人工授精をする前の禁欲期間を2日以下とした群で最も高い妊娠率が得られた | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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「人工授精前に何日間禁欲期間をとったら良いですか?」

という質問を時々受けます。

 

これに関する論文がFertility and Sterilityに出ていましたので紹介します。


対象、方法

2003年からの2年間に人工授精を行った866周期に対して禁欲期間により3群に分けて妊娠率を比較検討しています。排卵誘発はクロミッドまたは誘発剤の注射を用いています。

 

結果

人工授精前の禁欲期間により以下のような妊娠率になりました。

禁欲期間2日以下:妊娠率 11.27%

禁欲期間3~5日 :妊娠率 6.07%

禁欲期間6日以上:妊娠率 7.25%

 


結論

禁欲期間が短いと総運動精子数は少なくなりました。

人工授精をする前の禁欲期間を2日以下とした群で最も高い妊娠率が得られました。

この結果からこの病院ではHCGを打つ日に性交渉を行い、その2日後に人工授精を行い、更に可能であれば人工受精後の夜に性交渉を勧めているとの事です。

 

この結果から言える事として

人工授精前の禁欲期間を長く取る事は妊娠率の低下を引き起こす可能性がある事が示唆されました。少しくらい精子の濃度が減ったとしても禁欲期間を短くすべきなのかもしれません。

一般的に言われているような、「人工授精前は性交渉を制限べき」は必要はないのかもしれません。

禁欲期間は短くすべき

 

A short period of ejaculatory abstinence before intrauterine insemination is associated with higher pregnancy rates.

Marshburn PB, Alanis M, Matthews ML, Usadi R, Papadakis MH, Kullstam S, Hurst BS.

Fertil Steril. 2010 Jan;93(1):286-8