美人画で知られた溪斎英泉と葛飾応為。

溪斎英泉と応為は同じ時代に浮世絵師と

して活躍。応為は葛飾北斎の娘になる。

 

ー葛飾応為ー

応為(生没年不詳)の美人画は、北斎、

溪斎英泉をしのぐ画を描いていた。

父の北斎も「美人画は阿栄(応為)に

はかなわない」と認めている。

 

父・北斎は、当初は勝川春朗と名乗り、

その後は葛飾北斎、画狂卍などと画名

(画号)を幾度も変えている。

「応為」は画号で、名は阿栄(おえい)

で、「応為」は、「おーいおやじ殿」

という俗謡の一節からとったという。

応為の作品・美人画のひとつに「月下

砧打ち美人図」がある。

 

 

葛飾応為の「月下砧打ち美人図」

 

ー葛飾応為の枕絵「つひの雛形」ー

葛飾応為が描いた枕絵に「絵本つひの

雛形」がある。

冊子の表紙に「紫色鴈高作 女性隠水

書 陰陽和合玉門栄」とある。

 

「つひの雛形」(全12図)は、男女の

つがいと女陰の「つび」とを懸けたこ

とばで、直訳すると「女陰の見本帖」

になる。

 

ー葛飾応為(枕絵)ー

応為が描く枕絵の「絵本つひの雛形」。

枕絵の屏風には「見開者大開 仕開小開

撰開者毛開」とあり、小文字で「紫色鴈

高」(ししきがんこう)の隠し落款があ

る。

落款の「紫色鴈高」こと北斎の娘・応為

の作品だとわかる。

 

葛飾応為の絵には「書き入れ」があり、

男は煙管を吸うひまもなく、女性に求

められている。

応為は、(性器をふくめて)ありのま

まをの姿を描いている。

 

 

絵本「つひの雛形」の第3図


 

 

艶本(中の巻)の画:溪斎英泉

 

一方溪斎英泉の画にはセックスのとき

の、性器の箇所がカットされており、

応為の絵を通して英泉の枕絵の隠れた

ところを知ることができる。

 

(溪斎英泉・葛飾応為の枕絵)

 

 

溪斎英泉画(艶本・第六図)

 

 

 

絵本「つひの雛形」の第7図

 

 

葛飾応為の枕絵には「書き入れ」がある。

女性「こしをかがめ きつくつき アア」

「いいこの子ハ」、「フンフンアレアレ」

「いいよフンフン」

と、女性が男の子を導いている。

そこで男の子「ごめんなさいまし」と、

添えたものがはいってゆく。

 

枕絵の景色は、浮世の夢のなかの景色で、

性は生なりと、まさにEnjoy Lifeで、

生を謳歌している。

 

 

ー浮世絵枕絵とジャポニズムー

溪斎英泉、葛飾応為の浮世絵師は、ともに

画を描いて生業(なりわい)としていた。

美人画と較べ枕絵では、溪斎英泉の方が、

応為より艶っぽく上手かった。

 

この頃風景画や美人画より、浮世絵枕絵を

描く方が10倍を上回る値段がつき、当時

のすべての浮世絵師は競って浮世絵枕絵を

描いていた。

 

明治維新後、日本の美術品、浮世絵は海外

に流失。当初枕絵を見た外国人には大きな

性器を描く場面に宗教(キリスト教など)

文化の違う人々には江戸の文化にはなじま

なかった。

 

その後ヨーロッパでジャポニズムがおこる。

画家ゴッホ、ピカソ、クリムトらが、浮世

絵の影響を受けて登場してくる。このとき

に溪斎英泉の絵は、ジャポニズムの影響を

あたえる源(もと)となる。

 

 

フランス美術誌(日本特集1886.5月号の絵表紙:溪斎英泉画)

 

 

参考(メモ)

<溪斎英泉(1791-1849)と時代>

寛政3(1791) 年  溪斎英泉誕生

           山東京伝50日・蔦屋筆禍         

寛政6(1794) 年  東洲斎写楽「役者絵」

寛政11(1799)  年    喜多川歌麿「ねがひの糸口」

文化元(1804)年  歌麿・豊国(初代)・蔦屋(二代)が筆禍

文化3(1806) 年  歌麿没

文化6(1809) 年  石川雅望『飛騨匠物語』(北斎画)

文化14(1817) 年    浅草寺(「山東京伝机塚」建立)

天保2(1831) 年  葛飾北斎「富嶽三十六景」 

天保13(1842)年    天保の改革

嘉永2(1849)年   葛飾北斎没 溪斎英泉没

 

 

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