京都府の国宝・重要文化財建造物 (4)田辺・八幡・山城西部編 | 国宝・重要文化財指定の建造物

国宝・重要文化財指定の建造物

全国の国宝・重要文化財に指定された建造物についてのブログです。

このブログについて:

京都府八幡・田辺・山城西部地域で国宝や国の重要文化財に指定された建造物のうち、私がこれまで訪問したものを紹介しています。
個人の備忘録みたいなものですが、実際に訪ねてみたら目当ての文化財が塀や樹木の陰で見えないといったことも時々あるので、ここでは、このあたりも詳しく書いて、閲覧してくれた方の参考になるように考えました。また、文化財の位置は国指定文化財等データベースで確認できますが、間違った情報も結構多いので、ここでは現地で実際に確認した座標を記載しています。
記載内容は訪問日時点のものです。情報が古くなってしまっている可能性もあり、修復工事が始まって見学できないこともあるので、注意してください。

城陽市
久世神社本殿
水度神社本殿
荒見神社本殿
向日市
向日神社本殿
八幡市
伊佐家住宅主屋、長蔵、内蔵、乾蔵、東蔵
石清水八幡宮本社本殿、幣殿及び舞殿、瑞籬、廻廊 (楼門西門間)、廻廊 (楼門東門間)、廻廊 (背面)、楼門、西門、東門、摂社武内社本殿
石清水八幡宮摂社水若宮社本殿、摂社若宮殿社本殿、摂社若宮社本殿、摂社住吉社本殿、西総門、東総門、北総門、摂社狩尾社本殿
石清水八幡宮五輪塔
正法寺本堂、大方丈、唐門
京田辺市
佐牙神社本殿(1)、(2)
白山神社本殿
酬恩庵本堂
酬恩庵方丈及び玄関 (方丈)、方丈及び玄関 (玄関)、庫裏、鐘楼、浴室、東司
法泉寺十三重塔
澤井家住宅
乙訓郡大山崎町
自玉手祭来酒解神社神輿庫
妙喜庵書院及び茶室(待庵)茶室(待庵)、書院
寶積寺三重塔
聴竹居(旧藤井厚二自邸)本屋、閑室、茶室
久世郡久御山町
雙栗神社本殿

 

 

久世廃寺跡に建つ唐草の欄間を持つ社殿

久世神社本殿


くぜじんじゃほんでん
城陽市久世芝ケ原
久世神社本殿34.859708, 135.780144
室町前期
一間社流造、檜皮葺

久世神社は、現在は宅地開発されている木津川東岸の段丘上に鎮座しています。久世廃寺跡に隣接し、日本武尊を祭神としています。創祀された年代は明らかにされていません。本殿は室町時代中期に建築されたと推定されています。
・朱塗りの一間社流造、檜皮葺で、柱上部や租物などを極彩色仕上げた華やかな外観

向拝柱(左)と身舎(右)の装飾

身舎組物の装飾

身舎正面格子戸上部の欄間: 
・中央に菊、左右に二個の桐を等間隔で置き、その間を唐草模様で埋める
・欄間透かし彫りは桃山時代になるまで発達しなかったが、この欄間はその過渡期のもので、平面的ではあるものの、進歩の跡が見られる

・向拝には写実的な蟇股が置かれている

アクセス
JR奈良線城陽駅北600m、近鉄京都線久津川駅南東1kmです。久津川駅からのルートは段丘を一段上るので、地図アプリでは遠回りのルートが表示されることがあります。神社西の階段のある踏切を目指すと最短ルートになります。
見学ガイド
本殿は常時自由に参拝することができます。瑞垣越しの見学になります。

感想メモ
非常に派手な社殿で、そればかりに目が行ってしまい、この社殿の特徴である欄間の透かし彫りについてはあまり頭に残っていません。ピントがずれていますが、欄間が写り込んだ写真があったので掲載しました。
(2021年12月訪問)

参考
京都山城地域振興社公式サイト、総覧日本の建築6-I

 

