世間が使う「勝ち組」「負け組」という言葉が嫌いだ。
何故なら、僕自身が「負け組」に位置していると自覚しているからだ。
結婚もできない、稼ぎも少ない、持ち家なんて諦めた。
卑屈にならない方法は、「勝ち組」連中に近づかないことである。
しかし好むと好まざるとに関わらず、今もあらゆる誘いが入る。
同年代の友人にして、かつての仕事仲間である今はセレブ。
蓄えた資産を類まれな錬金術で増やし、億ションを購入。
結婚相手も捕まえて、彼自身は優雅に海外を放浪するのである。
前回は1年以上の滞在期間であったが、今回は7カ月だそうだ。
久しく会えない友人連中に別れを告げるべく、開催されたパーティー。
面接を終えた足で、大豪邸まで駆け付ける。
セキュリティーが強固で、3度のインターホンが必要な要塞である。
参加費が1,000円と格安なのに、飲み物も食事も充実している。
ホームパーティーとは思えないほど、設備が充実した部屋である。
女子会かと勘違いするほど、若い女性が多く集まる。
彼女らから「お仕事は何を?」と聞かれる度に、答えに窮する。
以前の仕事で転職先を斡旋したキャンディデイトと3年ぶりに再会。
彼女は、友人男性の結婚相手である。
彼女の現在のルームシェアメイトとも、その後は交友を深めた。
人との出会いは合縁奇縁。卑屈になっては何も得られない。
乾杯前から缶ビールを3杯煽っていたからか、酔いが早い。
誰かが来る度に、玄関まで迎えに行くのだが、膝が上手く曲がらない。
呂律が回らない口調を、酔いのせいだと笑う参加者と対峙する。
膝の調子も呂律の問題も、病気と知る友人連中は心配そうだ。
他人の成功を妬んではいけない。これは分かる。
でも、自分の不遇を恨みたくなる。明日は引っ越しの内見だ。
今の部屋より格段にグレードダウンする内装を見て。
果たして、食指が動く自信が無い。



