「嫌われる勇気」がベストセラーになって有名になったアドラー心理学ですが、私は30年ほど前からアドラー心理学を日本の代表的指導者の岩井俊憲先生より学んでおりました。今回はアドラー心理学を学んでとても大切だと思った考えについて述べてみます。
オーストリアのウィーンに生まれた精神科医、心理学者のアドラーは、臨床心理学の基礎を作った心理学の三大巨頭として、フロイト、ユングと並び称されます。
アドラーは、人が幸福になるための3つの条件をあげています。この考え方は、幸福を考えるにあたり有益なヒントを与えてくれます。
1つ目は、自己受容。自分で自分のことをありのままに受け入れるということです。自己肯定感、自尊感情、自己効力感といった類似の概念がありますが、自己受容とは、自分にはいろんな良い点も悪い点もあり、100点満点でなくても、そのままでOKだとという思いです
ある意味での自己効力感が「自分は大抵のことができる」という自信のような積極的感情ですが、自己受容はどちらかというと受け身的な感じかも知れません。
2つ目は、他者信頼。他人とのいい関係をつくれる。他人と親密な人間関係を築けるということです。
3つ目は、社会貢献感。自分が何かの役に立っているという気持ち、感覚、経験をもてるということです。社会や人間関係の中で、自分は意味のある存在だと感じることです。
アドラーは、この3つをもっていることが、人が幸せになる、幸せを感じる条件だといっています。とりわけ自分自身に受け容れられない、自分自身をOKと思えない、自己受容度の低い人たちが、他者と対等なウイン・ウインの関係を築けるかというと、なかなかうまくいきません。
現在のビジネス環境において、どれだけの人が職場で自己受容や他者信頼、社会貢献感を感じているでしょうか。
成果主義、能力主義といった言葉は、結果や成果=その人間の評価であることを象徴しています。悲しいかな、あるコンサルタントは人材のことを「人財」「人罪」と呼んだりしています。成果を出せば「人財」、マイナスになれば「人罪」などと説明していました。人は「財」でも「罪」でもなく、あくまですべての人が尊厳をもった「人間」にほかなりません。
とはいうものの、ビジネスマンである限り、結果を出さなければなりません。しかも数字で客観的に評価される結果が要求されます。そのために、結果を追い求めるあまり、自己受容も押しつぶされてしまうかもしれません。
ビジネスの場で、強みを活かし、スモールステップの僅かの進歩や達成に注目しながら、自己受容から自己効力感を育んでいけるようにサポートするコーチングができれば理想だなぁ、と思ったりしています。