ベッドの傍におかれていた艶本。
浮世絵の枕絵に魅せられると、夢の
ような景色を夢の中で見ることがあ
る。
艶本(戯作3巻上・中・下)に掲載
された浮世絵枕絵。
作者は「好亭主人」の式亭三馬で、
枕絵(春画)の作者は号が「淫乱亭」
の溪斎英泉。
ー艶本「上巻」ー
艶本は合せて3冊(合本)内の1冊の上巻。
上巻の扉の最初の画(P3)に漢文がある。
艶本の絵は文(戯作)と関係なく、絵の
頁の漢文によると「懸けた帯とふんどし
(糞怨屛)を共に解き「解帯」、「合肌
初抱」。そして「連理枝」となる。
「連理枝」はひとつの樹の別れた枝が結
合したものをいい、つまり「夫婦和合」
の象徴、縁結びをいい、この艶本の男と
女の物語のテーマが描かれている。
ちなみに扉の女性は紙をもっている。
次の頁(P4-5)の絵を見ると、この邸
の名前が「淫乱亭」とあり、男が笛を吹
き、小さな娘が行燈をもった女性が案内
され、男に逢う場面で物語の序になる。
艶本には枕絵(春画)が6枚(六場面)
ある。
この邸にて起こる最初の枕絵(①P6-7)。
続いての頁にも枕絵(②P8-9)がある。
さらに浮世の夢のなかの枕絵がつづく
③の場面(P10-11)。
次いで④の場面(P12-13)。
さらに⑤の場面
屏風にある「浸酒呑 莫愁」・「閨中自
有傳」。
自らは寝室(ねや)「閨中」にて「浸酒
呑 莫愁」を傳(つた)えるという。
最後の➅の場面
六の場面の次の頁には、「上の巻」の
最後の絵と物語文がある(P18-19)。
ー溪斎英泉「枕絵(帯解)」ー
艶本の⑤の場面の屏風にある「浸酒呑
莫愁」・「閨中自有傳」。
この浮世絵枕絵は、自らは寝室(ねや)
「閨中」にて「浸酒呑 莫愁」を傳(
つた)えるという。
「浸酒呑」は(酒を吞み浸たる)で、「
莫愁」。
「莫愁」は、中国の故事の(男とかかわ
ってはならない女性(李莫愁)をいい、
この莫愁を憂愁に懸けている。
この枕絵の場面を
(酒を吞み浸たり、うれえもだえる)
と屏風(漢詩)にも掛けている。
ー溪斎英泉と浮世絵ー
溪斎英泉(1791-1848)は江戸時代
後期の浮世絵師で、英泉の描いた春画
の原画1枚は、現在100万円以上の値
がつく。
値打ちというものは、人によって違う
ものなのだが、わからないものだ。
フランスの美術誌(日本特集1886.5月
号)の絵表紙に掲載されたのが溪斎英泉
の浮世絵美人画であった。
溪斎英泉は、天保の改革で厳しく統制
があり、これ以後おもに合巻(艶本)
や滑稽本の文筆業に専念する。
2023.3.28
2023.3.29
2023.3.30