紀州の山の奥深い高野山。

周囲1000mの山々に囲まれ、

修行道場として、空海により

開かれた日本の仏教の聖地で

ある。

 

高野山と泉鏡花「高野聖」

高野山は、八つの峰々に囲まれた

盆地状にあり、嵯峨天皇から空海

に下賜された仏教の聖地。

紀伊山地の霊場の地を舞台に描か

れる「高野聖」。

泉鏡花(1873-1939)は金沢

市で誕生、本名は泉鏡太郎。

3歳のときに、母はやゑを出産直

後に亡くなる。

このときに父とゴータマ・シッダ

タの生母・摩耶夫人像に詣り、鏡

花は終生、摩耶を信仰続けること

になる。

明治22(1889)年に尾崎紅葉の

『二人比丘尼 色懺悔』に感動し、

紅葉を訪ねて上京。その後『夜行

巡査』、『外科室』で評価を得た

のち、鏡花27歳のときに書いた

作品が『高野聖』(明治33年・

1990年)で、若い僧の煩悩を描

く。

「高野聖」

同宿することになった上人は、若

い頃のことを青年僧に話す。

若い僧が山奥で道に迷い、たどり

着いた一軒家に美しい女がいた。

女に誘われるままに崖の下の谷川

へ降りてゆく。

二の腕を洗っていると、流してあ

げるといわれ、裸にさせられる。

水をかけて、綿のようにさすって

くれる。ひたとくっつく体、まる

で、花びらのなかへつつみこまれ

るようだった。

 

 

 

 

女への煩悩に悩み、お経を唱えて

ひと夜を過ごす。

翌朝、山を降りかけた。女への未

練から、僧の身を捨て、戻ろうと

したその途中だった。

ある男から女のことを教えられた。

「嬢様は如意自在、男はより取っ

て、飽けば息をかけて獣にするわ」

と言われる。

そして、「妄念起こさず早うここ

を退(の)かっしゃい」

「命冥加なお若いの、きっと修行

をさっしゃいませ」と、ひとつ背

中を叩かれた。

翌朝。上人を見送った青年僧。

上人の若い頃の話を聞いた青年僧

は、高く坂道を登る聖の姿があた

かも雲に駕して行くように見える

のである。

 


 

小説「高野聖」は、男にとって

こわい話だ。

女は僧を獣にかえなかったのは、

僧がからだを求めず、優しいひ

とと感じたからかなのか。

男を見る目が妙に妖しい女性。

このときこの麗しい女性(ひと)

と恍惚を味わいたい。

生と性のはざまにある煩悩。

男と女の生(性)を描いた「高野聖」。

 

 

高野聖(橘小夢画)

 

現在、高野山には奥の院はじめ真言宗

総本山金剛峯寺がある。

 

 

高野山奥の院(和歌山県伊都郡高野町)

 

金剛三昧院など117ヵ寺がある高野

の町、「紀伊山地の霊場と参詣道」

として世界遺産に登録されている。

 

 

 

 

 

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