ホルモン補充周期での凍結胚移植が胎盤残留のリスクを著しく高める | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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RPOC(retained products of conception)とは流産、出産後の子宮内の妊娠組織遺残物の総称です。

病理組織診断にて絨毛組織を認めることで確定診断されます。治療法は待機療法、子宮内容除去術、子宮鏡下手術(TCR)、子宮動脈塞栓術(UAE)や子宮全摘術などがあります。

どういうケースがこの様な胎盤の遺残を起こしやすいかを調べています。

日本から出された今月号の論文です。

 

2007年から2017年にかけての日本のARTデータブックから取得した、新鮮胚移植と凍結融解胚移植後の単胎生児合計369,608件の後ろ向きコホート研究です。

 

主な目的は、生殖補助技術に関連する胎盤残留のリスク要因を評価することでした。

 

研究の結果、132件の出産(対象となる生殖補助技術登録出産の0.04%)で胎盤残留があり、そのうち122件(92.4%)が凍結胚移植後に発生しました。

 

胎盤残留があった症例は、なかった症例に比べて、経膣分娩の割合が高く(78.0%対61.1%)、また、癒着胎盤の合併症を有する割合も高くなりました(24.2%対0.45%)。

 

凍結胚移植を受けた患者において、胎盤残留のリスクが有意に増加した因子には、移植時の胚の段階、ホルモン補充周期、および孵化補助が含まれました。

ホルモン補充周期は、胎盤残留の最大のリスク要因(補正オッズ比4.9、95%CI 2.0–12.4)であり、ホルモン補充周期後の出産で0.05%(97,958件中51件)、自然周期後の出産で0.01%(47,079件中5件)でした。

 

新鮮な胚移植においては、採卵数が胎盤残留の唯一の有意なリスク要因でした。

この分析は、胎盤残留のほとんどの症例が凍結胚移植から生じ、このグループ内でホルモン補充周期の使用が胎盤残留の最大のリスク要因であることが明らかになりました。

 

 

この論文の言いたいこと

この研究は生殖補助技術(特に凍結融解胚移植)を使用して得られた生児出産における胎盤残留のリスク要因を調査しました。結果として、特にホルモン補充周期での凍結胚移植が胎盤残留のリスクを著しく高めることが分かりました。

このリスクは、経膣分娩や、透明体孵化補助を行った場合にも顕著でしたが、帝王切開を行った場合にはそのリスクは顕著ではありませんでした。

また、新鮮胚移植における胎盤残留のリスク要因は採卵数が多いことでした。これらの知見は、生殖補助技術を用いた妊娠管理において、特定の医療行為が胎盤残留のリスクを高める可能性があることを示しています。

 

Fertility and Sterility® Vol. 121, No. 3, March 2024

Assisted reproductive technology-associated risk factors for retained products of conception