EDENSZERO第276話『シキの決断』感想 | ルーメン・イストワール

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地球から「シキ」という名の赤子を救出したジギー。母親代わりのアンドロイドを4体製作し、それぞれに記憶を与え…!?


前号までのあらすじ…マザーを救うため再び始まった"ユニバース0"での冒険。シキはついに冒険の終着点・マザーの元へ辿り着く。彼女は、シキを待っていたと語り、"二万年前の契約"という二択の選択を提示。困惑するシキに対し、宇宙の女神マザーは自身の正体が「地球」と呼ばれる星であったことを明かす。そして二万年前の地球、エーテルが枯渇し滅亡へ向かう中で、ジギーが降り立ち、一人の赤子を救い出す。その名は「シキ」。地球唯一の生き残りであったシキに、マザーは宇宙の未来を選ぶ権利を与え……!?


扉絵

扉絵は、竜の着ぐるみを着たピーノ

珍しいシチュエーション。

煙のようなものを吹いてる壺が置いてあり「大変身の儀式!」という煽り文が添えられているのもよく分かりませんね。

ちょっと困惑の強い絵w


ジギーと旅した四煌星

15年前、ジギーがマザーを目指し諦め桜宇宙に戻ってきたタイミング。

その付近の出来事だとこの直後に描かれた魔王四煌星の"任"が解かれた時があり、その時点で既に四煌星は「ジギーと共にマザーを目指した」と思っていました。

前回それは偽りの記憶だったと分かったものの、それでも認識にギャップを感じる四煌星。

だってハーミットの過去編でその描写を見た時はこの経験が偽りのものだなんて微塵も考えませんでしたから。

それくらい四煌星の言動は「偽り」だと思えないくらい自然だった

アンドロイド、即ち機械生命体ですから、こうすればこうみたいな、スイッチをオンにするような感覚で全てが成立するものなのかもしれませんね。

ウィッチが、マイケル達グランベルの機械の懐かしさを覚えてるのも怖いくらい。

こうまで自分の体験だと認識できるのかと驚きました。

ある意味人間らしくない機械の無機質さを感じる。

だからこそシキも読者も「本当は四煌星がマザーを目指す冒険などしていない」と思わなかったわけですが。

この時点で「四煌星が生まれて二週間」というのも興味深い情報。

その数日後に魔王四煌星は解散しているので、本当にハーミットの過去編で見たあの描写が四煌星が生まれて間もない時だったのですね。

ハーミットの過去編なんて単行本だと5巻とかの相当初期の頃ですから、それが今になって全く見方が変わるの不思議な体験。

特に今回はあの時と全く同じ絵を使い回す事で変な読後感を強めていました。

全く同じなのに、こんなにも違っていたんだ

ジギーの胸中も知れてカルチャーショックを受けました。

あの時点でジギーだけが全ての真実を知っていたのですね。

地球が滅んだのは二万年前ですが、時喰みによって時が遡った地球として考えると、ついに数週間前に死んだ人間を元にしたアンドロイドを引き連れていたとか怖い。

同一人物ではないですが、今となっては少しゾッとします


"情"と"罪悪感"

ジギーがわざわざ作った魔王四煌星を解散させた経緯も点と点が繋がり面白かったです。

それが偽りの記憶なのに事実のつもりで話す四煌星に感じる違和感。

ジギー視点で見ると「何も知らない」事が際立っています。

そう仕向けたのが自分とはいえ、次第にジギーは申し訳ないような気持ちを抱くようになっていきました。

「シキを世話させるつもりで作ったアンドロイドじゃが…偽りの記憶を与えたせいで妙にやりづらい…」と感じ「これは"情"というものだろうか…それとも"罪悪感"…」と表現し「人間であったオリジナルの想いを踏みにじっているのか?彼女たちは何を想いあの場で死んでいったのか」と考えます。

正常に動かす為に組み込んだ「偽りの記憶」

しかし、その認識の齟齬がジギーにやりづらくさせてしまったのも想像に難くないです。

彼女たちが人間のような姿をしているからこそ、単なる機械として扱う事ができなくなってしまったんだろうか。

マイケルのようなロボットこそ機械生命体として捉えやすく、人間と同じ姿をしてるアンドロイドの方が思わず人間として扱ってしまう心が芽生えてしまうのは、良くも悪くもあるよね。

