My favorite things ~浜路の場合~ | 慶應義塾大学公認学生団体落語研究会公式ブログ ―慶應落研日記―

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 こんにちは!落研のバドエン担当こと五代目浜路です。
 慶馬さんから企画を持ちかけていただいて、個人的なおすすめの曲ベスト10を選ばせていただくことになりました。
 ところで、落研のカラオケは選曲が2000年を超えないことで有名なのですが、その一端を担っているのが私です。50年代にとっては懐かしの曲。20年代にとっては初耳学な選曲もあるかと思いますが、老若男女誰でもきっと好きになっていただける!そんな曲を用意しました。
 amazon music にある曲ばかりですので、ぜひ通勤、通学、現実逃避の時間に聞いてみてくださいね!

1.マ・シェリ(2016) 作詞作曲:椎名林檎 編曲:斉藤ネコ・椎名林檎

 Hein Dis-moi qui je suis? qui je suis? Car tu es mon miroir.
   (ねえ教えて私はだれ私はだれ?)
 現代人はさまざまなコミュニティーに属しながら生活を営んでいます。会社や学校、サークルなど、いろんなところで自分の「キャラ」という仮面を被って、人間関係を保っていますよね。お世辞、建前、謙遜、忍耐。相手に合わせているうちに、いつの間にか、自分は一体何者なのか、仮面をつけているのか外しているのかわからなくなることはありませんか?自分は一体何がしたいのか、何者なのか、無理をしているんじゃないのか。フランス語の呪文のような歌詞から始まるこの歌、鏡よ鏡と真実を映す白雪姫の鏡は自分自身の本当の姿を見せてくれます。
「穏やかで理性的。目利きで平等なあなた。おつかれさま。大丈夫、今日も人はそう評価したから。」
「求めては諦めて大人になってきたあなた。お忘れなさい。大丈夫、ちゃんと時は過ぎていくから。」
 世間体を保って、取り繕っている自分に労いの言葉をかけてくれる鏡。傷心を癒してくれます。人間関係に疲れたり、迷走したりした時にぜひ聴いてみてくださいね。

2.じゃじゃ馬娘(1978) 作詞作曲:大貫妙子 編曲:瀬尾一三

 2024年3月に私、浜路と馬綱で二人会を行ったのですが、名前はまさしく「じゃじゃ馬の会」。そう、この曲からとっています。女の子の遊びは嫌い、泥だらけで遊びまわって、年上の好きな子に恋心を知られるのは嫌だから、からからかってわざと振り向かせてみせる。対男子のみ小学生マインドのじゃじゃ馬娘な私にとって、女子校魂に刺さります。
 大貫さんは今やレジェンドですが、リリース当時はデビューしたて。うわずってあどけなさが残る声音に、ちょっと強気な歌詞、シティポップ特有のコーラスでレトロを感じられる一曲です。

3.言って(2017) ヨルシカ 作詞作曲:n-buna

  未亡人が好きな人、バドエンが好きな人挙手!!!!はーい!!!!!と掛け声をしたくなりますね。私と同世代の方にとっては中高時代によく聴いたわ、という懐かしさと当時の黒歴史を思い出す一曲です。君がいったことを受け入れられないままでいる、「言って」と届かない言葉を繰り返す、そんな「私」に感情移入してしまう悲恋ソングです。

4.After the rain (2009) 作詞作曲:mitsubaco 編曲:原田智英

 上橋菜穂子原作『獣の奏者』のNHKアニメ「獣の奏者エリン」のエンディングソングですね。同世代の方だとアニメ見てたーって方、多いんじゃないでしょうか。主題歌のOPは傑作として有名なのですが、私はこちらの方が好きですね。雨があがったら、苦難を乗り越えたらどうしよう、という未来への希望と、「悲しみは消えないから」というちょっとした悲哀が織り混ざった一曲です。原作ファンとしては解釈一致の激アツ作品なのですが、原作を知らなくても、ちょっと悲しいことがあった時、雨で気分が上がらない時、優しい気持ちになれます。

5.う,ふ,ふ,ふ(1983) カバー:コトリンゴ 作詞作曲:EPO

 1900年代に戻りました。と言っても私が好きなのは2010年リリースのコトリンゴによるカバー曲です。原曲に比べテンポがゆっくりで、コトリンゴさん特有のふんわりと包み込むような声音が相まって一言で言うと““癒し““です。歌詞の中では、特に「ひとつやふたつの あやまちだったら プロフィールになる」という台詞が、とにかく刺さる。何か失敗しちゃった時、自分の中では大失敗だとしても、いつか自分のプロフィールになる、という楽観が救いになります。

