このブログについて:
福岡県福岡地域で国宝や国の重要文化財に指定された建造物のうち、私がこれまで訪問したものを紹介しています。
個人の備忘録みたいなものですが、実際に訪ねてみたら目当ての文化財が塀や樹木の陰で見えないといったことも時々あるので、ここでは、このあたりも詳しく書いて、閲覧してくれた方の参考になるように考えました。また、文化財の位置は国指定文化財等データベースで確認できますが、間違った情報も結構多いので、ここでは現地で実際に確認した座標を記載しています。
記載内容は訪問日時点のものです。情報が古くなってしまっている可能性もあり、修復工事が始まって見学できないこともあるので、注意してください。
福岡市東区 | |
香椎宮本殿 | |
筥崎宮本殿 | |
筥崎宮拝殿 | |
筥崎宮楼門 | |
筥崎宮鳥居 | |
福岡市博多区 | |
住吉神社本殿 | |
福岡市中央区 | |
福岡城南丸多聞櫓 | |
旧福岡県公会堂貴賓館 | |
旧日本生命保険株式会社九州支店 | |
宗像市 | |
宗像神社辺津宮本殿 | |
宗像神社辺津宮拝殿 | |
太宰府市 | |
太宰府天満宮本殿 | |
太宰府天満宮末社志賀社本殿 | |
七重塔 | |
多宝千仏石幢 | |
福津市 | |
豊村酒造旧醸造場施設 | 主屋、本座敷、納戸蔵、麹室、酒庫、釜場、仕込庫及び酛取場、槽倉、試験室、古酒倉(南)、古酒倉(北)、作業場 |
朝倉市 | |
普門院本堂 | |
糸島市 | |
櫻井神社 | 本殿、拝殿、楼門 |
髙祖神社本殿 | |
粕屋郡志免町 | |
旧志免鉱業所竪坑櫓 | |
粕屋郡新宮町 | |
横大路家住宅 | |
朝倉郡東峰村 | |
岩屋神社 | 本殿、境内社熊野神社本殿 |
華麗な香椎造の社殿
かしいのみやほんでん
香椎宮本殿
かしいのみやほんでん
福岡市東区香椎4丁目
香椎宮本殿 | 33.653621, 130.452727 江戸後期 桁行三間、梁間三間、一重、入母屋造、正面千鳥破風付、左右側面各一間車寄附属、切妻造、正面及び左右側面各向拝一間、檜皮葺 |
香椎宮は東区香椎に鎮座します。養老7年(723)の創建と伝えられ、本殿は、享和元年(1801)に福岡藩主黒田長順が再建したものです。
右側面(右から身舎の破風、獅子間の破風、その前面が車寄の葺下し、左端が身舎正面の千鳥破風): ・本殿は三間社で、左右に獅子間と呼ばれる1間が翼状に張り出し、端に車寄せを有するという珍しい平面 ・檜皮葺の屋根も、入母屋造に外陣両翼の切妻造が連結されていて、前面の千鳥破風および1間の向拝、両側面車寄の葺下しとともに複雑な外観 ・特殊な形式であることから、「香椎造」と呼ばれている |
右側面車寄せ |
右側面獅子間の破風 |
左側面 |
現地の案内板 |
アクセス JR香椎線香椎神宮駅から北に徒歩5分です。市道を超えて歩き出すとすぐに神社の駐車場が見えてきます。西鉄天神駅からのバス便もあります。文化庁DBの位置情報は誤って西鉄香椎宮前駅付近の神社を指しているので、注意が必要です。 |
見学ガイド 香椎宮は常時自由に参拝することができます。本殿は瑞垣越しの見学になります。 |
感想メモ 本殿の正面は拝殿の陰になっていて、また植栽も多いので香椎造の全体の姿を見ることはできませんでした。大変珍しい造りなので、特別拝観できる機会を探しています。 (2020年8月訪問) |
参考 福岡市の文化財(福岡市公式サイト) |
敵国降伏の宸筆を伝える
はこざきぐう
筥崎宮
はこざきぐう
福岡市東区箱崎1丁目
筥崎宮本殿 | 33.614577, 130.423489 室町後期 九間社流造、檜皮葺 | |
