「まこちゃんへ」
出会ったとき、運命だと思った。
体中に衝撃が走り、ああこのひとを絶対手に入れなきゃ!と。
それほどに激しくあたしのこころを揺さぶった。
出会った次の日に告白して、その2日後に付き合った。
あなたが自ら命を絶つまでの付き合った期間はたったの10ヶ月だったけれど、あたしにとっては「たったの10ヶ月」ではなかった。
愛し、愛され、お互いを必要とし、精神を患うお互いを労わり、自分の半身のようで、あなたといる時間ほど愛しいものはなかった。
あなたを抱いて、抱かれる悦びも、笑い合う充実感も、喧嘩したあとの恐怖も、すべてがしあわせの中で、一緒にいるだけでよかった。
死ぬことを夢見ていたあなたなのに、あたしが死にたいと叫び、心中したいと何度すがっても、一緒には死んでくれなかった。
どれだけ愛していたんだろう。
愛など終わっていなかった。
けれど、あなたがあたしに固執していくたび、あたしは自分を見失い、自分の生のためにあなたを見捨てたのだから。
結局、あなたはひとりで死んでしまった。
どれだけ悔いただろう。
冷たくなったあなたの唇をなぞったとき、もう二度とあなたと唇を重ねることも、お互いをあたためあうことも、あなたのためになにもできなくなったあたしの現実は足元から崩れていった。
あなたはあたしにたくさんのものをくれた。
あたしは自分自身が大嫌いだった。
自らの過去も病気を持っている自分も自分の顔も体も言動も性格もすべてすべて消し去りたいほど嫌いだった。
けれどあなたは会うたびにあたしをあたしの素顔さえかわいいと言い、愛してると言ってくれた。
その言葉がどれだけの自信になっただろう。
あたしは着飾らなくても、あなたに愛されることを知った。
だからもっときれいになりたかった。
ただ、あなたに愛されたかった。
ただ一緒にいられればよかった。
あたしがいるんだから、生きられるよ。そう言えばよかったと、何度思っただろう。
いつもみたいにあなたのひざのうえに乗り、後ろから抱きしめられ、一緒にたばこを吸い、あなたのタトゥーをなぞり、キスをして、愛してると言いたいと何度願っただろう。
愛していたのに、自分のエゴであなたを殺したあたしはどう償えばいい?
愛しているのに。
それでもあたしは不幸な女ではないことを知った。
あたしはあなたに生を託され、最後に愛された、幸福な女だったと。
あたしはいつも自分ほどしあわせな女はいないと思う。
あたしはきっとあたしがあなたのあとを追っても、あなたは喜ばないことを知っている。
あなたはあたしを殺させてくれはしなかったから。
ただ少し淋しいだけで、哀しくなんてない。
あなたとまた会えるときまで、あたしは自分の生を全うし、また笑顔で話せることを楽しみにしている。
常に狂気を持って生きてきたあたしを、唯一穏やかに変えたあなた。
たくさんの女と寝てきても、初恋もできなかったあなたが最初で最後に愛してくれたあたし自身をあたしが嫌いだと言えるはずがない。
そして、あたしにとってもあなたは特別で、これ以上ないほど愛している。
あたしはもう二度と本当にはだれかに恋することも愛することもできないかもしれない。
それでもあたしはビッチだからたくさんの男と寝て、恋をするかもしれない。
あなたを愛したことで、喪うことの怖さを知った。
けれど、だれかを愛したい。そして愛されたい。
今がその時でなくても、まだあなたを愛していても、特別でも、あたしは楽観的だから。
あなたと感じたかった悦びも感動も今はもうすべて無になったけれど、けれどあなたが死んで、あたしは前以上にあなたを近く感じ、記憶すら薄れない。
生きてさえいてくれれば、と何度も叫んだけれど、あなたの夢は死ぬことで、あたしの夢は生きることだった。
あなたと語った幸福な夢も過去のものとなってしまったけれど、それでもあたしはまだ夢に見る。
どれほど自分が愛していたか、愛されていたか、今でも感じる。
たくさんの思い出と確かな愛とこころにあるあなたの存在を抱え、あたしは生きていく。
どれほどこれから先、苦しい思いをし、泥をかぶり、足を止めたとしても、またあたしは歩き出せると信じている。
子宮頸がんの手術で入院中、あなたはあたしのために花束を持って現れた。
エレガントな男!なんてびっくりしたけれど、あたしは男から花をもらったことなどなくて、ずっとずっと花を眺めていた。
美しくて、まだ輝いてる、大切な思い出。
まこちゃん、愛しているよ。
