その生徒は言った。
『趣味でやっている私が、プロを目指している人と同じ努力をしたら可笑しいのですか?』
私は絶句した…。
私が教え始めて間もない頃…25歳の時である。
クラス終了後、私はいつもの様に数人の生徒達と歓談していた。
その中の一人の生徒が、技術的な壁にぶち当たり、真剣に悩む様子を見た私が、その生徒を慰めるつもりで言った言葉を受けて、その生徒がそう言ったのである。
私は何と言ったのか…
それはこうである。
『〇〇さんは、プロになる訳じゃないんだし、そんなに悩まなくてもいいじゃん!』
何と言う軽率な言葉をかけてしまった事か…。
タイムマシンさえあったなら、私は直ぐ様乗り込み、軽率極まりない25歳の私をぶん殴ってやる所である。
25歳の私はすぐに、その生徒を深く傷付けた事を詫びたが、一度口にした言葉と言う物は反故には出来ない。
私の教え方は、その日を境に変わった。
そしてその日以来、私はクラスに於いて、プロアマを分け隔てた教えをしていない。
『この子…別にプロを目指してる訳じゃないしな…ここまで厳しく言わなくてもいいか…?』
と言う考えが、ふと頭を過る事もあったが、その度にあの生徒の事と、あの軽率な言葉を思い出す。
どうせ嫌われるなら、言うべき事を言って嫌われよう!
さて、鬼の誕生!と言う訳である(笑)。
プロだろうと、プロを目指しているアマチュアだろうと、趣味であろうと、趣味以上プロ未満であろうと、有望ならば引っ張り上げ、バカには拳をくれてやる。
これでなくて、どうして人様から金が頂けようか?
以来私は、ずっと…、あの生徒に感謝の気持ちと、陳謝の気持ちを持ち続けている。
そして中には、こんな生徒もいる。
『私はクラスを受けていられるだけでいいんです!私にアドバイスは要りません!ただ、先生のクラスを受けさせて下されば、それでいいんです!』
…と言う拒絶オーラを全身で放出している生徒である。
こうした生徒には、皆に向けた全体アドバイス以外に、個人的なアドバイスは滅多にしない。
見ていない訳ではない。
しかし、望まない者に『余計だ』と思われる事は言わない。
※こうした生徒は、全体の5%にも満たないが、全く居ない訳でもない。
私のクラスに集まってくれる生徒の大半は、趣味以上の人間である。
その時間と金の掛け方は、既に趣味の範疇ではなく、技術もセンスも高く、下手をすれば、何処ぞの頭の悪いプロよりも踊れる奴もいる。
彼等こそは利口である。
時間と金を有効に使い、私のクラスで学び、刺激を受け、その肉体を謳歌し、また、それぞれの仕事につく。
彼等には無駄がない。
私が怒る必要もない。
そして、彼等は、私のクラスの楽しみ方をよく心得ている。
完全なるGive and takeが成り立っている。
プロを目指している者こそは、彼等を見習うべきである。
いいか?親愛なる私のバカども諸君!
楽しくなければダンスではない!
理屈を捏ねるな!
頭で考えるのは、後からでいいのだ!
動かせ!身体を!
感じろ!身体で!
すぐに拗ねるな!
口答えは止めろ!
そんな『屁』に等しい言い訳で私を騙せたなどと思うなよ!
其処こそ頭で考えてみろ!ずっとオマエ等を見て来た私を騙せるか?否か?
それこそを、少ない脳ミソで考えてみたら良かろう!
俺に二度と『バカ!』と言わせるな!