フィンランドの湖の上に輝くオーロラ。オーロラも宇宙の「ちり」。



空海(774-835年)の生誕1250年を祝って、2024年、各地で行事が行われる予定です。金剛峯寺のホームページによれば、
高野山では、誕生日の6月15日を中心として57日間、「いのちよ輝け~大師のみこころと共に~」のスローガンのもと宗祖弘法大師御誕生1250年記念大法会を執行するようです。

空海は四国の讃岐 (香川県) 出身ですが、高知県の室戸岬の洞窟での修行中に、明星 (金星)の光が口中に差し込み、若くして悟りを開いたとの伝承が残されています。四国88カ所の霊場を巡る人も増えています。右手に持った杖を弘法大師にみたて、二人で霊場を巡って行きます (同行二人)。この修行は、空海の悟りに近づきたいとの願望から出ているとも考えられます。それでは、真言密教における悟りとは、どのようなものでしょうか。霊場巡りや般若心経の写経をすると、どのようなご利益があるのでしょうか?

空海 (真言密教) によれば、我々一般人 (仏教用語では凡夫と呼ぶ) と宇宙の中心に位置する大日如来はすでに一体化している。我々はすなわち大日如来なのだと考えます。我々は、日常生活をしていて、それに気づいていない。しかし、一旦、その教理を感得すれば、凡夫が大日如来となり、一体化して、即身成仏できると解きました。

一体化とは、いわゆる悟りですが、空海は凡夫に厳しい修行を押し付けている訳ではありません。自分は宇宙に存在する「ちり」のような存在であり、宇宙の一部と認識し、それに溶け込めば良いのです。一体化すると、この世 (此岸) で煩悩は解消され、素晴らしい生活が待っていると。あの世 (彼岸) でではないのです。

砂漠のような厳しい生活環境の中で生まれた西洋の宗教 (ユダヤ教やキリスト教など) と、東洋のインドで発祥し、日本のような、余裕のある、深山幽谷の豊かな国で育まれた仏教である密教とは、教理が決定的に異なるのは当然だと思います。この空海が教えた真言密教の教理は、西暦800年前後の平安時代に生きた人々にとっては驚きであり、空海による発想の大転換であったと考えられます。

騒々しい現代社会に生きる我々も、自然の中に身を置いて、自分の無力さを体得すれば、宇宙の「ちり」になれるでしょう。自分たちは宇宙の「ちり」であり、死んだら「ちり」となって宇宙に漂うと自覚すれば、地球上から紛争や戦争がなくなるでしょう。


以下は関連記事です。