筥崎宮拝殿 | 33.614622, 130.423349 室町後期 桁行四間、梁間一間、一重、切妻造、檜皮葺 | |
筥崎宮楼門 | 33.614669, 130.423217 桃山 三間一戸楼門、入母屋造、檜皮葺 | |
筥崎宮鳥居 | 33.615006, 130.422300 桃山 石造明神鳥居 |
筥崎宮は博多湾に面した箱崎に鎮座する筑前一之宮で、筥崎八幡宮とも呼ばれています。主祭神は筑紫国で生まれた応神天皇で、古録によれば、延喜21年(921)、醍醐天皇が神勅により敵国降伏の宸筆を下賜され、この地に社殿を建立したとされています。鎌倉中期の元寇の際、神風が吹き困難に打ち勝ったことから、厄除・勝運の神としても知られています。
本殿(写真右)と拝殿(写真左)(下段写真は楼門開扉時撮影) |
本殿(楼門開扉時撮影): ・大内義隆が天文15年(1546)に建立したもの ・九間社流造で、身舎三間ごとに一間の向拝が連続して付き、向拝各間の中央には、それぞれ登勾欄付木階が設けられている ・左右側面一間に縋破風造の車寄があり、四方廻縁となっている ・外部および外陣は丹塗で、内陣は素木造 |
拝殿(写真右)と楼門内面(写真左)(楼門開扉時撮影) |
拝殿(楼門開扉時撮影): ・本殿と同時期に大内義隆が建立したもの ・四方吹き放ちの妻入切妻造で、本殿の正面中央部にT字形に接する |
拝殿の正面の妻(楼門開扉時撮影) |
・拝殿は二軒の繁垂木で、柱は角柱、柱上は舟肘木(楼門開扉時撮影) |
楼門: ・名島城主小早川隆景が文禄3年(1594)に建立したもので、三間一戸、檜皮葺 ・楼上に揚げられた「敵国降伏」の額額から、「伏敵門」とも呼ばれている ・二軒の繁垂木で、柱は円柱、柱上の組物は三手先 |
楼門の「敵国降伏」の扁額: ・文永の役(1274)後、社殿再建に尽くした亀山上皇の宸筆と伝えられている(現在の扁額は近年、復原作成されたもの) |
鳥居: ・石造の明神鳥居で、柱の刻銘から慶長14年(1609)福岡藩主黒田長政の寄進によるものであることが分かる ・松浦地方から佐賀平野、筑前地方に分布する肥前鳥居の代表例 ・筑前鳥居の特徴は、上部の笠木と島木にあたる部分が形式化してえぐり出しとして表現されていること、その部分も貫も柱もすべて3つの石材でできていること、笠木、島木の両端が庖丁反りになっていることの3点 |
アクセス 地下鉄箱崎宮前下車すぐです。 |
見学ガイド 本殿と拝殿は背の高い窓のない廻廊で囲われており、回廊内には通常立ち入ることができません。本殿と拝殿の一部を見ることができるのは、楼門の左右に設けられた拝所のみです。楼門と鳥居はいつでも自由に見学できます。鳥居のうち重文に指定されているのは、道路をわたり神社の敷地に入ってすぐの場所にある一の鳥居です。地下鉄駅を出たところの鳥居ではありません。重文建造物は北西向きに建てられているので、午前中は逆光になります。 |
感想メモ 本殿は回廊でしっかりとブロックされていて、少し離れた左右の拝所からしか見ることができませんでした。中央の拝所は写真撮影禁止でした。 (2020年8月訪問) 元旦の年明けすぐと3日の玉せせりの日に訪問しました。大晦日は楼門の開門の45分ほど前に行きましたが、行列はほとんどできていなくて、年明けとともに楼門内に入ることができました。普段近くで拝観することができない本殿や拝殿をすぐ近くで見ることができてよかったです。楼門の軒廻りには防護ネットが張られているので普段は細部をよく見ることができませんが、この日はライトアップされていたので、よく見ることができました。参拝を終えて境内を出たころには行列は地下鉄駅のまだ先まで伸びていました。少しの差で人出が全く違います。 (2023年1月訪問) |