 

大きな千鳥破風と笹りんどうの蟇股の式内社

水度神社本殿


みとじんじゃほんでん
城陽市寺田宮ノ谷
水度神社本殿34.854797, 135.789577
室町中期
一間社流造、正面千鳥破風付、檜皮葺

水度神社は、城陽の市街地の東、鴻ノ巣山の麓に鎮座する式内社で旧寺田村の産土神です。現在の本殿は室町時代の文安5年(1448年)に建立されたものです。
・一間社流造で、この地域では珍しい大きな千鳥破風が特徴

右側面: 
・手挟の若葉の装飾が木鼻の上部に覆いかぶさるのは珍しい意匠

・向拝中備の蟇股は笹りんどうと左右対称の唐草の意匠

アクセス
JR奈良線城陽駅東1km、近鉄京都線寺田駅東1.6kmです。バス便もあります。
見学ガイド
水度神社は常時自由に参拝することができます。本殿は瑞垣越しに見ることができます。瑞垣の菱格子の隙間が比較的大きく、厚さも薄いので、コンデジであれば格子の隙間から撮影することもできます。

感想メモ
JRの線路のまだ手前から参道がずっと続いていて、社格の高さを感じました。神社の背後の鴻ノ巣山は地元の方の朝の散歩コースになっているようで、朝早くから多くの方がお参りされていました。
本殿は千鳥破風が大きな社殿だと言うことで、ちょっと落ち着かない感じなのかと思っていましたが、実際にはそんなことはなく、均整が取れているように感じました。
向拝の蟇股と同様の意匠の欄間が身舎正面にあって、この社殿の特徴の一つとのことですが、残念ながら神前幕で隠れていて見ることができませんでした。
(2022年11月訪問)

参考
現地解説板、総覧日本の建築6-I

 

 

若葉模様の珍しい意匠の木鼻を持つ社殿

荒見神社本殿


あらみじんじゃほんでん
城陽市富野荒見田
荒見神社本殿34.840949, 135.784062
桃山
三間社流造、檜皮葺

荒見神社は当初、五社ケ谷の山中にありましたが、室町時代に城陽の市街地南方の現在地に遷り、産土神として崇敬を集めてきました。本殿は慶長9年(1604年)に造営されたものす。
・三間社流造で身舎正面に引き違え格子戸を置く

・身舎木鼻に珍しい若葉の彫刻

・身舎は出組で、海老虹梁で向拝をつなぐ
・海老虹梁端部にも装飾が施されている

アクセス
JR奈良線長池駅から0.8km、近鉄京都線富野荘駅からは1.2kmです。
見学ガイド
本殿は瑞垣越しに常時自由に見学することができます。本殿は西面しています。

感想メモ
小細工が多い建築で、面白かったです。新しい試みを遠慮がちにやっているような感じでした。
(2021年12月訪問)

参考
京都山城地域振興社公式サイト、総覧日本の建築6-I

 

 

寺院建築に見られる連子窓を持つ社殿

向日神社本殿


むこうじんじゃほんでん
向日市向日町北山
向日神社本殿34.944139, 135.697050
室町中期
三間社流造、檜皮葺

向日神社は向日市の市街地西部に広大な境内を構える式内社で、本殿は応永29年(1422年)に上棟されました。三間社流造、檜皮葺で、両脇間に寺院建築に見られる連子窓が付くことが特徴です。
アクセス
阪急京都線西向日駅下車、北西1.1㎞です。
見学ガイド
向日神社は常時自由に参拝することができます。本殿は覆屋の中にあり、全く見ることができません。

感想メモ
丘の上までまっすぐ伸びた石畳の長い参道が 社格の高さをしめしています。綺麗に整えられた境内ですが、本殿は隙間のない立派な覆屋の中にあって、全く見ることができませんでした。禅寺風の珍しい社殿なのに、残念です。
(2023年5月訪問)

参考
向日市公式サイト、現地解説板

 

 

