ダービーの最重要ステップレースは言うまでもなく皐月賞。皐月賞とダービーとの関連性は年によって異なるが、その年の皐月賞上位馬がダービーでも買えるのか!?それとも買えないのか!?は、ダービーの予想の第一歩である。その判定方法はいろいろあるが、自分が注目しているポイントは2点ある!!1つ目のポイントは、皐月賞当日に行われる古馬2勝級の芝2000m(鹿野山特別、或いは牝馬限定の野島崎特別)との時計比較である。今年、ジャスティンミラノがレコード勝ちした皐月賞の勝ち時計は1.57.1(57.5=59.6)!ハイレベルだった2022年の皐月賞(①着ジオグリフ、②着イクイノックス、③着ドゥドュース)の1.59.7(60.2=59.5)よりも、なんと、2.6秒も速かった。
しかしながら、時計を闇雲に信じてはいけない。馬場差を考慮すると、実は今年の皐月賞の勝ち時計は、それほど抜けて素晴らしい時計というワケではないのだ。事実、皐月賞当日に行われた古馬牝馬2勝級の野島崎特別の勝ち時計は1.58.2(60.1=58.1)であり、皐月賞との時計差は1.1秒に止まる。しかも、皐月賞は速い時計の出やすい前傾ラップ(落差ー2.1秒)であったのに対し、野島崎特別は時計のでにくい後傾ラップ(落差+2.0秒)だったということを考えると、両者の時計差は、実質的には1.1秒よりも小さいと考えるべきだろう。今年の皐月賞の勝ち時計は、実は、それほど価値があるわけではない!という事実を、先ずおさえておこう。
それでは、次に今年の皐月賞の勝ち時計どれだけの価値があるか!?、それを検証してみよう。以下は2024年以前に、中山で行われた過去11回の皐月賞の勝ち時計が、同日に行われた古馬2勝級より何秒速かったかを示したものである。
2023 ソールオリエンス:+0.0秒(重)
勝ち時計:2.00.6(58.5=62.1)
2022 ジオクリフ:+1.3秒
勝ち時計:1.59.7(60.2=59.5)
2021 エフフォーリア:+1.7秒
勝ち時計:1.59.7(60.2=59.5)
2020 コントレイル:+2.3秒
勝ち時計:2.00.7(59.8=60.9)
2019 サートゥルナーリア:+1.3秒
勝ち時計:1.58.1(59.1=59.0)
2018 エポカドーロ:+0.9秒
勝ち時計:2.00.8(59.2=61.6)
2017 アルアイン:+0.9秒
勝ち時計:1.57.8(59.0=58.8)
2016 ディーマジェスティー:+2.2秒
1.57.9(58.4=59.5)
2015 ドゥラメンテ:+1.9秒
勝ち時計:1.58.2(59.2=59.0)
2014 イスラボニータ:=+0.7秒
勝ち時計:1.59.6(60.2=59.4)
2013 ロゴタイプ:+1.7秒
勝ち時計:1.58.0(58.0=60.0)
古馬2勝級のメンバーレベルに、年によって差異があるのは当然である。しかし、皐月賞とダービーの連関性という観点からみた場合、皐月賞の勝ち時計が同日の古馬2勝級よりも2.0秒以上速い場合、皐月賞の結果とダービーの結果の関連性は高いことが知られている。直近の11年で言うと、該当するケースは2回のみ。先ずはこの2回の皐月賞①~③着馬のダービーでの成績を確認しておこう。
2020年 :+2.3秒
①着 コントレイル(ダービー①着 1人)
②着 サリオス(ダービー②着 2人)
③着 ガロアクリーク(ダービー⑥着 7人)
2016年 :+2.2秒
①着 ディーマジェスティ(ダービー③着 1人)
②着 マカヒキ(ダービー①着 3人)
③着 サトノダイヤモンド(ダービー②着 2人)
皐月賞の勝ち時計が古馬2勝級より2.0秒以上速かった2回の皐月賞の①~③着馬全6頭のダービーでの着順は{2・2・1・1}であった。この結果を見て「この結果で、皐月賞の勝ち時計が古馬2勝級より2.0秒以上速かった年は、皐月賞の結果とダービーの結果の関連性が強いと言えるのか?」と思う向きがいるかもしれないが、結論から言うと、これは「強いと言える!」のだ。2020年のように皐月賞①②着馬がダービーでも①②着したということは、皐月賞のレベルが高かったということに他ならない。特に注目したいのは2016年だ。皐月賞①~③着馬が、3頭とも揃ってダービーで好走するというのは非常に珍しいケースだからだ。
ここで一つ問題!2000年以降、過去24回のダービーにおいて、ダービー①~③着馬がすべて皐月賞組だった年というのは、全部で何回あったかご存じだろうか!?「ダービーでは、皐月賞直行組が強い!」と言われていることは、皆さんご存じのとおり。これは事実である。しながら、上記問題の答えは、上述の2020年、2016年を含めて、実はたった「4回」しかないのだ。ちょっと意外に感じた方が多いのではないだろうか。しかも、皐月賞①~③着馬がダービーでも、そのママ①~③着したというのは、前述の2016年のたった1回きりなのだ!2016年の皐月賞というのは、それくらいレベルが高くて、皐月賞上位組がダービーでも上位を独占したというわけ。皐月賞の勝ち時計が、古馬2勝クラスのそれを2.0秒以上、上回ることの価値というものがお分かりいただけると思う。
(参考)ダービー①~③着馬が皐月賞組であった残りの2回
2010年ダービー
①着 エイシンフラッシュ(皐月賞③着)
②着 ローズキングダム(皐月賞④着)
③着 ヴィクトワールピサ(皐月賞①着)
※皐月賞②着ヒルノダムールはダービー⑨着
2022年ダービー
①着 ドウドュース(皐月賞③着)
②着 イクイノックス(皐月賞②着)
③着 アスクビクターモア(皐月賞⑤着)
※皐月賞①着ジオグリフはダービー⑦着
もう一度書いておくと、今年の皐月賞と野島崎特別は・・・
皐月賞:1.57.1(57.5=59.6:ー2.1秒)
野島崎:1.58.2(60.1=58.1:+2.0秒)
ジャスティンミラノの勝ちっぷりは素晴らしく見えたが、実は、勝ち時計は古馬2勝級よりも1.1秒速いにすぎず、「ダービー好走確定ライン」である+2.0秒には遠く及ばない数字であった。前傾の過去11年の結果をみると、皐月賞の勝ち時計が古馬2勝級より+1.0~1.9秒以上速かった年は全部で5回(2022年、2021年、2019年、2015年、2013年)あったが、当該5回の皐月賞の①~③着馬全15頭のダービーでの着順は{2・4・2・7/15頭:連対率40%}。前記+2.0以上速かった場合の{2・2・1・1/6頭:連対率66.7%}と比べると、大きく見劣ることが分かるだろう。皐月賞③着だったジャンタルマンタルがNHKマイルCを快勝したことによって、「今年は皐月賞組のレベルが高い。」という認識が定着しているように見える。しかも、その皐月賞はレコード決着だった。しかしながら、野島崎特別の勝ち時計との比較が示す事実は、「レコード勝ち」=今年の皐月賞①~③着馬は強い!と、単純に考えるのは危険だということである。