Poco a poco -難病と生きる- -7ページ目

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

アップデートできていない僕が悪い。病気前と病気後。全盛期と今。昨日の鍼灸院で、初めてついた施術師と初々しい会話でスタートする。最近ハマっているご趣味は――。聞かれたが、答えにくい質問だ。以前はアクティブなスポーツが大好きでした。今は、観る専門です。

 

 

 

鍼灸師が距離を詰めてくる。ほう。ちなみにどんなスポーツを。聞かれたから答える。サッカーです。え。幼少から社会人まで継続してました。いえ。そんな。え。今は海外サッカーが楽しいです。イングランドのプレミアリーグとか。はいそうです。DAZNとか。U-NEXTとか。

 

 

 

 

サッカーに没頭していたのは本当だよ。競技の種類はフットサル(5人制)だけど。ただ、当時の熱量を昇華できていない今の僕だ。競技を通して、遅筋が弱いと感じてからは。マラソンや登山も趣味に取り入れた。テレビを通じて、憧れの選手からテクニックを学んだ。今は。

読書家の伯母から薦められた。オードリーの若林が、評判の小説を書いたみたいよ。普段からテレビに親しんでいる彼女が、著者を心配していた。暫く、表舞台から姿を消していた。調べてみる。喉の不調。発声に難儀していたようだ。だから小説か。時系列が変だよと伯母。

 

青天

(内容紹介)

人にぶつかっていないと、自分が生きているかどうかよくわからなくなる――。総大三高の「アリ」こと中村昴が所属するアメフト部は、万年2回戦どまり。相手校の練習を隠し撮りして迎えた高3の引退大会では、強豪・遼西学園に打ち破れた。引退後、みなが受験に向かうなか、勉強にも気持ちが入らず、不良になる覚悟もないまま宙ぶらりんの日々を過ごす。自分自身の不甲斐なさにもがき続けるなかで、アリは再びアメフトと向き合う決意を固める。青春の苦みと悦びに満ちた、著者渾身の初小説。

 

 

 

読後感が気持ち良い。スポーツを通した青春小説。これまで目を通してきたこの類の書籍は、所謂秀才を題材としてきた。今作の主人公は普通の高校生。学力は平均以下で、アスリート能力も同年代と比較して並程度。それが一気呵成の読了。さすが天才、若林。才能に嫉妬した。

電車を乗り継いで、新小平駅に到着。JR武蔵野線。府中本町駅で乗り換え。稲田堤駅でも乗り換え。京王線からJR南武線。普通なら、路線を変える乗り換え。ところが改札を出てから400mは移動する。無事に着いて一安心。もっと栄えているかと思っていた。昼食を取れる処。

 

 

何故、こんな辺鄙な所を訪れたのか。患者会。会長を務める女性から、日本小脳学会の研究発表会と懇親会に参加してくれないかと直談判があったから。もう分かったな。日本の権威だよ。なので、もっと大きな最寄り駅を想像していた。さてそろそろシャトルバスが来る時間。

 

 

まさかの乗車拒否。物理的に乗れない仕様のバスだから仕方ない。電動車椅子で現地を目指す。時速6kmで、片道15分の距離。近くて良かった。到着。NCNP病院。またの名を国立精神・神経医療研究センター病院。意外かも知れないが、僕自身、初訪問。広大な敷地面積。

 

image

 

迷路のような複雑なダンジョン。小脳学会のイベント会場はこちらと、丁寧な案内が出ていて、迷わず該当の建物に辿り着いた。受付を済ませる。控室を案内。先客が一名。すぐにメインフロアに通される。長丁場。久しぶりの参加だったが、ダメだ、専門用語が眠気を誘う。

 

 

先ほどまで壇上で熱弁を振るっていた研究者が、穏やかな表情で食事を楽しむ二次会の懇親会が催された。会長曰く、初めて懇親会に招待されたので、患者会の存在を彼らにアピールしたいと。気合は伝播する。但し空回り。ビールにサワーに日本酒に。え。まら大丈夫れすよ。

昨日は元カノの誕生日。忘れたことなんてない。何より記念日を大切にする彼女だ。交際半年記念とか。三周年記念日とか。忘れっぽい僕も、さすがに覚えたよ。さて誕生日。何が食べたいかヒアリング。人気店の名前が出てきたら、事前に予約をしておかないと。ところが――。

 

 

彼女の口から出てくるのは、僕の得意料理ばかり。外食より、内食(手料理)を好む彼女だ。そりゃ、僕も楽だぜ。でも、それで良いのだろうか。彼女の満足そうな表情を間近で見ることができて、安心する。この笑顔の為なら、何だってする。大好きな缶ビールを我慢だって。

 

 

この残酷な病気と改めて向き合う。確定診断から11年。多くを失ってきた。一方で、新薬はまだ出来ない。仮に出来たとして、ではすぐに幸せになれるだろうか。失ったモノは、二度と戻ってこない。元カノも、愛犬も。早々に復職できるだろうか。また部屋を借りられるか。

74,397名。この数字を見て、何を想像するだろうか。正解は、昨日集まった観衆の数。サッカー女子のアジアカップ決勝戦。ホームで盛り上がるオーストラリア代表と、ここまで1失点に大量得点と盤石の戦いを見せてきた、我らが日本代表。またの名をなでしこジャパンの一戦。

 

さて、この試合を前に。たかが女子サッカーだと高を括ったお前らに伝えたい。女性アスリートの基礎体力を舐めるなよ。確かに過去の試合で、女子日本代表が男子の高校年代と対戦し、ボッコボコにやられるといったデータも残っている。中学生男子ぐらいが関の山だろうと。

 

甘いよ。甘い。僕は知っている。本気女子の実力を。かつて出入りしていた男女MIXのフットサルチームで、体育大の女子と一緒になったことがある。背が低いことを除けば、男子やんけと。大学生がそのレベルよ。話題はなでしこジャパンよ。メンバーの所属、知っているか。

 

 

今回の遠征招集メンバー26名のうち、国内リーガーが僅か4名だ。あとは海外。しかもトップリーグ。憧れのプレミア(イングランド1部)リーグには、男子を遥かに凌駕する在籍数。しかも数だけではない。マンチェスター・Cやユナイデット、リバプールら強豪から主力級。

 

前置きが長くなっちゃった。相手はフィジカルで勝るオーストラリア。これまでの戦いが嘘のような防戦一方。でも、最後のところでは負けない。攻撃では少ない手数ながら、浜野まいかの上げた貴重な先制点。優勝。来年に開催されるブラジルW杯の参加権も手に入れられた。

 

 

どうもメディアの取り扱いの少なさが目立つ。凄いことなのに。同時間帯、日本ではR- 1グランプリ決勝が民放(フジテレビ系)で放送されていた。共に、予定調和のない戦い。なら僕はスポーツを選ぶよ。特にサッカーは、実際に競技として親しんできた大切な思い出だもの。