天領を管理してきた旧家

伊佐家住宅


いさけじゅうたく
八幡市上津屋浜垣内
伊佐家住宅主屋34.864871, 135.746638
江戸中期
桁行23.8m、梁間11.3m、一部二階、入母屋造、茅及び桟瓦葺
長蔵34.864728, 135.746572
江戸末期
土蔵造、桁行15.8m、梁間4.0m、寄棟造、桟瓦葺
内蔵34.865006, 135.746631
江戸中期
土蔵造、桁行6.0m、梁間4.0m、二階建、切妻造、本瓦葺、
南面庇附属、銅板葺、西面廊下附属、桟瓦葺
乾蔵34.865093, 135.746461
江戸末期
土蔵造、桁行5.0m、梁間4.0m、二階建、切妻造、南面庇附属、桟瓦葺
東蔵34.865098, 135.746642
江戸中期
土蔵造、桁行7.0m、梁間4.0m、二階建、切妻造、南面庇附属、桟瓦葺

伊佐家住宅は宇治川の左岸、上津屋の流れ橋の近くに位置します。伊佐家は江戸時代を通じ天領の管理を担うとともに村の長を務めてきました。
主屋は享保19年(1734)に再建されたもので、当時伏見桃山で産出された「桃山」と呼ばれる土で塗られた赤い壁が特徴です。蔵は表に長蔵、裏に内蔵、東蔵、乾蔵などが石垣の上に並んでいます。
主屋南面: 
・左側高塀の手前が賓客を迎えるための式台

主屋の式台: 
・近年は桃山の入手ができないため、このあたりの壁の赤色は、古い壁の桃山をはぎ取って塗布してあるとのこと
・塀の赤色は桃山に似せた塗装

・茅葺きの厚さが大きいのがこの住宅の特徴
・かつては左の塀中門の屋根近くまで茅葺の厚みがあったが、近年は乾燥した茅の入手が難しく、これ以上厚くすると茅の重みで柱が持たないとのこと

高塀の奥、主屋西端の座敷部: 
・座敷内部の壁に用いられている赤土はオリジナルの「桃山」

主屋西側面: 
・茅葺の建物の裏側に瓦葺の建物が増築され、複雑な構造の建物になっている

主屋の棟の瓦葺

長蔵南面(右奥が主屋)

長蔵西側面

・左から、乾蔵、二階蔵、木小屋、棟の向きが変わって東蔵、右端見切れているのが内蔵
・これらは主屋から渡り廊下で結ばれている

乾蔵

・右が内蔵で左が東蔵

アクセス
JR学研都市線京田辺駅・近鉄京都線新田辺駅と京阪線石清水八幡宮駅を結ぶバスで浜上津屋下車すぐです。このほか、近鉄京都線大久保駅と京阪淀駅を結ぶバスで佐山バス停で下車して流れ橋経由でアクセスするルートもあります。
見学ガイド
伊佐家住宅は通常非公開です。公道から主屋の一部と長蔵は見ることができます。

感想メモ
特別公開の日に行きました。一日2回公開で、各回先着15名限定ということなので一時間前に着きましたが、まだ誰もいませんでした。時間になると10名ほどか集まってスタート。伊佐家の奥様に詳しく説明していただきました。最近はしっかりと乾燥した茅が入手できなくて、昔のような厚さで差茅をしたら茅の重みで柱が持たなくなってしまう話など、古民家の維持の大変さについていろいろと教えていただきました。
主屋を横から見ると増改築の履歴がよく分かって興味深かったです。近くの流れ橋や浜茶の茶畑も面白かったです。
(2022年11月訪問)

参考
八幡市公式サイト、現地説明

 

 

酒造の男神・女神を祀る二殿並立の社殿

佐牙神社本殿


さがじんじゃほんでん
京田辺市宮津佐牙垣内
佐牙神社本殿(1)34.792508, 135.783380
桃山
一間社春日造、檜皮葺
(2)34.792544, 135.783370
桃山
一間社春日造、檜皮葺

