tricleのブログ
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「悪徳」

ロバート・アルドリッチがジャック・パランスの主演で作った1955年の作品。

題材がハリウッドの内幕物というのと邦題からパランスのプロデューサーが悪徳の限りをつくすものを想像してしまいましたが、全然違う内容の映画でした。ちなみに原題は「The Big Knife」。実は舞台劇の映画化なのですね。

スターのチャーリー・キャッスル(パランス)。彼の問題はサバイバル。

というナレーションで始まります。

ゴシップ記者から離婚について問い詰められる場面から始まりますが、別居しているはずの妻のマリオン(アイダ・ルピノ)が登場したことで切り抜ける。

実はマリオンとは本当は別居していて、別れる寸前。

きっかけはチャーリーの浮気ですが、実はマリオンがチャーリーを見限った本当の理由は、演技にかつての熱意がなくなったこと。

スタジオのボス、ホフ(ロッド・スタイガー)のいわれるままに映画に出て気のない演技をしているだけにしかみえない。そしてそのホフからはなんと7年の契約を持ちかけられている。

チャーリーはホフとの契約は断るから戻ってきてほしいとマリオンを説得する。

しかし、不意打ちでやってきたホフにチャーリーは逆らえなかった。

 

チャーリーがホフに握られている弱みが何かは、実は冒頭のゴシップ記者との会話から想像できると思います。マリオンもそのことは知っているのですが、実はマリオンが知らないことがあったというのが終盤での重要な展開になります。

スタジオが長期契約でスターを囲いこむという設定自体が、時代を感じるものになってしまっていますが、金と芸術の板挟みになるスターの苦悩が舞台劇になるあたりで、当時の映画会社と映画スターがいかに重要な地位にあったかが分かると思います。

らしくないスター役を演じるパランスが素晴らしい。見事にスターに見えて、彼の演技力のすごさが分かります。チャーリーのパブリシスト、エージェント、ホフの右腕のフィクサーなど様々な人が絡んできますが、描かれ方が大変興味深く、出演者も充実の極みで、実に濃厚なドラマを堪能できます。

舞台がほとんど主人公の家の居間なので、いかにも元が舞台劇という感じですが、全く問題ない。というか当時の舞台劇の記録としても貴重ではないかと思います。

ちなみに元の舞台で主人公を演じたのはジョン・ガーフィールド。赤狩りに果敢に抵抗して映画に出られないまま急逝した人です。

「偽りの楽園」

未体験ゾーンの映画たち2026での劇場公開。

原題は「Influencer」。2022年と少し前の作品ですが、去年「Influencers」という続編が作られている。

 

タイからインフルエンサーのマディソン(エミリー・テナント)が発信している場面が続く。発信している時は当然明るく楽しそうなのですが、それ以外ではあまりそうでない。どうやら一緒に来る予定だった恋人のライアンがドタキャンして一人で来なければいけなかったせいらしい。

1人でバーで飲んでいるとイギリス人のおじさんがナンパしてくる。それを助けてくれたのは現地の人CW(カサンドラ・ノード)。

彼女と意気投合して何日か一緒に遊ぶ。翌日アメリカに帰るという晩、ホテルに帰るとドアが開いていて、中は荒らされている。パスポートが盗まれていた。

CWに助けを求めて、パスポートの再発行の手続きをしてもらうが、仮のパスポートの発行まで2週間もかかるという。

ライアンが連絡してきたので、事情を話すが、予定していた仕事がダメになると怒り出す。ライアンはただの恋人ではなく、仕事のパートナーでもある。ライアンの自分なしではやっていけないだろうという態度に、マディソンはこれまでの思いがあったのか「別れる」と言ってしまう。

その話を聞いたCWは気晴らしに自分の実家に行こうという。

離れた島にある家は大変豪華。スマホが繋がらない。マディソンは解放されたと喜ぶ。CWはサプライズがあると翌日、日が昇る前にマディソンを連れ出してモーター・ボートに載せる。

2人の向かったのは離れ小島。

その晩、焚火を囲んだマディソンは、昔焚火を囲んでいた時にコワイ話を聞いたと話す。CWはもっと怖い話があると「朝起きると、私がボートに乗っていなくなっているの。この島は近くを通る船がないから誰も助けてくれない。」

マディソンは「うける!」と笑うが、「でもその話には穴があるわ。私のフォロワーは私がいなくなったことに気づいてしまう。」「あなたのフォロワーって若い女の子たちでしょ。何もしてくれないわよ。」「そうかしら。」

翌朝、CWは本当に寝ているマディソンを置いてボートで出てしまう。

ここまでで30分近いのですが、ここで初めてタイトルがでる。最初に名前がでてくるキャストはカサンドラ・ノードで、彼女が主演であるとわかります。

3週間後というテロップが出る。

CWはマディソンのフリをしてSNSの発信を続けている。顔をマディソンの画像に差し替え、音声もマディソンとそっくりのものを作って流して、マディソンがやっているように見せかけている。

しばらくして「発信は止めることにした」と宣言する。

CWは次のターゲットを探す。マディソンと同様に恋人にドタキャンされて一人で来ているインフルエンサーのジェシカ(サラ・カミング)が狙われる。

マディソンの時ほどスムーズではないが、同じようにして離れ島の家に連れて行くのだが、家の前にオートバイが停まっていて、誰かが中にいるよう。

中で待っていたのはライアンだった。

「お前たちは誰だ。ここはマディソンが借りているんだろう」

はたしてCWはこの想定外の展開にどう対処するのか…

 

これはなかなか楽しめる作品でした。明らかにオカシイ状況へのジェシカとライアンの対応に説得力があるのがいい。それでこそCWがどう対処するかが見どころになるわけです。

先に書いたように既に続編が作られているようで、それも見てみたくなる出来だと思います。

「コート・スティーリング」

ダーレン・アロノフスキー監督の新作はオースティン・バトラー主演のクライム・コメディ。

舞台は1988年のニューヨークということで、ツインタワーが見える風景から始まる。

バーテンダーのハンク(オースティン・バトラー)はアパートの隣室に住むパンク頭のラス(マット・スミス)から急用でイギリスに帰らなければならなったので面倒を見てくれと猫を預けられる。これが元でとんでもない事に巻き込まれることになる。

アロノフスキーとしてはかなり軽いタッチのコメディ。その一方で暴力描写はかなりリアルで厳しく、ストーリーも結構シビアですが、話に緊迫感をもたらしていて良かったと思います。

なんといってもオースティン・バトラーが魅力的で、映画を見せるものにしていると思います。

豪華な共演陣もいいのですが、素晴らしいと思ったのは撮影で、特に動きが見事だったと思います(撮影はアロノフスキーの映画といえばこの人のマシュー・リバティーク)。

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