(京都市西京区 月讀神社)




◆ 「月讀命」を紐解く(2) 
~「ツクヨミ 秘された神」より~




紹介するべき神社が枯渇してしまい、
昨日は2記事で終わりました。

1週間をメドに1日2記事にしていくことにしました。変わらずご愛顧賜ればさいわいです。

鋭意、参拝活動中!




感銘と衝撃を受けた書、
「ツクヨミ 秘された神」(著 : 戸矢学氏)を教科書にして、月讀命の正体を紹介していく記事。


昨日に第1回目の記事を上げ、
今回はその続きを。

謎深き神とされる月讀命が、謎とされる理由を中心に記しました。


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【四系統の月讀神社】

筆者は全国の月讀神社には四種の系統があると述べています。これまで私は三系統と記してきましたが、訂正せねばなりません。もう一系統ありました。

*純粋に月讀命を祀る神社
*「壱岐 月讀神社」系統の神社
*「大隅隼人奉斎」系統の神社
*「月山信仰」系統の神社

抜け落ちていたのは「月山信仰」系統の神社。完全に忘れていました。東北に住んでいた時期もわずかながらあるのに…。

「純粋に月讀命を祀る神社」以外の三系統は、「月神」または「山神」(月山信仰)を祀る社であり、月讀命という神名は後の時代に宛てられたもの。

「壱岐 月讀神社」系統の社は、壱岐の月讀神社、京都市西京区の月讀神社(松尾大社 摂社)など。こちらは【書紀抄録】日神と月神、対馬&壱岐と十市郡と葛野郡」の記事を参照。

「大隅隼人奉斎」系統の神社は、京田辺市大住池平の月讀神社、城陽市の樺井月神社など。筆者はこれに限定せず「その他の月讀神社」といった形で括っています。

「月山信仰」の系統については、未だ不勉強であり詳しくは知りません。元は山神を祀っていたと伝わる、修験者たちがもたらした信仰のようです。月讀命を祀る神社としてはもっとも多いとのこと。

これら三系統を取り除くと、

以上の三社とあとわずかに残る程度とのこと。また皇大神宮別宮 月讀荒御魂宮に至っては、神名帳に「月讀宮二座 月讀荒御魂宮一座」と記され、皇大神宮別宮 月讀宮に含まれる格好となっています。
また総本宮といった神社も存在しません。




【「先代旧事本紀」の不可解な記述】

「三貴子(みはしらのうづのみこ)」誕生について、「先代旧事本紀」に留意せねばならない記述があると指摘しています。

「伊弉諾尊が御身をすすぐと三柱の神が生まれた。左の御目を洗うと天照太御神、右の御目を洗うと月讀命。五十鈴川の河上にに並んで坐す、伊勢に斎き祀る大神という。御鼻を洗うと建速素戔嗚尊。出雲国の杵築神宮(出雲大社)に坐す」と。

記とは右目左目が入れ替わっています。問題はそこではなく「五十鈴川の河上にに並んで坐す、伊勢に斎き祀る大神」とあること。

「五十鈴川の河上」とは皇大神宮のこと。ここに並び祀られていたというのです。

ここで筆者は重大な間違いを犯していると考えます。「五十鈴川の河上」に並んで坐すのは皇大神宮と豊受大神宮であるとしているのです。つまり豊受大神宮は元々は月讀命を祀る社であったのではないかと。

ところが豊受大神宮は「五十鈴川」ではなく、「宮川」と捉えるべきかと。つまり「先代旧事本紀」の記述を信用するなら、皇大神宮の近くに月讀命を祀る社が別にあったと。

これは皇大神宮別宮 月讀宮のことかもしれません。ただし現在は別宮であり、「並んで坐す」というよりは付属的な状態となっていますが。



【「二種神器」?】

「三種神器」は「八咫鏡・八坂瓊勾玉・草薙剣」のことですが、当初は二つしかなかった?

これは重大な落とし穴で、記紀をよくよく読み解くと「二種神器」とも取れるのです。

まず初めに瓊瓊杵命の天孫降臨の際に、鏡が天照大御神より授けられます。「吾が前を拝ふ(いはふ)がごとく斎き祀れ」「吾を視るがごとくすべし 同床共殿にて斎鏡(いはひのかがみ)とすべし」と。つまり私(天照大御神)と思って同床共殿にて祀れと。

次にスサノオ神が八俣大蛇を退治した際に尾の中から出てきたのが剣。

一方で勾玉は天岩戸神話で、天照大御神を引き出す際に榊の上部に勾玉を掛け、下部に掛けたというもの。

さて…問題は「二種」なのか「三種」なのか。
記紀の記述においてはほとんどが鏡と剣の「二種」となっており、古来より議論されてきました。現在は漢文の修辞法により勾玉が略され、「二種」のみ表記されるが、実際は「三種」あったということで落ち着いているようですが。

著書はこの部分について「二種」であったと断定し、「三種の神器という思想・システムそのものが、このとき天武帝によって発想された」としています。

この書の肝要な部分であり、明らかにして頂きたいところではあるのですが…。

ちなみに紀の持統天皇四年の段においても鏡と剣の「二種」しか記されていません…。

ま…仕方ないので、
「二種」であったという前提で、天武帝により「三種」になったとして、この後の話を進めていきたいと思います。


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今回はここまで。

神社紹介記事とは異なり、フォーマットも無ければ文字数も多く、なかなか大変な作業でして…。

しばらくは一日二記事で
このイレギュラーな事態を何とか乗りきろうと思います。



(京田辺市大住池平 月讀神社)