佐牙神社は京田辺の市街地南方の集落に鎮座します。社伝では573年に創建されたとされ、酒造神、佐牙弥豆男神(さがみづをのかみ)と佐牙弥豆女神(さがみづめのかみ)を祭神としています。本殿は桃山時代の建築です。
・左右ニ殿からなり、ともに檜皮葺の一間社春日造
・向拝は天明6年(1786)の後補

・身舎の三方にとりつけた6個の蟇股は、輪郭が鎌倉風で、内部の彫刻は左右対称の古風な意匠

アクセス
JR学研都市線三山木駅または近鉄京都線近鉄宮津駅から徒歩10分程度です。両線の西に平行する府道を、三山木からは南に、宮津からは北に進むと、府道沿いに参道入口があります。
文化庁のDBの位置情報は間違っているので、注意が必要です。
見学ガイド
佐牙神社の境内にはいつでも自由に入ることができます。本殿の前面は拝殿で塞がれ、残る三方は隙間のない漆喰塀で囲われていますが、周辺の地盤が高くなっている部分があるので、塀越しに本殿を見ることができます。

感想メモ
本殿は塀に囲まれていて見ることができないかと思いましたが、うまく見える場所があってよかったです。端正な春日造が二殿並立しています。
(2021年1月訪問)

参考
京田辺市観光協会公式サイト、京都府観光連盟公式サイト

 

 

蟇股や木鼻に室町建築の特徴を残す社殿

白山神社本殿


はくさんじんじゃほんでん
京田辺市宮津白山
白山神社本殿34.785120, 135.781354
室町後期
一間社流造、厚板葺

白山神社は田辺の市街地南方の山裾に鎮座します。草創については明らかにされていませんが、本殿は室町後期の永享年間の造営といわれています。
・向拝蟇股や木鼻などにこの時代の特徴が見られる

アクセス
JR学研都市線下狛駅または近鉄京都線狛田駅から北西に徒歩15分程度です。現地には案内表示がないので事前に場所を確認しておく方が良いと思います。
文化庁のDBの位置情報は間違っているので、注意が必要です。
見学ガイド
白山神社本殿は常時自由に見学することができます。本殿には覆屋がかけられていますが、前面が大きく開いているので、見学の大きな支障にはなりません。

感想メモ
文科省のDBの位置情報、この地域はかなりいい加減です。同名の神社がほかにもあるので、探すのに少し苦労しました。覆屋が簡素なもので、社殿をよく見ることができたのはありがたかったです。全体的に荒廃が進んでいるようです。
(2021年1月訪問)

参考
京田辺市観光協会公式サイト

 

 

一休禅師が再興した寺院

酬恩庵


しゅうおんあん
京田辺市薪里ノ内
酬恩庵本堂34.820697, 135.757061
室町後期
桁行三間、梁間三間、一重、入母屋造、背面庇附属、檜皮葺
酬恩庵方丈及び玄関 (方丈)34.821057, 135.757722
江戸前期
桁行18.0m、梁間11.5m、一重、入母屋造、檜皮葺、背面昭堂附属
方丈及び玄関 (玄関)34.820936, 135.757633
江戸前期
桁行折曲り五間、梁間一間、一重、前後唐破風造、桟瓦葺、両端檜皮及び銅板葺
庫裏34.821027, 135.757507
江戸前期
桁行16.0m、梁間16.0m、一重、一部二階、切妻造、妻入、
南面及び北面庇付、こけら葺、西面庇付、こけら及び桟瓦葺、
東面渡廊下附属、檜皮葺
鐘楼34.820619, 135.757551
江戸前期
桁行三間、梁間二間、袴腰付、入母屋造、本瓦葺
浴室34.820742, 135.758045
江戸前期
桁行五間、梁間三間、一重、切妻造、妻入、本瓦葺
東司34.820902, 135.757417
江戸前期
桁行二間、梁間二間、一重、切妻造、桟瓦葺

