乾徳山 | Poco a poco -難病と生きる-

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

新・花の百名山、山梨百名山、そして、日本二百名山である乾徳山。手元にあるガイドブックには、難易度が中級向きと書いてある。同じく、山梨県は塩山駅からバスの距離にある西沢渓谷とどちらを選ぶか。一緒に登る参加者が体力自慢なら前者だ。当日キャンセルが1名出たものの、参加する2名はいずれも超アクティブ。これはもう、言わずもがな。


一人前のHHになりたい28歳の日常


前夜、日比谷で開催中の大つけ麺博に赴き、突然の豪雨に見舞われ、翌日の天候を懸念していた。それがどうだ、この青空だ。マイカーで朝7時前に家を出て、中央道で勝沼ICを降り、乾徳山登山口バス停に駐車。そこから徒歩。時刻は9:30。標高はまだ800M。気温は低いが、すぐに体温が上がる。林道を歩き始めて2時間、ようやく山容と対面。


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標高1800Mの扇平。つかの間のなだらかな道。湿地帯から、見上げれば乾徳山の険しい岩峰を見て気分が高揚する。振り返れば、富士山がドーンと構える。これもまた、絶景である。ここまでたどり着くのに、結構な体力を消耗している。道中、会話も少なかった。やはり視界が開けると楽しい。この付近でしばし休憩。さて、いよいよ中級コースに挑戦。


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岩の間をすり抜けて岩尾根に上がる。この過程に、友人の2名とも顔を引き攣らせていた。バランスを崩したら、崖の下に真っ逆さま。ひげすり岩と旗立岩をクサリやハシゴ頼りに越えていく難所をクリアすると、本日のメインイベントが登場。杖捨岩。20Mの垂直な岩壁をよじ登る。クサリはあるが、命綱はない。この緊迫感は、なかなかのものである。


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そして登頂。標高は2031M。眺めは最高。2日前に登ったばかりの大菩薩や、先月に登った金峰山(奥秩父)、南アルプスの山々を確認することができる。ここで昼食。リーダーの言いだしにより、一人一品のおかずを持ち寄る。僕は玉子料理担当。自前のコッヘルとバーナーで、即席の玉子スープを作って振る舞う。他の料理も美味しかった。


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時刻は2時を回ろうとしていて、慌てて山を降りる。登りに3時間半弱を要した。下りに同じぐらいの時間を掛けてしまうと、歩けなくなる。コースは往路と異なる、水のタル経由。道なき道。膝が笑い、何度も転倒した。情けない。名物の湧水「綿晶水」に癒され、何とか下山。休憩を含め、7時間の山行。過去最高に過酷だったが、それ以上に楽しかった。