参考 福岡市の文化財(福岡市公式サイト)、福岡県の文化財(福岡県公式サイト)、筥崎宮公式サイト |
古式を伝える社殿
すみよしじんじゃほんでん
住吉神社本殿
すみよしじんじゃほんでん
福岡市博多区住吉3丁目
住吉神社本殿 | 33.585927, 130.413831 桃山 住吉造、檜皮葺 |
住吉神社は博多の旧市街の南に鎮座し、大阪の住吉大社よりも早い時代に創建されたとも言われています。現在の社殿は、黒田長政が元和9年(1623)に再建したものです。
・本殿は、桁行4間、梁間2間、桧皮葺きで、仏教渡来前のわが国独自の古代建築の形式を伝えるもの ・廻り縁はなく、太い柱と垂木を用いた直線形の屋根 |
アクセス JR鹿児島本線博多駅博多口から南西に徒歩10分です。バスの便もあります。 |
見学ガイド 本殿の一部は北側面から瑞垣越しに見ることができます。拝殿前の写真撮影は禁止されています。 |
感想メモ 本殿の正面は拝殿で塞がれていて、南側面、背面は立入禁止、北側面は見ることができますが、瑞垣に近づくことができないので、細部はよく見ることができません。大阪の住吉大社は国宝でも大らかですが、こちらの住吉神社はなかなか厳しいです。 (2020年8月、2023年1月訪問) |
参考 福岡県の文化財(福岡県公式サイト) |
黒田氏居城の遺構
ふくおかじょうみなみまるたもんやぐら
福岡城南丸多聞櫓
ふくおかじょうみなみまるたもんやぐら
福岡市中央区城内
福岡城南丸多聞櫓 | 33.583383, 130.381970 江戸末期 一重櫓、南端二重二階隅櫓、本瓦葺 |
福岡城は福岡市中央区のかつての海岸線の近くに位置します。黒田長政が慶長12年(1607)築城した城で、舞鶴城とも呼ばれています。往事は、城内に櫓47棟を有した壮大なものでしたが、現在、当時の位置に遺構が残っているのは大手門(渦見門)と多聞櫓だけです。多門櫓は武具櫓とも呼ばれ、南丸西南隅の石垣上に位置します。防御のための櫓で、平素は倉庫等に利用していたものと考えられています。
・多門櫓は、南西角にある二重二階建切妻造の隅櫓(写真左端)と桁行30間の西平櫓(写真中央)から成る(西平櫓の北側の隅櫓は昭和の再建で重文指定外) |
西平櫓西面: ・高い石垣上に建ち、石落が設けられている |
隅櫓東面 |
隅櫓南面 |
・一般的に平櫓の内部は突き抜けの空間である事例が多いが、この櫓では16の小部屋に土壁で区画されている |
西平櫓の架構 |
・嘉永6年(1853)に西平櫓の南寄り28間が建て替えられたとの棟札が残る |
アクセス 地下鉄大濠公園駅下車、南1kmです。平和台陸上競技場の南、舞鶴公園の南端にあります。 |
見学ガイド 常時、自由に見学できます。内部は通常非公開ですが、イベント時には公開されることもあるようです。南北方向に細長い建物で、西面は石垣の下から見学することになります。東面は同一平面の園地から見学することができます。 |
感想メモ 多門櫓は、都会のエアーポケットのような、人の気配の非常に少ない場所にあり、ちょっと緊張しました。 (2020年8月訪問) 多聞櫓の内部公開の日に再訪しました。西日本新聞が「無限回廊」と表現していましたが、櫓内部は多くの小さな部屋に区切られており、それを廊下がまっすぐ貫く様は、まさに無限回廊でした。 (2020年8月訪問) |
参考 福岡市の文化財(福岡市公式サイト)、福岡県の文化財(福岡県公式サイト) |
石造に見せかけた木造洋風建築
