[韓国文学] さすらう地 | K-POPちょっといい話

K-POPちょっといい話

keitadjのK-POPブログ "K-POP Never Grow Old"

キム・スム著 『さすらう地』(2020年)

 

1937年ソ連の沿海州に居住する17万人の高麗人が対日協力の疑いで中央アジアに強制移住させられた。家畜運搬列車に1ヶ月閉じ込められた27人の声を通じて高麗人の悲劇的な人生を描いた。彼らは何処に連れて行かれるのか、彼らの運命は?史実を振り返りながら、興味深く読み進めることができた。

 

1937年8月、ソ連は17万人の高麗人を沿海州一帯から中央アジア地域に移住させる「高麗人強制移住計画」を立てる。沿海州一帯日本のスパイ活動を防ぐという名目だった。しかし、高麗人のほとんどは日本側の活動とは無関係であったと言われている。

 

9月の国境地帯に居住していた高麗人がシベリア横断列車に先に乗り、その後2ヶ月余り残りの地域に居住していた17万2,000人余りの高麗人が中央アジア地域に去った。この過程で過酷な列車内の状況で数多くの人々が死亡し、移住先では農耕には不向きな土地を開拓して生き残らなければならなかった。

 

しかし、高麗人は他の場所から強制連行されてきたドイツ人、チェチェン人、トルコ人らと協力し合いながら、灌漑施設を設置するなどの工夫を重ねたうえで稲作を始め、移住から3年後には不毛の大地を一大農業地帯に変えることに成功した。その姿勢が評価され、ソ連共産党から模範的社会主義者(労働英雄)として表彰される者もあった。

 

本作『さすらう地』はまさにこの強制移住列車に搭乗した高麗人たちの一ヶ月間の旅程を描いた小説だ。

 

窓は密閉されやっと一握りの光だけ漏れるだけの列車の中、人々の生死は肉眼より音で確認される。闇の向こうで「お母さん、私たちは流浪の民になるのですか?」という熱病を患うような少年の声が聞こえてきた。音に続くのは臭いだ。彼らを乗せて行くのは家畜運搬用列車。列車の中はおしっこや肉、たばこの葉、塩漬けのニシンのにおいでいっぱいだ。

 

家畜用運搬車という過酷な空間を背景に列車に載せられた人々の声、特に女性の声を借りて運命を物語に拡張させたこの小説は、高麗人たちの悲劇的な人生を描き出す。

 

<終わり>