「チャレンジャーズ」
ルカ・グァダニーノの新作。
2019年と年代が字幕で出ますが、これが重要。
プロテニスプレイヤーのアート・ドナルドソン(マイク・ファイスト)は人気のあるトッププレイヤーだが、今年に入って不調。妻でコーチのタシ(ゼンデイヤ)はトレーナーを増やしてハッパをかけ、再起をかけて地方トーナメントにワイルドカードで出場するのを承諾させる。
一方、そのトーナメントのためにやってきたプロ選手パトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)はカードが止められて車で寝るしかなくなる。朝一で登録したパトリックを登録係の女性は知っていた。
「あなたの高校時代の試合で線審をやっていたのよ」
そして、「教えてあげる、アート・ドナルドソンが出場するのよ」
それが、単に有名選手が出場するという意味でないことはやがて分かります。
アートもパトリックも決勝戦に進出して試合が始まる。複雑な表情でボールの行方を追うこともできない様子のタシ。
そこから15年前に戻る。
高校の大会でアートとパトリックのペアが優勝する。
二人は翌日のシングルの試合の決勝で対決する予定。
しかし、二人の実力の差は分かっていて、パトリックはアートに「明日負けてやってもいいぞ。」
「本当?おばあちゃんを喜ばせたいから頼もうかな。本当にいいの?」
「優勝したって何の意味もないだろう。」
二人は女子のシングルの決勝の試合を見てそこで優勝したタシに夢中になる。
夜、タシの優勝祝賀パーティに出た二人。
ダメ元でタシに声をかけると相手をしてくれるだけでなくなんとタシは二人のことを知っていた。
「僕たちの部屋の番号をあげるから夜、遊びに来ない?」
なんとタシは番号の紙を受け取って去っていく。
その晩、どうせダメだろうと部屋でダラけている2人。そこへドアベルの音。
やってきたタシは小悪魔的に二人を翻弄して、さらに「明日勝った方と付き合ってあげる」
この後3人がどういう関係になっていったかという話が冒頭の決勝戦の様子を挟んで繰り広げられます。現在の状況は分かっているわけですが、一直線にこういう状況になったわけでない。それを時系列を並べて語らないのがミソで、意外な展開の連続になります。
人間ドラマとして大変見ごたえがあります。ここぞという場面で音楽をガンガンならすという演出が見事に決まっています。主役の3人の演技も大変すばらしい。若い時から現在までの長い年月の経過を見事に演じています。
見ていてわかるようになりますが、この映画のテニスというのは人生のメタファーになっているわけで、映画中続いている試合の勝敗が3人の人生を決めるわけではない。これがこの映画の意味だと思います。