キャリアコンサルタントの試験を受けるとき、教科書に載っていた、ダグラス・ホールの「プロティアン・キャリア」。
「プロティアン」とは、「変幻自在な」という意味です。
従来は、一つの会社に入って、定年まで勤め上げ、順調に昇進し、給与も上がって行くことを良しとする「伝統的キャリア」が標準的な考え方でした。
しかし、働き方も随分変わり、会社が社員を一生面倒見ることを約束するどころか、会社が存続し続けることも難しくなって来た今の世の中では、働くことのどこに価値を見出すかを自分で考えるプロティアン・キャリアが注目され始めています。
ダグラス・ホールが「プロティアン・キャリア」を提唱した1976年には殆ど注目されなかったのですが、今になって注目され始めるとは、ホール教授も先見の明があったのでしょう。
田中研之輔さんの『プロティアン』(日経BP)には、本家のホール教授が触れていなかったことが書かれています。
ホール教授は、世間一般が評価する成功ではなく、本人が感じる満足感こそが大事だと考えていましたが、ではそれによってお金をどう稼ぐか、どう生活して行くかを書いていなかったのです。
田中さんは、「プロティアン・キャリアを形成することと、お金を稼ぐことは矛盾しない」と言っています。
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット両教授の『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)を引用しつつ、「無形資産」、「キャリア資本」等のキーワードを用いて、プロティアン・キャリアを形成しながら、生活に必要なお金を得るにはどうすれば良いかを、一言一言噛みしめるように書いて下さっています。
田中さんは、「プロティアン・キャリア」とは、働くこととそれ以外を区別せず、全てその人の生き方であると言っておられますが、これには私も大いに賛成します。
仕事もそれ以外も、自分の価値感に従って行うのが良く、それはどのように生きるかに深く関わっているのです。
日々の生活に不満を持ったら、何故不満なのか、どうしたら不満でなくなるのか、丁寧に自分の言葉を聴くことが第一歩です。
内なる神プロテウスと対話しながら、人生100年のキャリアを考えて行くことを楽しみたいと思います。