0016 職務発明の対価の取扱い | パピルスから電子文書へ

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文書名 職務発明の対価について
文書番号 0016
作成日 2013/08/20
ジャンル 所得税、消費税


Ⅰ 背景
  最近職務上の発明に対する対価を求める訴訟が増加しています。有名なのは、青色LEDを発明した中村修二氏が当時の勤務先を訴えた事件です。東京地裁は対価として600億円が相当であるという判決を下したのですが、東京高裁で6億円が相当であるという判決でした
  今回は、この職務発明の対価についての所得税法と消費税法の取扱いについて述べます。

Ⅱ 事例と取扱い
①事例
 甲氏は職務発明により特許権を取得した。その権利を会社に譲り渡し1,000万円の報酬を得た。
取扱い
所得税では譲渡所得として課税される。自己の研究により取得した特許権の譲渡は長期譲渡所得となる。
消費税では、その対価を支払った会社は課税仕入れとなる。甲氏の受け取った対価の額が課税売上になるかどうかは、事業として行われたかどうかによる。事業としてとは、「反復、継続、独立」が要件となるが、甲氏は給与所得者であるので、事業者として認めることが難しいのではないかと思う。

②事例
 甲氏は特許権を会社に譲渡することに代えて、その使用料として毎年50万円を受け取ることとなった。
取扱い
  所得税の取扱いは、その50万円は雑所得となる。
  消費税の取扱いは、支払をしている会社の課税仕入れとなるが、甲氏の受け取ることとなる50万円は課税売上に該当しないと思う。所得税で雑所得として事業性がないものとして課税されるのだから、消費税法でも事業性は認められないのではないか。

③事例
 甲氏の発明については特許権などの法的な権利ではなく、職務上の工夫・考案に該当し通常の職務の範囲内である場合。
取扱い
 所得税では工夫考案の対価として給与所得になる。
 消費税では、課税関係はない。

④事例
 甲氏は経理部に属しているが、工場の生産管理についてのアイデアを提案したところ、コストの削減に結びつき、毎月10万円の報奨金を会社から受けている。
取扱い
 所得税では、職務の範囲外で受ける対価の支払なので雑所得になる。
 消費税では、その対価の支払いは会社にとって課税仕入れとなる。甲氏は事業者ではないので課税関係はない。

⑤事例
  上記④の場合で、甲氏はその報奨金として500万円を一時に受けた。
取扱い
 所得税では一時所得となる。
 消費税の取扱いは、上記④と同じ。

Ⅲ 根拠
[1] 譲渡所得
(1) 意義
   譲渡所得とは資産の譲渡による所得をいう。なお特許権の譲渡は資産の譲渡に該当する。
(2) 金額
  譲渡所得の金額はその年中のその所得に係る総収入金額からその所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。

[2] 事業所得の範囲
  事業所得とは事業から生ずる所得をいう。
  (注) 事業とは農業、漁業、製造業、小売業、サービス業その他の事業をいう。

[3] 雑所得の範囲
  雑所得とは、事業所得その他の各種所得に該当しない所得をいう。

[4] 給与所得の範囲
  給与所得とは給与等に係る所得をいう。

[5] 課税仕入れの意義
  事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、借り受け又は役務の提供(所得税法に規定する給与を対価とする役務提供を除く)を受けることをいい、その他の者が事業としてその資産を譲り渡し、借り受け又は役務提供を下とした場合に課税資産の譲渡等(輸出免税取引を除く)に該当することとなるものをいう。

[6] 課税の対象
(1) 国内取引
  事業者が国内で行った資産の譲渡等には消費税を課する。なお、資産の譲渡等とは事業として対価を得て行われる資産の譲渡貸付け、役務提供をいう。
  また事業としてとは、継続、反復、独立を要件とする。