どちらも同じ機械生命体として同列の存在なんだけど、どうしてもアンドロイドの方に思い入れが生まれてしまう。

加えて、ジギーにとっては「かつて生きていた人間」を元に作ってしまったのが、やりづらくさせてしまった大きな要因でしょう。


ジギーが表現する通り「情」「罪悪感」と呼べる類の感情。

特にウィッチなんかは母親として最期までシキを守る姿を見ていた分、強く感じるものがあったんじゃないでしょうか。

これで本当に良かったのかと

悪気があってやった事ではないですが「人間であったオリジナルの想いを踏みにじっているのか?」と感じ「彼女たちは何を想いあの場で死んでいったのか」と考える気持ちも分かります。

そういった部分が根底にあるから、魔王四煌星は複製が不可能な特異機体なのだと思いますし、特に「何を想いあの場で死んでいったのか」も読者はジギーと同じ視点で感じられます。

"それまで"は知っていても、最期の瞬間は知らないので、彼女達に人生があった事は分かっていてもその結末は想像する事しかできないんです

ここのジギーの感情を表現した心の声は素敵だった。


四煌星の任を解いた理由

ジギーが魔王四煌星の任を解除し、自由を与えた理由も気になっていました。

同じ描写がハーミットの過去編にもあり、その時から感じていたのは、何故ああまで「自由」を強調していたかです。

この時ジギーは「これから先の道はおまえたちの"自由"じゃ」「生きよ自由に」「もちろんワシと共にシキを育てるのも自由 だがおまえの本当の望みはそうじゃない だろ?」と再三「自由」という言葉を繰り返していたんです。

当初の認識の話ですが、マザーを目指す役目を終えたから解散したというのは分かります。

それでもああまで「自由」を強調するのは、ジギーの言動に何らかの意図を感じたんです

何か真意があって、ああいう行動に至っているんじゃないかと感じていた。

その答えは、魔王四煌星の正体にあったんですね。

かつて地球で生きていた人間たちを元にして生まれたアンドロイド。

正常に動かす為に与えた「偽りの記憶」は、彼女達の生を縛っていたと言える。

だから、ジギーは四煌星に自由を与えたのではないでしょうか。

偽りの記憶を与えたせいで、自分はジギーの仲間だと考えているけど、本当はそうじゃない。

何を想いあの場で死んでいったのか…もう叶わないけど、彼女達にも生きたかった未来がある。

「母親代わり」として作った目的を果たす事はなかったですが、偶然生まれた彼女達に本来あるはずだった生を謳歌してほしかったんじゃないでしょうか

それをこんがらがらせてしまったのは、ジギーが真実を伝えなかったからですが、あのタイミングで言えないのも無理はありません。

偽りの記憶を与えた事で、受け入れられない真実でしょう。

四煌星の反応を見るに、本当に実体験だと思い込むレベルで偽りの記憶が作用している。

そんな彼女達に矛盾する真実を伝えるのは最悪自我の崩壊を招くレベルだったんじゃないでしょうか。

わざわざ拗れた話にした事に引っかかる気持ちはあるものの、そうできなかった理由も想像できます。

良くも悪くも、魔王四煌星を生んでしまった事が全ての始まりだった。


エデンズワンを作った理由

エデンズワンを造船してたのもこのタイミングなんだ!?

