消えた。
仕切り直しだ。

「…魔法剣ファイジャ。」

剣に炎を纏わせる。
私にルーイン…破壊魔剣が通じないとなるとアンカルタにも通じないと思う。
魔法に関しては恐らく彼女が全て上。
であれば、純粋な剣の技術だけで挑む。
しかし、少しでも火力を上げる為に魔法剣を使用。
通用するかはわからないが。

「…はっ!」

接近し、剣を振るう。
パワールーインを使われるよりも速く。
この一撃は…受け流された。
であれば、妖異のアンカルタと言えども片手で受け止めるだけの力は無いと見える。
また、恐らく片手でしか使えない武器だと思う。

「まだまだ!」

攻撃を続ける。

「大剣をこの速度で…。随分と腕を上げたようね。」

と言われつつも攻撃は全て受け流される。
アンカルタに焦った様子も無い。
全て完全に見切られていた。
ただ、アンカルタも反撃する機会は…そう思った瞬間だった。
彼女の左手から炎の魔法が発せられ、私は直撃した。
爆発し、私の身体は後方へ吹き飛ばされる。
受け身を取るが…結構効いた。

「…アンカルタ。」
「何かしら?」
「本気出してないよね?」
「…えぇ。あなたを傷付けるわけにはいかないから。」

笑むアンカルタ。
随分と上から目線だがわかってしまった。
実力差は歴然であると。
本気ではないアンカルタに手も足も出ないなんてね。
私が武器を仕舞うと彼女も構えを解き、見えない武器を仕舞ったみたい。

「妖異が人間に愛着を持つわけ?」
「人間か妖異かなんて関係の無い話。ゼンは私の唯一の弟子なんだから。ただそれだけの理由では不満?」
「…妖異はよくわからないということはよくわかった。」

妖異から見て私達は餌でもあるはず。
保存食程度かと思っていた。

「…また会えて良かった。」
「私も。何より、強くなっていたのが嬉しく思うわ。いえ、それもどうでもいいことね。元気そうな姿を見れて良かった。」
「アンカルタ…。」

彼女は妖異。
本人が言うので間違い無いだろう。
それでも…私の親だ。
血は繋がってなくとも…人間と妖異の関係であったとしても。

「それで、これからどうするの?」
「長年の夢が叶った以上、特にすることは無いわ。…ゼンは『女爵』の配下なのかしら?」

配下…配下なのだろうか?

「配下ではない。だから、妾達のことは気にしなくていいのじゃよ。師弟で再び旅に出るの良いと思うのじゃ。」

メルナの提案にアンカルタは黙って考え込む。
師匠の旅か。
それも悪くない。

「…光の力を持つ妖異、アーファ…その者を利用する動きはいくつか聞いているのよ。返り討ちにしているのでしょう?」
「えぇ。」
「近々、魔王の一角が動くと聞いたわ。」

魔王…妖異十二階位の第一位か…。

「その者に彼女の力を渡すわけにはいかない。だから…貴女様の配下にしてくれないかしら?」

意外な話だった。
アンカルタが組織に属するなんて…。

「それ程までに危険な状況?」
「恐らくは。」
「…まぁ、これだけの力があれば確かに…。」

光の力。
妖異の弱点となりえる力。

「汝程の実力者が味方とあらば非常に心強いのじゃよ。よろしく頼む。」
「えぇ、こちらこそ。」

一礼するアンカルタ。
第一位が一名に第二位が三名…その配下はいないがかなりの戦力だと言える。
メルナとアーファが住処に向かったのを見てアンカルタを引き留める。

「何か企んでいる?」

率直な疑問。

「強いて言えば保身ね。アーファの力は私には身に余る力。配下にするつもりも無いわ。であれば、その強大な力の矛先が自分に向かないようにするのが賢い生き方でしょう?」
「…なる程。」
「そして、あなたは彼女の味方。であれば、私が彼女の味方になるのも道理よ。」

それは言えないと思うが、それでも…。

「ありがとう、師匠。」

アンカルタが味方なのは心強かった。





『強敵を求めて』・終わり





後書き

ゼンと師匠の話。
師匠はいると何となく決めていたのでそれを実際に書いてみた感じです。



アンカルタ

妖異十二階位の第二位に属するとされる女性。
エレゼンの姿はかつて見かけた人間の姿を模した為。
実力はかなり高く、一対一であれば第一位に匹敵するとされている。


アンカルタの剣

特に名称は無い武器。
目に見えない加工がされている。
片手剣の柄に長い針が付いただけの形状をしており、針はいかなることでも折れない。