音楽が心に与える影響2 | 立命館大学ビジネススクール教授 高橋慶治のブログ

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立命館大学ビジネススクール教授、合同会社人間開発研究所代表社員、元臨床心理士、元JOC強化スタッフ(メンタルトレーニング、コーチング)の高橋慶治が、マインドフルネス、メンタルタフネス、ストレスマネジメント、コミュニケーション&人間関係など色々書いています。

音楽が心に与える影響はおおよそ3つほどまとめられると思います。

 

<1/f ゆらぎ効果>

音楽の作用には、まずその物理的特性に「ゆらぎ」があります。大きくなったり小さくなったり、強くなったり弱くなったりする連続的だけど、一定ではない揺れのことを「ゆらぎ」という。じつは、この「ゆらぎ」にこころが安らぐ秘密があるのです。

 

ゆらぎに含まれる波動をf(周波数)という記号で表すと、人の生体リズムや自然界には、1/fというゆらぎがあるといいます。例えば人の心臓の鼓動には1/fゆらぎがあり、川のせせらぎや虫の声などにも1/fゆらぎがあります。

 

そのお互いの振動が共鳴すると、美しいと感じ、和ませてくれるのでしょう。そのパワースペクトルが周波数fに反比例することから、「1/fゆらぎ」と名付けらています。

 

その後ろうそくの炎、そよ風、小川のせせらぎなどの様々な自然現象の中に「1/fゆらぎ」が発見されました。「1/fゆらぎ」は不規則さと規則正しさがちょうどいい具合に調和している状態で、これらの音や音楽を聴くと、心身がリラックスし脳波をアルファ波(1/fゆらぎの脳波)に誘導されるという。

 

バロック音楽の多くはこの1/fゆらぎを持っていると言われいます。また、意識中枢の前頭葉で見られるアルファ波もリラックスし快適感を感じると、この1/fゆらぎを表すと言われています。

 

過去に脳力開発研究所で働いていた時、この1/f の分析装置があり、それを使って音大生の卒論の手伝いをしたことがあります。名曲と言われるサザンオールスターズの「愛しのエリー」が1/f だったのを覚えています。

 

<条件づけ効果>

そして次の音楽の作用「条件付け」が考えられます。過去の素晴らしい経験や思い出と結びついている音楽。聴くだけで「懐かしい」「楽しい」「うれしい」気持ちが蘇ってきます。

 

子供の頃に大好きでテレビかじついて見たアニメのオープニング曲を聞くと、数十年立経っていても、そのころのワクワクした気持がよみがえってきたり、学生時代に大好きだったアーティストの曲を聞くと、アット言う間に学生時代のワクワクした気持がもどってきたりします。

 

また、感動した映画の名シーンのバックに流れていたスクリーンミュージックを聞くだけで感動がよみがえってきたりします。

 

以前、あるJリーグの選手が練習でモチベーションが上がらない日があるというので、テンションがあがる楽曲を探して練習前に聴いてみたら?とアドバイスしました。その選手は子ども時代「ドラゴンボール」が大好きでそのテーマ曲を練習前に聴いたそうです。彼曰く「スーパーサイヤ人になった気持ちで練習に向かえました!」とのことでした。

 

 

<プラシーボ(偽薬)効果 >

また、権威者などが「これはリラックス出来る特別な音楽だよ」とお墨付きを与えたりすると、それが暗示になり実際にその効果が生まれる。プラセーボ(偽薬)効果と言われます。

 

プラセーボ(偽薬)効果というのは「信頼できる医者が言うのだから、効き目があるに違いない」と患者が思い込むことによって、実際に薬の効果があらわれてくる現象です。

 

アメリカで、こんな実験がありました。ある患者にはモルヒネを与え、別の患者には偽薬を与えて、両者の症状にどのような違いが出るかを調べたのです。モルヒネには痛み止めの効果があり、偽薬にはなんの効果もないのです。にもかかわらず、モルヒネを与えられた患者の52%、代用薬を与えられた患者の40%に痛みが消えたとの結果になったのです。

 

まったくの「偽薬」でも、10人のうち、4人には効果があったのです。新しい薬の効果を調べる臨床試験のときなどに、同じ形状で見分けのつかない偽薬も準備して、本物と偽物とで効果に違いがでるかをしらべる段階があります。そのとき様々な病気において偽薬であっても3割程度の人に効果が出てしまうのです。

 

したがって、新薬として認められるのは、そのプラセーボ(偽薬)と本物の薬と効果が統計的に差がなければならないです。これは薬に限らず、治療の行為や処置、効能を宣伝する医療&健康器具などでも同じ現象が起こり、音楽も例外ではのです。

 

つまり、本人が信じれば(時として信じているつもりがなくても)まったく効果のない実態のものであっても、何割かの人に効果が実際にあるということなんですね。

 

心理学では、このような効果を「プラセーボ効果(偽薬効果)」と呼んでいます。「プラセーポ」とは、「満足させる」「喜ばせる」というラテン語に由来した言葉です。

 

さて、最近ではサブスクで何千万曲もの曲がスマホで気軽に聴けます。私も懐かしい子ども時代の曲、学生時代にレコードが擦り切れるくらい聞いた大好きだった曲、現在好きな曲、癒し系のヒーリングミュージックなど新幹線の移動中によく聞いて気分転換しています。

 

皆さんもストレス対策で音楽を使って気分転換してはいかがでしょう?