何となくもっと昔でもおかしくないのかもと思ってましたが、ジギーが桜宇宙に戻ってきた時点でワンの造船途中でした。

前回当たり前に「父親の制作はエデンズワンに任せるとして」と言っていたけど、この時船として完成はされていなかったのですね。

高度なAIが既にあって、それに造船を指令していて、その流れで父親代わりのアンドロイド制作も依頼していたという事でしょうか。

この時だと今ではあれだけ禍々しい印象を受けるようになったエデンズワンも未完成だったのが不思議。

1番はこのタイミングで叩けば巨悪を封じる事ができていたんだ。

気になるのは、ジギーがエデンズワンを作ろうとしていた理由ですね。

これを今回ジギーは「0の予備ワンはいらぬ…」と表現していました。

エデンズワンはエデンズゼロの予備だった

という事は、215話でのハーミットの読みが当たっていたと証明されました。

215話でハーミットはエデンズワンが作られた理由として「予想では万が一エデンズゼロに何かあった時の予備…」だと考えていました。


言葉が一言一句合っていた「エデンズゼロの予備」

当時ジギーはマザーを目指していたので、仮にエデンズゼロが壊滅的なダメージを負うような事があった時乗り換える選択肢としてエデンズワンを作っていたんでしょうか

「エデンズゼロの予備」なんてそういう用途ぐらいしか思い浮かびません。

それはそれで腑に落ちるのですが、引っかかるのはエデンズワンが初めて登場した時の説明です。

この時はエデンズワンの事を「0は1に進む為の試作品にすぎぬ 1が目覚めた今0には消えてもらう」と言っていたんです。


その説明を信じて、ずっと1こそオリジナルで0は未完成の船だと思っていたけど、真相を聞くと真逆。

オリジナルはエデンズゼロの方で、エデンズワンは「予備」だった。

何故このような食い違いが起きてるかというと、今にして思うとこの時発言していたジギーはエデンズワンに操られた存在だったからでしょうか。

エデンズワンからすると究極の自我を持ち最適な目的を持った「自分こそエデンズゼロとしての完成品」だと思いたいよね。そう解釈するとしっくりくる。


ヴォイドはシキの事を熟知している?

「本当にシキがマザーを救えると?」とシキを試しているような挑発的に笑うヴォイドの顔がイイですね〜〜〜

ヴォイド、良くも悪くも今まで生真面目そうな印象があったので、心の奥底で渦巻いているエゴが垣間見えたかのような。

機械の王の人間らしい一面が見えたようです。

こうやって見ると「シキ」という人間をよく知っていて、個人的に特別な思い入れがあるように思える。

ジギーは自分の正体をエデンズワンから教わったと言っていましたが、その情報源はヴォイドになっているんでしょうか。

ヴォイドは二万年後の世界からやって来ている。

即ち、エデンズワンが知らない情報を持っていてもおかしくない。

ジギーが生まれた時代ですので、その事を知り得たのはそう不思議な事じゃないですかね。

気になるのは、何故「シキ」の事まで知っているかですが。

ジギーに「シキ」だった頃の記憶はありません。

だから二万年後の世界に「シキ」という記録は残っていないと思うし、ヴォイドが知る余地はない気がする。

今回のヴォイドの言動を見ると、シキが何より友達の事を大事にしているからマザーを救う事はないとまで人間性を熟知していたように見えた。

尚且つそれはジギーが「マザーはシキが救う 破壊などできぬ」と言った上での返答だったので、事実そう行動したシキの事をヴォイドはジギー以上に理解しているとも解釈できる

今回の描写を参考にすると…ですが、ヴォイドは幾重にも繰り返されてきたシキが仲間を選びマザーと宇宙が滅びる定めを知っていたように見えます

だから、ああまで挑発的な言動をした。

自分は以前からこの宇宙そのものが繰り返しループしている説を考えていて、もしかしたらヴォイドはそれを認識していたりするのでしょうか。

だとしたらその繰り返されてきた歴史の中で、ジギーの正体を「シキ」として理解できたのも頷ける気がします。

凄く壮大な話ですが、この物語のラスボスという存在感を考えると、あり得なくはない。


シキの決断

再び物語は「現在」に戻り、マザーが問う「二万年前の契約」

「約束」とはレベッカ解釈の言葉でしょうか。マザーは一言もそんな言い方はしてないはず。

まぁ「契約」であっても「約束」であっても、その時のシキは赤子で、マザーとジギーの間で結ばれたもので、何か取り決めがあったわけでもないのですが。

だからレベッカが「ねぇ…あんたが言ってた約束なんかしてなかったじゃない!!あんたが勝手に決めた事で赤ちゃんだったシキにそんな約束無効よ!!!」と反応するのも分かります。

シキに背負わせるには重過ぎる二択。

反応見てると、レベッカとしては「二万年前の契約」によって、仲間の命を失うかマザーを失い人類が滅亡するかの分岐点が生まれてしまったようにも思ってるんでしょうか。

確かにここがずっと謎ではあります。

マザーが「二万年前の契約」と言うだけで、あそこまで宇宙を二分するシステムが生まれるのかと引っかかるんですよね。

まるでシキが生まれたという原因が、二つの最悪な未来の可能性を生んでしまったような因果を感じるんですが。

こういう部分が物語の最終的なテーマに結びついていきそうな気もする。

「本当にオレが選んだ方でいいんだな マザー」と確認し「もう決まってる」と言い答えるシキの決断。

「未来はオレたちで作る 仲間は誰も殺させない おまえが消えるんだ マザー」とシキは未来を決めました。

まぁ予想してた通りのアンサー。

シキがマザーを選ぶ理由が無さすぎました。

天秤にかけられたら絶対に仲間を選ぶシキをずっと見てきたので納得しかない行動。

予想してた通り故に、そんなに面白くはなかったですね()