ふくおかんけんこうかいどうきひんかん
旧福岡県公会堂貴賓館
ふくおかんけんこうかいどうきひんかん
福岡市中央区西中洲
旧福岡県公会堂貴賓館 | 33.591618, 130.404437 明治 木造、建築面積396.3m2、二階建、玄関ポーチ付、スレート及び鉄板葺、一部桟瓦葺 |
旧福岡県公会堂は福岡の中心部、天神に位置します。第13回九州沖縄八県連合共進会の開催に際し、来賓接待所として明治43年に現在地に建設されました。共進会終了後は県公会堂や県教育庁舎などとして使用されてきました。
・木造2階建の洋風建築で、北側正面中央に石柱による玄関ポーチを突出させ、北東隅に八角塔を張り出す ・外壁は1階窓台から下の腰壁は白い化粧タイルを貼る ・屋根は中央に陸屋根を設けた寄棟 |
・2階窓額縁や軒蛇腹をモルタルで造出するなど、外観を石造に擬している |
アクセス 西鉄・地下鉄天神駅、地下鉄中洲川端駅下車すぐです。天神中央公園内にあります。 |
見学ガイド 外観はいつでも自由に見学できます。内部は有料公開されています。正面玄関は北西面を向いているので昼過ぎまでは逆光になります。 |
感想メモ 福岡の中心部にあるので、何度も訪問したことがありましたが、いつの間にか、建物の西にデッキが設けられていて、少し高い視角からも見学できるようになっていました。 (2020年8月訪問、2021年4月再訪) |
参考 福岡市の文化財(福岡市公式サイト) |
辰野金吾らが設計した煉瓦建築
きゅうにほんせいめいほけんかぶしきがいしゃきゅうしゅうしてん
旧日本生命保険株式会社九州支店
きゅうにほんせいめいほけんかぶしきがいしゃきゅうしゅうしてん
福岡市中央区天神1丁目
旧日本生命保険株式会社九州支店 | 33.593143, 130.401899 明治 煉瓦造、建築面積281.8m2、二階建、地下一階、中央部塔屋付、銅板葺、ドライエリヤ煉瓦塀附属 |
旧日本生命保険株式会社九州支店は福岡の中心部、天神に位置します。東京駅などの設計で知られる辰野金吾らの設計によるもので、明治42年(1909)に竣工しています。
正面北東面: ・尖塔やドームを有するなど小規模ながら変化に富む建築 ・赤煉瓦と白の石材の組み合わせは、19世紀末に英国で流行したスタイル |
南東面 |
2階通路と塔屋に至るらせん階段 |
アクセス 西鉄・地下鉄天神駅、地下鉄中洲川端駅から徒歩すぐです。 |
見学ガイド 公道に面しているので、いつでも自由に見ることができます。内部も無料で公開されています。建物正面のドームは北東面にあり、また隣接のビルの陰になるので、順光のタイミングはほとんどありません。夏でも朝9時くらいからビルの影がかかるようになります。夏以外はほとんど光が射さないと思います。 |
感想メモ 正面に光が当たるタイミングを狙って何度か訪問しましたが、なかなか良い機会に恵まれません。 (2020年8月訪問、2021年10月再訪) |
参考 福岡市の文化財(福岡市公式サイト) |
日本最古の神社の一つ
むなかたじんじゃへつみや
宗像神社辺津宮
むなかたじんじゃへつみや
宗像市田島
宗像神社辺津宮本殿 | 33.831071, 130.514327 桃山 五間社流造、こけら葺 | |
宗像神社辺津宮拝殿 | 33.831181, 130.514218 桃山 桁行六間、梁間正面一間、背面三間、一重、切妻造、妻入、こけら葺 |
宗像大社は日本最古の神社の一つで、天照大神の三女神を祀る沖津宮、中津宮、辺津宮の三宮から成ります。辺津宮は、かつての入り江に面して位置し、沖ノ島祭祀から展開した7世紀から9世紀の古代祭祀遺跡を源流としています。本殿は、天正6年(1578)大友氏が再建したもので、拝殿は、天正18年(1590)小早川隆景により再建されたものです。
