季節とともに移りゆく草花。

ときの流れがはやく、ひとは

時代のなかで歳をかねてゆく。

 

ひとには違いはあるが、男と女

はたがいに夢のような景色を追

い求めてゆくのだろう

 

小説「透光の樹」

映画「透光の樹」のもとになる、

高木のぶ子の小説「透光の樹」を

読む。

今井郷(永島敏行)は25年前に取

材のために出かけた地、石川県鶴木

町に再度訪ねる。

このとき、当時高校生だった千桐(

秋吉久美子)と会う。

 

郷と千桐

25年の歳月を経た2人。

郷には妻と2人の息子

がおり、彼は東京で映像制作会社(

社長)の仕事についていた。

一方千桐は子どもを産んだあと夫と

離婚し、今は12歳になる娘を育て、

父を介護しながら割烹店に勤めてい

る。

郷は家に案内されたとき、「父は借

金払えばかり言う」と千桐の話を耳

にし、郷は「お金がいるときに声を

かけてください」といってたがい

に別れを惜しむ。

 

鶴木町から東京に戻った3日後。

東京の郷のもとに一通の葉書が届く。

「東京は春いちばん、白山の平泉寺

ではカタクリの花が咲き見所です」

という千桐からの誘いの葉書だった。

葉書から1ヵ月半後の4月の初め。

 

平泉寺の近くの本村で暮らす従妹

・松子(62歳)の屋敷で郷(47歳)

は、千桐と食事をとり、二階の部屋

にとめてもらうことになる。

 

 

 

千桐と郷

実のところ、カタクリの花の咲く、

咲かないは、千桐と郷にとっては

関心事ではなく、再会することが

大切なことであった。

 

千桐の案内で二階の部屋に入り、

郷はボストンバッグから金の入

った袋をだして座卓に置き、

桐は「すみません」と立ち、隣

の部屋に紙包みを置きにゆき、

郷の部屋に戻ってくる。

 

浴衣姿の髪をほどいた千桐は、

掛け布団をめくり「約束ですか

ら」と座る。郷は千桐をそっと

布団の上に寝かす。

 

 

郷は千桐に覆いかぶさり、からだの

なかに押し入ってゆく。顔に赤味が

さし、左右に顔が揺れ、山を越えた

からだから鳴き声があがり、我にか

えった千桐。

ごめんなさい」と言い、「どうし

て謝るの…」に千桐が言う。

「二年もこんなことしてないから」

「…わたしだけナッちゃうなんて」

「…まだ何も…差し上げてない」の

といい、ふたりは高揚を抱えたまま、

しばし無言のままやすんでいた。

 

 

 

千桐が目を開け、郷の視線と合う。

「心に決めてたんです」と、「わた

し、郷さんの娼婦になるって」と顔

を彼の胸、腹部、下腹部へ滑らせて

いき、娼婦の口の中に吸い込まれた

一瞬、下半身に快楽が走った。

 

 

 

 

はじめて結ばれた夜はつきない。

郷「欲しい?」

千桐「はい、さっきよりもっと

いっぱい」と、郷は千桐の中に

入り、ふたりはいっきにのぼり

つめた。

 

郷と千桐「渓流つり」

七月半ば。今井郷が鶴木町の千桐

に訪ねて来る数日前だった。

千桐は、鶴木の鮨屋「万楽」の主

人の時山(60歳前)と客の西村(

整骨医40代半ば)の渓流つりにア

カダン(赤谷)に出かける。

 

 

千桐は郷に渓流つりについて話す。

渓流に出かけたとき、「冷たくな

った足のことを忘れ、迷子の気分

になった」と言う。

渓流つりは、上流へと奥に入って

ゆき、「男のひとの狩りみたい」

で、「あんなふうにされると、魚

は逃げられないの」と興奮気味に

話す。

 

 

 

千桐はベッドの脇に腰を下ろし、郷

にパンツを脱がされる。

両の手を左右に支える千桐は、両膝

を広げ、渓流の奥の茂みから深い淵

に触れられてゆく。

千桐の顔はしだいに紅潮し、得もし

れない快い気持ちになってゆく。

郷は、男2人に案内された谷を、山

の下流から奥深い秘境に這入ってい

った。

 

 

 


千桐は快い感覚を伴い、「ベッドの下

に水が流れているみたい」という。

 

 

「透光の樹(生と性③)」につづく。

 

 

 

参考(メモ)

小説「透光の樹」の高木のぶ子

1946年生まれ。1984年「光抱く友よ」で

90回芥川賞を受賞。1995年「水脈」で第

34回女流文学賞を受賞。

1999年「透光の樹」で第35回谷崎潤一郎

賞を受賞する。

る2002年から芥川賞選考委員。

 

 

 

映画「透光の樹」

2004年10月公開映画。

原作者の高木のぶ子は第35回谷崎潤一郎賞

を受賞する。

監督:根岸吉太郎

原作:高木のぶ子

脚本:田中陽造

 

山崎千桐:秋吉久美子

今井郷:永島敏行(映像制作会社の社長)

山崎火峯:高橋昌也

山崎眉:中村瑠璃亜(中学生)

松子:吉行和子

鮨屋主人:寺田農

釣り仲間:田山涼成

 

 

 

2023.6.25

映画「怪物(棲む)(三都物語㉑)」ー男と女の物語(445)

2023.6.30

らんまん「タキ(四季)一生(三都物語㉖)」ー男と女の物語(450)

2023.7.2

街有樹「泉大津駅前(ロシア兵)三都物語㉘」ー男と女の物語(452)

2023.7.3

どうする家康25(岡崎「築山殿」夢・三都物語㉙)ー男と女の物語(453)

2023.7.4

映画「透光の樹(生と性)」ー男と女の物語(454)