サブタイにもなってるから読者の意表を突く答えでも聞けるかと思ったのですが、流石にそうはならなかったか。

とはいっても、このままでは人類が絶滅してしまう。

そうならない為の行動、本当の意味での二万年前の契約に対する答えは今後見られるように思います


魔王になったシキ

かつてマザーは言っていました。

「少年は旅立った かの少年はこの宇宙に何をもたらすのか 伝説の英雄となるか魔王として破壊の限りを尽くすか」

こうやってシキを特別視し、旅の果てを待ち続けていたのは「二万年前の契約」があったからです。

地球で唯一生き残った赤子としてマザーは未来を託しました。

だから「かの少年はこの宇宙に何をもたらすのか」なんて言っていた。

その「魔王として破壊の限りを尽くすか」とは、仲間を選び人類を滅ぼす未来を選ぶ選択でした。

シキの答えにマザーは「英雄か魔王か…あなたは…魔王でしたか」と反応します。

これも二択の未来が出てきた時点で予想してたものでした。

やはり「魔王」とは、仲間の為に人類を滅ぼす称号なのだなと。

逆に「英雄」は、仲間を犠牲に人類を守るもので納得できます。

世界を守る事こそ「伝説の英雄」に相応しい。

シキの「魔王」らしさというものも今回回収された気がします。

「魔王」というのがシキのキャラクターの1番のコンセプトでしたが、別に悪人じゃないし、王のような立場でもないし、そこまでしっくりくるニュアンスではありませんでした。

しかし、EDENSZEROにおける「魔王」という言葉の持つ意味が強調されていたのが、サン・ジュエル編。

労働区の人々が更なる仕打ちを受けるとしてもホムラを助ける事を優先した時、シキはこう言っていました。

「知った事じゃねえな 友達の方が大切なんだ オレは正義の味方じゃねえ 友達キズつけたら魔王にだってなってやる!!!!」


これがEDENSZEROにおける、シキにとっての「魔王」という言葉の意味するものなのだと思います。

友達の為なら世界だって敵に回す者の称号

「魔王」という言葉は、あの時から一貫しています。

シキが友達を選び、世界を犠牲にするのは、最初から決まっていた行動だった。


マザーが消える

「あなたは…魔王でしたか」と言い、光を放っていくマザー。

直後、宇宙空間がぐわんと歪み「な…なんじゃ 宇宙が…」と困惑するジギーにヴォイドは「マザーが消える 私の勝ちのようだな」と答えていました。

シキが仲間を選びマザーを犠牲にするのは想像に難くなかったですが、マザーが消えるところまで話が進むのは少し覚悟してなかった。

てっきり何かの都合でシキの決断は先延ばしになり、その中で更なる答えを提示してどちらも救うのかと思ってた。

最終的にそうなる予感はしますが、一先ず本当にマザーは消える…?

宇宙空間まで歪み始めると、マザーが消えゆく実感が強まりますね。

「宇宙のエーテルの源になる」とマザーは言っていましたから、それだけマザーは宇宙にとって特異な存在なのだと思います。

マザーが消える事は宇宙を根本から大きく変えるぐらい影響を与えるイベントなのだと思う。

まだ完全にマザーが消えたわけではないですが、消えるまで暫く時間がかかるか、次回一瞬で消えるか、この宇宙が少しずつ崩れていきそうな恐ろしさがあります

いよいよもって後戻りできない物語のクライマックスに突入してきた気分


シキの決断は、吉か凶か。この宇宙の未来は──…!?

第277話『消えゆくマザー』へつづく

今の状況をまんま表したサブタイトルですね。

この表現を信用するなら、次回は丸々1話マザーが消える事によって起きる影響が描かれるんでしょうか

今回ラストのように景色がぐわんと歪んでいると、重力というものにも大きく影響を及ぼしそうな気がする。

宇宙と宇宙が予期せず繋がって、アベンジャーズ/エンドゲームみたいに各勢力が仲間として勢揃いみたいな熱い展開ない?