右が本殿で左が拝殿: ・本殿は側面第一の間が両開きの板唐戸で、その他は白壁 ・拝殿は本殿正面から直角に前方に突出した切妻妻入り、桁行6間、単層柿葺き |
本殿: ・五間社流造り、柿葺き ・垂木は、前面五段、背面四段からなり、斗きょうは三斗組及び舟肘木 ・妻部は虹梁上に扠首束を立てる |
・本殿は基壇、亀腹の上に建ち、正面は五間とも蔀戸 |
本殿向拝: ・正面に三間の向拝があり、向拝中央の間の頭貫は虹梁のような形に起り上って筥崎宮楼門虹梁と近い形 ・向拝両側の間の蟇股は室町様式の平面的なもの |
拝殿: ・前後面の柱間を開放し、左右両側面は中間を開け放ち、長押上及び腰貫下は羽目板を張る ・床は板張 |
・拝殿の梁間に大虹梁をかけ渡し、その中央に板蟇股をのせて化粧棟木を支える |
アクセス JR鹿児島本線東郷駅からバスで宗像大社前下車すぐです。 |
見学ガイド 本殿及び拝殿は神門が開門されている時間帯には自由に見学できます。訪問時には神門開放時間は午前6時から午後6時までと掲示されていました。本殿は瑞垣越しの見学になるため、特に前面の細部はやや見づらくなっています。拝殿はすぐ近くで見学できますが、周囲に附属屋があるため全体像は見づらくなっています。 |
感想メモ 本殿側面ののびやかで美しい姿が印象的でした。 (2021年8月訪問) |
参考 福岡県の文化財(福岡県公式サイト)、海の道むなかた公式サイト |
菅原道真公の墓所に建てられた神社
だざいふてんまんぐう
太宰府天満宮
だざいふてんまんぐう
太宰府市宰府4丁目
太宰府天満宮本殿 | 33.521466, 130.534840 桃山 五間社流造、正面向拝一間、軒唐破風付、左右側面各一間車寄、軒唐破風付、檜皮葺 | |
太宰府天満宮末社志賀社本殿 | 33.520151, 130.534756 室町中期 一間社入母屋造、正面千鳥破風付、向拝一間、唐破風造、檜皮葺 |
太宰府天満宮は、菅原道真公の墓所の上に延喜19年(919)に建てられた神社です。現在の本殿は、豊臣秀吉の命を受けた小早川隆景が天正19年(1591)に再建したものです。志賀社本殿は、社伝によれば長禄2年(1458)の建造とされていますが、細部様式は桃山時代のものであるとも考えられています。
本殿: ・正面五間の流造りで桧皮葺き ・正面に大唐破風の向拝一間を付し、左右両側にも同じような唐風の車寄せを設ける |
本殿向拝の装飾 |
本殿左側面 |
本殿背面 |
本殿左側面から見た外陣内部: ・内部は黒塗りで、金彩の円柱を立てて一段高く内陣を設ける ・天井は内陣にだけあって、その他は化粧屋根裏 |
末社志賀社本殿: ・心字池を渡る途中、太鼓橋横に位置する正面一間、側面一間の小規模な社殿 ・石の亀腹の上に土台を置き、屋根は入母屋造りで正面に千鳥破風をつけ、さらにその前面に軒唐破風をつけて向拝屋根とする |
末社志賀社本殿軒廻り: ・蟇股をはじめ彫刻物には極彩色を施していた痕跡がある |
・末社志賀社本殿の周囲には跳勾欄を廻らせる |
アクセス 西鉄太宰府線太宰府駅下車、門前の商店街を進むとすぐです。志賀社は心字池の二つ目の橋を渡ったところにあります。 |
見学ガイド 太宰府天満宮境内の建物は、常時自由に見学することができます。本殿は2026年頃まで改修工事中です。 |
感想メモ 一年中参拝客の途絶えることのない神社で、写真を撮るタイミングがなかなかありません。 (2021年4月訪問、2023年8月情報追加) |
