富岡町を訪れる前に、Mくんが言いました。
「俺この前、福島県のホームページを見たんだ。そしたら、4年前にお参りした慰霊碑の場所が移されてた。」
「え?なんで?」
前回、お線香をあげさせて頂いた慰霊碑は、海を背にして、町を見守る様に、富岡駅に設けられていました。
そこは慰霊碑を設置するに、最適な場所の様に感じていた私は、慰霊碑の移動が腑に落ちませんでした。
「町の様子を見に行く前に、慰霊碑に行こう。でも、びっくりしないでな・・・」
Mくんの表情は沈んでいました。
「なんでびっくりするの?」
解せない私。
「ん・・・まぁ・・・あるモニュメントがあってさぁ・・・」
そのまま黙り込むMくん。
「あるモニュメント?」
「うん。警察署の裏側に公園があるんだけどさ、その公園に移設された時に、一緒にまつられたんだ。」
「で?なんでびっくりするの?」
暫く黙っていたMくんが言いました。
「ホームページでそれ見た時・・・俺、涙出ちゃってさぁ・・・」
私はMくんのこの言葉に、困惑しながらも、何か、覚悟をしなければならないと感じました。
双葉警察署の裏にある公園は、遊具も無く、小さな校庭の様な公園でした。
車を降り、公園に足を踏み入れた私は、慰霊碑が何処に設置されているのか、全く分かりませんでした。
「何処?何処に設置されたの?」
移設された事に、あまり納得の行かない私は、多少苛立ちながらMくんを振り返りました。
「あそこ。」
Mくんが指さした方を見ても、モニュメントらしき物を認識出来ず・・・
私はMくんが指さした方へと歩き出しました。
「!!」
公園の入り口から祭壇まで、半分程歩いた所で、私の足は動かなくなり、涙が溢れて来ました。
まだ、何故『それ』が慰霊碑と共に設置されているのか?その理由すら知らないにも関わらず、胸を痛烈な閃光が貫いたのです。
そこにあったのは・・・
1台の車・・・
・・・だったのです。