ICSIが胎児や出生児の奇形リスクを増加させることはない | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

患者さんと話をしていると顕微授精は不安という意見があります。どの点がと尋ねるとなんとなくとかイメージがとか漠然とした不安が多いのが現状です。

今月号の論文ではこの辺りを調べており参考になるため共有します。

 

2009年1月から2019年12月までに中国の北京大学で従来のIVFまたはICSIを受けたカップルからデータを収集解析しています。総計46,167回の従来のIVF新鮮胚移植サイクルと33,247回のICSI新鮮胚移植サイクルが含ました。

 

結果

従来のIVFおよびICSIにおける先天異常率はそれぞれ5.44%および5.78%であり、両群間には統計的に有意な差は認められなかった(補正オッズ比1.098、95%CI 0.787〜1.532)。

特定の奇形率もICSIとIVFで同等であり、妊娠結果、流産における奇形、出生体重にも特別な差は見られませんでした。

 

結論

ICSIの安全性を示唆し、従来のIVFとICSIを受けた患者の間での妊娠結果および出生児の先天異常を比較することにより、安心できる結果と言えます。

結論

ICSIと従来のIVF(体外受精)を比較した結果、ICSIが胎児や出生児の奇形リスクを増加させることはありません。先天異常の発生率に統計的に有意な差はなく、妊娠結果や出生体重、流産時の奇形率などもICSIとIVFの間で大きな違いは見られませんでした。このことから、ICSIは安全な方法であり、IVFと同等のリスクであると結論づけています。

 

Fertility and Sterility® Vol. 121, No. 6, June 2024 

A comparison of pregnancy outcomes and congenital malformations in offspring between patients undergoing intracytoplasmic sperm injection and conventional in vitro fertilization: a retrospective

cohort study