参考 福岡県の文化財(福岡県公式サイト)、太宰府天満宮公式サイト |
鎌倉後期の石造七重塔
しちじゅうのとう
七重塔
しちじゅうのとう
太宰府市朱雀2丁目
七重塔 | 33.504797, 130.520913 鎌倉後期 石造七重塔(相輪を除く) |
七重塔は、古代寺院般若寺があったとされる太宰府市の丘陵地に位置しています。様式から鎌倉時代後期の造立と考えられています。
・花崗岩製で、基礎からの高さは3.35m |
・台石には金剛界四方仏の梵字が刻まれている |
アクセス 西鉄二日市駅から400mです。東口を出て駐輪場の横の道を道なりに上っていきます。七重塔は坂を上ったところを左折しますが、標識などはありません。上記の座標を参考にしてください。文化庁DBは異なる場所を指しています。 |
見学ガイド 七重塔は公道から常時自由に見学することができます。周囲の立ち入りはできないので、背面は見ることができません。 |
感想メモ 相輪を欠いていますが、重厚な石塔です。 (2021年4月訪問) |
参考 太宰府市公式サイト |
中国・遼の石造八角経幢
たほうせんぶつせきとう
多宝千仏石幢
たほうせんぶつせきとう
太宰府市石坂4丁目
多宝千仏石幢 | 33.518239, 130.538611 平安中期 石造八角経幢 |
多宝千仏石幢は九州国立博物館内にあります。中国・遼の石造の八角経幢(お経を刻んだ石柱)で、刻銘に中国年号があり、太康10(1084)年に建てられたことがわかります。
アクセス 多宝千仏石幢を収蔵する九州国立博物館は、西鉄太宰府駅下車、東1㎞です。 |
見学ガイド 多宝千仏石幢は九州国立博物館で常設展示されています。写真撮影は禁止されています。 |
感想メモ 非常に規模が大きく、それでいて意匠が繊細な石幢でした。 (2018年2月訪問) |
参考 太宰府市公式サイト |
鎌倉後期の折衷様の仏堂
ふもんいんほんどう
普門院本堂
ふもんいんほんどう
朝倉市杷木志波
普門院本堂 | 33.373254, 130.771385 鎌倉後期 桁行三間、梁間三間、一重、宝形造、向拝三間、本瓦葺 |
普門院は筑後川の北、筑後平野の東端に近い丘陵地にあります。行基が筑後河畔に創建し、度重なる水害のために現在地に移築されたものと伝える古刹です。
・方三間(もとは桁行五間梁間四間)、宝形造、本瓦葺の小堂 ・四囲に縁を廻らし、ごくわずかな膨らみをもつ円柱を用い、屋根には瓦製の宝珠覆鉢露盤を飾る ・和様を基調とした建築だが、大仏様、禅宗様式の特徴も見られる |
本堂前面軒廻り: ・一軒の繁垂木で、柱上は出組、中備は間斗束 ・向拝柱との間は海老虹梁で繋ぐ |
本堂左側面軒廻り: ・大仏様の特徴を有する下面が波型になった木鼻が見られる(写真右、長押の上) |
柱上の出組: ・肘木の下端の円弧が垂直面に滑らかにすりつく禅宗様 |
本堂内部 |
アクセス JR鹿児島本線二日市駅又は西鉄線朝倉街道駅から杷木行きバスで志波下車、川の手前の道を北に1km。果樹園の間を上っていったところです、 |
見学ガイド 普門院本堂は常時自由に見学することができます。内部は非公開ですが、格子の間の目隠しが一部破損していたので、内部を見ることができました。 |
感想メモ 少し荒れた感じの境内ですが、時代の流れを感じさせて、それはそれでいい味でした。 (2021年8月訪問) |
参考 福岡県の文化財(福岡県公式サイト)、現地解説板 |
旧糟屋炭田の八階建コンクリート櫓
しめこうぎょうしょたてこうやぐら
旧志免鉱業所竪坑櫓
しめこうぎょうしょたてこうやぐら
糟屋郡志免町志免