6.a life(2010) 作詞:大貫妙子 作曲:坂本龍一

 『日本沈没2020』の主題歌になった曲ですが、リリースはそれ以前。坂本龍一さんの軽やかなピアノと大貫さんの通る歌声が印象的な、アルバム「utau」の中ではハイテンポの一曲です。悲しいことがあっても、儚い日常なのだから、大事に大事に守っていこうという前向きな曲です。朝日に照らされる散歩中に聴きたくなります。

7.いちばん小さな讃美歌 naomi&goro 作詞作曲 菊池成孔

 ボサノヴァのカバーアルバム「calendula」の最後の一曲、「いちばん小さな讃美歌」は鎮魂の趣がある菊池さんのオリジナルです。ずっとすれ違っている二人、「きみがねむったあと ぼくがかなしむ ぼくがねむったあと きみがないてる」。直接表すでもない、ただ、いつか一緒になる日が来ますように、という願いが感じられる小さな小さな呟きのようで切実な素敵な曲です。「おやすみなさい」という最後の一節が祈りでもありつつ、聞き手を包み込んでねむりの世界へ誘います。

8.みぎてのうた(2016)   コトリンゴ 作詞:こうの史代・片渕須直 作曲編曲:コトリンゴ

 コトリンゴさんは戦時中の広島を描いた漫画『この世界の片隅に』の映画の主題歌を担当していて、「みぎてのうた」は原作に登場する詩を元にしています。歌詞がね、いいんですよ。ふとした日常が、実はかけがえのないもので、その日常の一端を担うあなたは、「この世界の切れつ端に過ぎない」。だけれど、同時に「懐かしい切れぎれの誰かや何かの寄せ集めにすぎない」、自分は他者の記憶のかけらでできているから、どこにでも自分に居場所はある。ついつい、自分は一人だ、自分がいなくなったら何も残らない、と思い込んでしまうことがある。そんな時に聞きたい曲ですね。 

9.別の人 手嶌葵 作詞:宮崎吾朗 作曲:谷山浩子 編曲:中脇雅裕

 浜路おまえさん病んでるのか?と思われる方、大丈夫です。専攻が社会学なんです。お察し下さい。
 さて、この「別の人」という曲はジブリ映画『ゲド戦記』の公式歌集に収録されています。原作者から酷評を受け、いまいち評判が良くない怪作『ゲド戦記』ですが、歌集は原作の解釈なので、原作ファンは必聴。手嶌葵さんは物語の鍵となる少女、テルーの声優をやっておりまして、映画ファンの方も「テルーの唄」ファンの方も聴いてみてくださいね。あわよくば原作を読んでください。
 「別の人」は私じゃない別の人になりたくて、生まれ変わった自分を空想するけれど、結局わたしはわたし、という諦念の一曲です。来世何になりたい?なんていうのは仏教的な感覚ですが、何かに行き詰まったりしたときに、ついつい考えちゃいますよね。生まれ変わったらもっと金持ちの家に生まれたい、生まれ変わったらもっとコミュ力高く生まれたい、生まれ変わったらもっと美人に生まれたい、生まれかわったら…なんてついつい来世に期待しちゃったりして。ちょっと疲れた時に聞くと、自分の心を代弁してくれる、そんな曲です。
 他解釈は、ぜひ原作読んでください!原作読んで!
  
10.SUPER FOLK SONG RETURNED (2017) 歌詞:糸井重里 作曲編曲:矢野顕子

 こうゆう老後が送りたい。そんな願いが詰まった64歳の曲です。え?64歳?って感じですが、「When I’m sixty four」という歌詞が2回もあります。この曲はとにかく語呂とテンポがいいので、歌詞を覚えて口ずさむのが快感ですね。歌詞の内容は完全に、64歳周囲はどんどん人がいなくなっていって、シワも増えていってるけど、二人一緒最後までいられるなら全てよし、というハピエンの曲。え?バドエン担当では?いやいや、矢野顕子さんにかかればバドエンもハピエンに塗り変わるものです。64歳になるまで歌えるのでよろしくお願いします!

というわけで、とにかく歌詞にフォーカスした選曲となりましたが、私の処方曲は病んだ時にますます有効(?)なので、ぜひぜひ暇な時に聞いてみてください!

以上、五代目浜路でした!