最初に内定をもらったところは、石油関係で、東京にある会社だった。
内定をもらって以降、毎月、社内報が送られてくるようになった。
名前までは紹介されてはいなかったが、来年4月の高卒新入社員は合計何名で、
出身地別の人数も掲載されていた。
その社内報をもらうようになって、母に不安が出たようだった。
遠い所に就職してしまったら目が届かず、次兄のように、母に相談することもなく、
勝手に仕事を辞めてしまうかも知れないと思ったのかも知れない。
「シンジ、九州で就職せんね?」と母は言った。
9月になり、2学期が始まると、シンジは就職指導の先生に辞退を相談した。
先生は、
「母が病気になったので、東京には行けなくなりました。内定は辞退させていただきます。
という手紙を書きなさい。」と、知恵を授けてくれた。
翌月の社内報は、内定辞退があった旨が掲載されていた。
そして、それ以降は、社内報が送って来ることは無かった。
内定の辞退の成功については、就職指導の先生には報告したと思うのだが、
ちゃんとした記憶は残っていない。