旧志免鉱業所竪坑櫓 | 33.590354, 130.486266 昭和 鉄筋コンクリート造、建築面積二七〇・七一平方メートル、地上八階地下一階建、塔屋付 |
旧志免鉱業所竪坑櫓は,福岡市の東側に広がる旧糟屋炭田のほぼ中央に所在します。艦船用石炭及び海軍工廠等で使用する工場用石炭の採掘施設として,第四海軍燃料廠(ねんりょうしょう)の計画及び設計に基づき,昭和16年から18年にかけて建設されたものです。第二次世界大戦後は、国鉄の施設として引き続き使用され、昭和三九年に廃止されました。
・高さ四七・六メートルの鉄筋コンクリート造八階建の構造物 ・竪坑のケージを昇降させる巻揚機を櫓上部に設置する「塔櫓巻型」 ・一階から五階までは吹抜けの構造とし、六階以上は機械設備等の収容のために床及び壁で囲み、東西北面に張出部をつくる ・外装はコンクリート打放ちとし、八階には室内に柱を立てない三層分吹抜けの大空間をつくる |
アクセス JR香椎線須恵駅下車、南西1.5㎞です。福岡市営地下鉄福岡空港駅から近くまで入るバス路線もあります。 |
見学ガイド 旧志免鉱業所竪坑櫓は常時自由に見学することができます。 |
感想メモ 廃墟感が強いですが、力強さは失っていない建築です。 (2018年10月訪問) |
参考 国指定文化財等DB |
修験の行場に鎮座
いわやじんじゃ
岩屋神社
いわやじんじゃ
朝倉郡東峰村宝珠山
岩屋神社 | 本殿 | 33.433004, 130.875078 江戸中期 桁行五間、梁間二間、一重、入母屋造、向拝三間、茅・杉皮重ね葺 内殿 三間社見世棚造 |
境内社熊野神社本殿 | 33.433219, 130.874624 江戸中期 懸造、三間社流見世棚造、板葺 |
岩屋神社は、修験で知られる英彦山にほど近い山中にあり、神社の周辺は古くから修験の行場となっていました。本殿は元禄11年(1698年)に福岡藩4代藩主黒田綱政によって建立されました。
本殿: ・権現岩と呼ばれる大岩の下の窪みに建てられている ・建物は岩窟を利用して建ち、背面と左側面には屋根と壁が造られていないなど構造に工夫がみられる ・細部は時代の特徴をよくあらわしている |
本殿右側面: ・本殿は茅杉皮重ね葺き一重入母屋造り ・背面には壁を設けず、権現岩にめりこませている ・簡素な一軒の疎垂木で、円柱上は大斗肘木 |
本殿向拝: ・五間の身舎の前面に三間の向拝が付く ・向拝は面取り角柱 |
本殿向拝右側面: ・柱上は出三斗で、中備に彩色の蟇股を置くなど、身舎よりも装飾性が高い |
本殿向拝軒廻り |
本殿内殿: ・本殿内部には宝珠石と呼ばれる信仰上重要な岩が何重にも薦に巻かれて安置され、これに接してその奥に内殿が作られている ・内殿は三間社見世棚造 |
境内社熊野神社本殿: ・本殿西方の岩壁の中程に懸造りで造られた三間社流見世棚造、板葺の簡素な社殿 ・保存状況がよく当初材をよく残している |
アクセス JR日田彦山線筑前岩屋駅(代行バス)下車、北西1.2㎞です。 |
見学ガイド 岩屋神社は常時自由に参拝することができます。本殿はすぐ近くから見ることができます。境内社熊野神社本殿も見ようと思えば近くから見ることができるのかもしれませんが、安全を考えると崖の下から見上げるのが無難だと思います。 |
感想メモ 岩屋神社は奇岩が林立する大分県境に近い山中にありますが、近くを日田彦山線(代行バス)が通っているので、公共交通のアクセスは意外と簡単でした。駅からは少し上りますが、写真からイメージするような大変な上りではなかったです。 (2022年4月訪問) |
参考 東峰村ツーリズム協会公式サイト、文化遺産オンライン、福岡県観光連盟公式サイト |