文書名 ストック・オプションの課税関係
文書番号 0045
作成日 2013/08/30
ジャンル 所得税
Ⅰ 事例
① 甲氏は勤務するA社から付与されたストック・オプションの権利(新株予約権)を行使し、本年度にA社の株式を1,000株取得した。
② 甲氏は①により取得したA社株式を証券市場にて売却した。
③ なお権利行使日における新株の価額は5,000円であり、予め付与された新株の発行価額は1,000円である。
また、証券市場でのA株の売却価額は6,000円であった。
④ なお当該ストック・オプションは会社法に規定する一定の決議により、特に有利な発行価額で発行されたものであり、譲渡制限が付されているものである。
この場合のストック・オプションとは、将来会社の株式を有利な価額で買い取ることができる権利のことである。企業の業績とともに自社株の価値が上がれば、ストック・オプションを付与されたものが将来その権利を行使(株式の取得)をして、証券市場で売却することで株式の売却益を得ることができる。
役員や従業員に対するモチベーションをあげる手段として利用されている。
Ⅱ 取扱い
① 権利行使時の価額5,000円と発行価額1,000円との差額4,000円は、経済的利益に該当する。
従って、4,000円×1000株=4,000,000円 について 甲氏は従業員であるので、その経済的利益は給与所得の収入金額となる。
② なおこの新株予約権が一定の要件を満たす特定新株予約権である場合には、権利行使による経済的利益は非課税とされる。
③ A株式の売却は株式分離課税として、その譲渡益に対して課税される。
売却価額が6,000円×1,000株=6,000,000円である。
通常の新株予約権の場合(①の場合)は 6,000,000-(払込価額1,000,000+給与課税4,000,000)=1,000,000が譲渡益になる。
特定新株予約権の場合は、6,000,000-払込価額1,000,000=5,000,000円が譲渡益になる。
④ 有利判定
給与所得は超過累進税率であるので、所得金額が大きいほど税率が高い。それに対して、株式分離課税は比例税率であるので、上場株式の場合7%の税率となる。従って、新株予約権の金額が多くなるほど特定新株予約権の方が有利になる。
Ⅲ 根拠
[1] 収入金額の通則 所得税法36①②
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は別段の定めがあるものを除きその年において収入すべき金額とする。
なお、金銭以外の物、権利、その他経済的利益をもって収入する場合には、その物もしくは権利を取得しまたは経済的利益を享受する時における価額とする。
[2] 給与所得の意義
(1) 意義
給与所得とは給与等に係る所得をいう。なお給与等とは俸給、給料、賃金、採否及び賞与ならびにこれらの性質を有する給与の他、非課税とされるものを除き一定の経済的利益を含むものとする。
[3] 株式の取得に係る経済的利益
会社法に規定する新株予約権の行使による経済的利益は、権利行使日のその株式の価額から払込金額を控除した金額とする。
[4] 特定の新株予約権の行使に係る経済的利益の非課税
(1) 内容
株式会社の決議により新株予約権を与えられる取締役等(その株式会社の大口株主等を除く)がその決議に基づき、その株式会社との間で締結された契約により与えられた次の要件を満たす特定新株予約権を行使することにより株式の取得をした場合には、その株式の取得に係る経済的利益は所得税を課さない。
(イ) その行使はその決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までに行わなければならないこと。
(ロ) 権利行使価額の年間の合計額が1,200万円を超えないこと。
(ハ) 一株あたりの権利行使価額が、契約締結時における一株あたりの価額以上であること。
(ニ) 新株予約権は譲渡をしてはならないこととされていること等
(2) 手続き
(1)の規定は、取締役等が特定新株予約権の行使をする際、一定の事項を誓約し、一定の事項を記載した書面を、その株式会社に提出に限り適用する。
[5] 申告分離課税制度
(1) 内容
居住者が株式等の譲渡をした場合には、その株式等の譲渡に係る事業所得、譲渡所得及び雑所得については他の所得と区分し、株式等に係る課税上と所得の金額について15/100の金額に相当する所得税を課する。
この場合において株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときはその損失の金額は生じなかったものとみなす。
(2) 上場株式等を譲渡した場合の課税の特例
居住者が上場株式等の譲渡をした場合には(1)の税率は7/100とする。
(注) 大口株主等を除く
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