2024/02/19 | ケイジのB

ケイジのB

50歳を過ぎて、役者目指してただいま奮闘中です。

 『インヘリタンス-継承-』観てきました。前編、後編両方です。 全部で6時間半。長いです。でも観ていて長さは感じません。それほど、素晴らしい作品であり、演出でした。
 僕はたまたま見る機会があって、拝見したのですが、こういう題材のお芝居が、東京芸術劇場中ホールを満席にすること自体、僕らの歳の人にとってはあまり考えられず、しかもお客様の6割から7割が女性と言うことにびっくりしました。僕自身が古い人間なのかもしれませんが、確実に時代は前に進み、代わっているんだなぁ、と実感しました。
 「ルーツ」というテレビドラマが流行り、黒人差別がまだ残っていた時代から、オバマ大統領が誕生し、こうして性別の差別もなくなろうとしている昨今、こういう芝居や映画やドラマも、恋愛としてラブストーリーは残るにしても、性別に関する(LGBTQを問題とした)ものは、無くなって行くのかも知れないと思いました。客席に座っていて、ああ、時代はものすごい勢いで動いているんだなぁ、と実感しました。
 あと10年後、どんな芝居が見られるのか、楽しみです。
それにしても、このお芝居の、キャストやスタッフのプロフェッショナルさに、ただただ感動しました。
『概要』
 オリヴィエ賞4部門、トニー賞4部門受賞!ブロードウェイとウエストエンドを感動に包んだ話題作。前後篇6時間半でつづる愛の物語、日本初演!
気鋭の演出家・熊林弘高が挑む傑作巨編。現代NYを舞台に展開するNYのゲイコミュニティの人々が差別や偏見を乗り越えて獲得してきたもの、世代を超えて語り継がれる、愛と自由を求める人々の物語が、コロナと戦争の時代に生きる我々の心にしみわたる。 感動のドラマを、個性豊かなキャストで描く。
 東京芸術劇場では気鋭の演出家に新たな活躍の場を提供しており、演出家・熊林弘高とは、2010年『おそるべき親たち』のシアターウエスト公演以来、充実した共同作業を積み上げてきた。
 熊林はシェイクスピアやチェーホフの古典作品を斬新な現代劇として蘇らせたプレイハウス公演、日本の現代劇やアングラ戯曲をスタイリッシュに演出した小劇場公演などを手掛け話題になった。唯一無二の演出家として錚々たる名優たちから一目置かれる熊林は寡作の人としても知られる。自身が納得した作品を1~2年に1本選びぬく熊林が「これだけは」と自ら上演を切望した作品、それが『インヘリタンス-継承-』だ。
本作は、2015~18年のニューヨークを舞台に、1980年代のエイズ流行初期を知る60代と、若い30代・20代の3世代のゲイ・コミュニティの人々の愛情、人生、尊厳やHIVをめぐる闘いを描いた作品。作者のマシュー・ロペスは本作でラテン系の作家として初めてトニー賞ベストプレイ賞を受賞し、この春ノン・バイナリー(自分を男性・女性という性別にあてはめない)俳優がトニー賞を受賞して注目を浴びた『お熱いのがお好き』ミュージカル版の脚本も手掛ける今注目の作家。病気やマイノリティに対する差別や偏見を乗り越えて力強く生きる人々を描く本作は、上演権獲得を巡りコンセプト・プレゼンとなったが、熊林が勝ち抜き、作者ロペスより日本初演の演出を託された。前後篇6時間半にわたる超大作。熊林はそこに、いま語られなくてはならない物語を見出す。
キャスティングにこだわる熊林の指名を受けてたったのは、信頼篤き実力派の福士誠治、今後が期待される感性豊かな田中俊介、正反対の二役を演じる新原泰佑、そして柾木玲弥はじめフレッシュな若手俳優陣。ベテラン勢としては円熟味を増すベテラン山路和弘、篠井英介などが顔を揃える。さらに熊林作品に欠かせない名女優 麻実れいが後篇のみ、クライマックスで登場するのも見どころだ。
 《ストーリー》
[前篇]
 エリック(福士誠治)と劇作家のトビー(田中俊介)、初老の不動産王ヘンリー(山路和弘)とそのパートナーのウォルター(篠井英介)の2組のカップルを中心に物語は展開する。ウォルターは「田舎の家をエリックに託す」と遺言して病死する。トビーの自伝的小説がヒットしてブロードウェイで上演されることになるが、その主役に抜擢された美しい青年アダム(新原泰佑)の出現により、エリックとトビーの仲は破たんする。しかしトビーはアダムにふられ、彼にそっくりのレオ(新原泰佑 二役)を恋人にする。一方、リベラルと保守の両極のようなエリックとヘンリーが、ふとしたことから心通わせる。エリックは、ウォルターの遺言の「田舎の家」が、エイズで死期の近い男たちの看取りの家となっていることを知る。
[後篇]
 エリックとヘンリーが結婚することになり、ジャスパー(柾木玲弥)ら古い友人たちとの間に溝ができる。結婚式に、トビーがレオを伴って現れる。レオを見て顔色を変えるヘンリー。トビーは式をぶち壊して失踪する。トビーに捨てられHIVに感染し行き場をなくしていたレオをアダムとエリックが救う。レオを「田舎の家」に連れて行くと、そこには男たちに寄り添い続けたマーガレット(麻実れい)がいて、この家で起ったことを語り始める…。ウォルターの遺志を継ぐ決心をするエリック。レオは彼らの物語を書き残していく。