文書名 納税義務と海外資産について
文書番号 0079
作成日 2013/09/11
ジャンル 相続税法
Ⅰ 事例
① 甲氏は資産家である。現在は東京にある自己所有の自宅で居住している。甲氏は同居している配偶者と子に対する相続税の負担を減らしいたと考えて、海外の資産を積極的に購入している。その中にはハワイの別荘、ヨーロッパにある賃貸用マンション、米国の金融債などがある。
甲氏が死亡して相続がはっせいした場合は、海外資産について課税されるか。
② 父が資産家である乙は多少なりとも相続税に関する知識がある。父は相続税を軽くしようとして国外資産に積極的に投資してきた。父の主治医から父の状態が良くないことを告げられ、相続税を免れるために乙は某国に出国し、日本の国籍を捨てて、その某国の国籍を得た。なお父は国内で治療を継続している。
この場合、乙は相続税を免れることができるか。
Ⅱ 取扱い
① 甲氏及びその相続人である配偶者及び子は国内に住所を有している。この場合は、国内財産のみならず国外の財産に対しても日本の相続税の課税の対象となる。
② 乙は相続税を免れることができない。被相続人である父が国内に住所を有している場合は、相続人が国外に移住し、日本の国籍を捨てようとも、国内と国外の全ての資産に対して日本の相続税が課税されることになる。
乙氏は、相続税について多少の知識があるとのことだが、平成25年改正で、被相続人が国内に住所を有している場合は、海外に移住し国籍を取得しても、国内外の全財産に課税されることとなった。
Ⅲ 根拠
[1] 納税義務者
次に掲げる者は、相続税を収める義務がある。
① 居住無制限納税義務者
相続又は遺贈により財産を取得した個人で、その財産を取得した時に国内に住所を有するもの。
② 非居住無制限納税義務者
相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であって、その財産を取得した時に法施行地に住所を有しないもの。
(イ)日本国籍を有する個人(その個人又は被相続人が相続開始前5年位内のいずれかの時において法施行地に住所を有していたことがある場合に限る)
(ロ)日本国籍を有しない個人(被相続人がその相続開始時において法施行地に住所を有していた場合に限る)
③ 制限納税義務者
相続又は遺贈により法施行地にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有しないもの(②を除く)
[2] 課税財産の範囲・課税価格
(1) 無制限納税義務者
居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し相続税を課し、その相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とする。
(2) 制限納税義務者
制限納税義務者に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産で法施行にあるものに対し相続税を課し、相続又は遺贈により取得した財産で法施行地にあるものの価額の合計額をもって相続税の課税価格とする。
Ⅳ 所感
法改正により、資産の海外移転で相続税を免れようとするためには、相続人及び被相続人が海外に移住し国籍を変えないと不可能になった。世界には、相続税が無い国や所得税率を異常に低く設定している国もある。こういう国はタックスヘイブンと呼ばれて、世界中から資産家を移住させることを国の基本政策としている。
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