酬恩庵は田辺の市街地西方の山裾に位置します。元は妙勝寺とよばれており、鎌倉時代、臨済宗の高僧大應国師が開創したものです。その後、荒廃していたものを六代の法孫に当たる一休禅師が康正年中(1455〜6年)堂宇を再興し、師恩にむくいる意味で酬恩庵と命名しました。
本堂は、1429年から1441年の永享年間に六代将軍足利義教の帰依により建立さたもので、本堂以外の重文指定建造物は、江戸時代の慶安3年(1650)に加賀三代目藩主前田利常の寄進により再建されたものです。
本堂: 
・山城・大和地方の禅宗様建築の中で最も古い建造物
・大きな軒反り、詰組、弓欄間、花頭窓など禅宗様の特徴がみられる

・左が庫裏で右が方丈、その手前の唐門と方丈に伸びる廊下部分が玄関

・玄関の渡り廊下から見た方丈

・玄関の唐門と、その欄間の獅子と鳳の彫刻

鐘楼

東司(とうす、便所)

浴室(蒸し風呂)

アクセス
JR学研都市線京田辺駅・近鉄新田辺駅とJR松井山手駅を結ぶバスで一休寺下車、徒歩5分です。京田辺駅からは1.3kmで、徒歩圏内です。京田辺駅を西に進み、府道に出たら右折して北進、水路橋をくぐった少し先に一休寺の案内標識があります。この先、酬恩庵までは一休とんちロードとして整備されています。
見学ガイド
酬恩庵は有料で公開されています。開門時間は9:00~17:00です。

感想メモ
それほど有名なお寺ではありませんが、禅宗様の本堂をはじめ、見ごたえのある建築が多く残されています。
(2020年11月訪問)

参考
酬恩庵公式サイト

 

 

鎌倉時代の治水事業の記念塔

法泉寺十三重塔


ほうせんじじゅうさんじゅうのとう
京田辺市草内南垣内
法泉寺十三重塔34.812146, 135.785737
鎌倉後期
石造十三重塔、弘安元年戊寅十一月廿六日建立の刻銘がある

法泉寺は田辺の中心部の南東の新興住宅地にあります。十三重石塔は、鎌倉時代に奈良西大寺の叡尊 (興正菩薩)の社会事業として水害対策・渡しの整備を行った際の供養紀念として、宇治川の石塔に先立ち建立されたものです。弘安元年(1278)十一月二十六日・勧進僧良印の銘があります。
・高さ約6メートルで、相輪は近年の補作

・基礎と初重軸部は非常に低く、近畿では異例

アクセス
JR学研都市線同志社前駅又は近鉄京都線興戸駅下車、北東に徒歩15分です。丘陵地に開発された住宅地の街路で少しややこしいです。なお、文化庁のDBの位置情報は間違っているので、注意が必要です。
見学ガイド
十三重塔はいつでも自由に見学することができます。

感想メモ
文化庁のDBの位置情報にまた騙されて、3キロ以上離れた一休寺の近くを探し回りました。
(2021年1月訪問)

参考
現地解説板

 

 

天王山の山中にある板倉

自玉手祭来酒解神社神輿庫


たまてよりまつりきたるさかとけじんじゃしんよこ
乙訓郡大山崎町大山崎
自玉手祭来酒解神社神輿庫34.901481, 135.678699
鎌倉後期
桁行三間、梁間二間、校倉、一重、切妻造、本瓦葺

自玉手祭来酒解神社は大阪府境に近い天王山の山中に鎮座します。創建は奈良時代にまで遡るといわれ、延喜式神名帳にも名神大社であることが記されています。
神輿庫: 
・三角断面の部材を積み上げた校倉形式ではなく、厚さ約14cmの厚板を積み上げた板倉形式
・板倉形式の遺構は非常に少なく、これ以外に重文に指定されているものは奈良春日大社の板蔵が唯一だが、それは江戸時代のものでこの神輿庫よりも時代が下る

