このまま移植を繰り返すよりは腹腔鏡の検査をした方が良い | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

良い胚盤胞を移植しても全然妊娠しません。数年前にクラミジアの感染歴もあるし医師からはこのまま移植を繰り返すよりは腹腔鏡の検査をした方が良いと言われましたが、オペは妊娠が遅れるし、オペに対して不安があるため希望はしていません。自然妊娠を希望しているわけではないため腹腔鏡を行う理由も理解できません。今後どのようなプランをすれば良いでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

良好胚を移植しても着床しない場合、着床障害を疑い色々な検査をしていきます。

 

まず最初に疑わなければいけないのはクラミジアの既往があるため卵管に着床をさまたげる原因が考えられます。卵管内の炎症が子宮内に波及して良好な胚盤胞の着床を妨げます。ご質問の自然妊娠を希望していないため腹腔鏡を行う理由が不明という点ですが、自然妊娠を狙うわけではなく移植後の妊娠率の向上を目的とした腹腔鏡のオペとなります。子宮内、卵管内、腹腔内の洗浄もかなり有効な治療方法です。

 

特に卵管水腫は着床障害の大きな原因となります。多数の論文で有意に妊娠率が低下する事が報告されています。卵管水腫は大きいものはエコーで診断がつけられるケースがありますが、それほど大きくない卵管水腫はエコーでは見つける事が難しくなります。

過去にクラミジアに感染した事がある場合には要注意です。

卵管造影検査でも手技的にしっかりと行わないと大きくない卵管水腫は見逃される事になります。卵管造影検査は奥が深く診断も簡単ではありません。

卵管造影検査は造影剤を用いた間接的な検査のため偽陽性、偽陰性がかなり高い検査です。

 

長年色々着床障害の検査をして何も見つからず、最後に行った腹腔鏡検査で実は予想外に卵管水腫があり、この卵管水腫のために今まで全く着床しなくて、腹腔鏡のオペ後の翌月に自然妊娠したというケースも結構あります。

 

そのため、なかなか妊娠に至らない場合には、一旦移植は中止して、腹腔鏡で卵管を詳細に検査する事を是非お勧めします。

 

宜しければ過去の記事も参考にしてください。

 

とりあえず移植してみましょう

 

良好胚が出来るのに妊娠しない原因は