・軒も厚板を並べたもので、丸桁は板壁で直接受けている

・下部は面取り角柱で、自然石の礎石上に建つ

アクセス
JR東海道本線山崎駅・阪急京都線大山崎下車、北2kmです。高低差200mの山道です。
見学ガイド
自玉手祭来酒解神社は、常時自由に参拝することができます。神輿庫はフェンス越しに見ることができます。

感想メモ
かなり本格的に登りました。祭礼があったようで氏子の皆さんが御神体?を舁いで上っていました。かなりの苦行です。
神輿庫は興味深い構造の板蔵でしたが、周囲に無粋なフェンスが張られていて、雰囲気は今ひとつでした。足元は良くないですが、フェンス際まで進むことができたので、近くから良く見ることができました。
(2023年5月訪問)

参考
現地解説板

 

 

羽柴秀吉が本陣を置いた寺

寶積寺三重塔


ほうしゃくじさんじゅうのとう
乙訓郡大山崎町大山崎
寶積寺三重塔34.895172, 135.679174
桃山
三間三重塔婆、本瓦葺

宝積寺は、天王山の麓、大山崎に位置します。聖武天皇の勅願により行基が開山したと伝わる古刹で、山崎の戦いの際には、羽柴秀吉が本陣を置いた寺としても知られています。三重塔は慶長九年(1604)に建立されたものです。
・桃山時代の建立だが、古風な和様建築

初重: 
・二軒の平行繁垂木、柱上は尾垂木付の三手先、中備は蓑束、軸部は長押で固める

第二重及び第三重: 
・基本的な構成は初重と同じで、古風な組高欄がつく

アクセス
JR東海道本線山崎駅・阪急京都線大山崎下車、北1kmです。天王山の麓にあり、そこそこ上ります。
見学ガイド
寶積寺は常時自由に参拝することができます。三重塔も近くから自由に見ることができます。

感想メモ
Googleに言われるがまま大山崎山荘美術館を通って行こうとしましたが、寶積寺への通り抜けは禁止でした。分岐まで戻って上りなおしました
和様の落ち着いた塔ですが、周囲がお墓と駐車場で、環境はいまいちでした。
(2023年5月訪問)

参考
宝積寺公式サイト

 

 

極彩色の式内社社殿

雙栗神社本殿


さぐりじんじゃほんでん
久世郡久御山町佐山双栗
雙栗神社本殿34.876261, 135.757575
室町後期
三間社流造、向拝一間、檜皮葺

雙栗神社は木津川の右岸、久御山町の郊外の住宅地に鎮座する式内社です。中世以降は石清水八幡宮の分霊を祀ったことから椏本(あてもと)一品八幡宮と呼ばれましたが、明治に入って旧号に復されています。本殿の建立年次については、社伝にいう室町時代の末明応3年(1494)頃であると考えられています。
・本殿の形式は、石清水八幡宮の分霊を祀ることから三間社流造で、屋根は檜皮葺、正面に向拝を付ける
・全体に極彩色が施されている

・向拝には写実的な蟇股を置き、向拝頭貫は近世的な象鼻を持つ

・身舎向かって左の側間には「花と鳥」の蟇股を置く

・身舎向かって右の側間には「紅葉と鹿」の蟇股を置く

・脇障子上部には「栗鼠と葡萄」の欄間を設ける

アクセス
京阪本線淀駅と、近鉄京都線大久保駅、京阪宇治駅を結ぶバスで久御山団地口下車すぐです。
見学ガイド
雙栗神社は常時自由に参拝することができます。本殿は前面に拝所が建ち、瑞垣に囲まれているので視角に制約があります。

感想メモ
規模の大きな三間社です。修理直後とあってかなり派手な極彩色です。近世以前の色彩の乏しい世の中ではこういった配色が神々しかったのかもしれません。彫刻は江戸時代のもののように主張しすぎていないので、全体としての美しさを保っています。
(2024年2月訪問)

参考
久御山町公式サイト