皆さん、こんにちは!kazuです
自己紹介
製薬企業で長年医薬品開発に携わっていましたが、50代目前でステージ4の腎臓がんに罹患しました。
医薬業を何も知らない人が単に夢物語を語るのではなく、医薬に長年携わっている者がステージ4の癌患者となって、医療の限界を十分に理解し、何名かの療友の死など悲しい現実に触れてもなお絶望など全く無く、希望を持って日々を幸せに感じて生きている姿を書くことを目的としているブログです。
また「患者ファースト」の観点から長年医薬業に携わる立場として、ブログを通じてがん治療に対する「正しく有益な情報」を提供し、皆さまのがん治療の理解を深めることでお役に立ちたいとも考えております。
治療歴
2017年7月に半年以上咳が止まらない自覚症状がきっかけで腎臓がん(腎細胞がん)が見つかりました。
発覚時には既に肺に無数のがんが転移しており(ステージ4)、また原発巣の腎臓の腫瘍は10cmを超える大きさでした。
同8月に原発巣の左腎臓を除去。
同11月から当時未承認だった「キイトルーダ+インライタの併用」の薬物療法の治験を開始しました。
化学治療により肺の腫瘍は消失or縮小となり、良好な治療経過だと思ったのも束の間、2019年1月に左半身痙攣麻痺でぶっ倒れて救急搬送。
MRI検査により、新たな脳転移が原因であることが発覚しました。
同2月に放射線治療(サイバーナイフ)を行い、幸い脳の腫瘍はほぼ消失しました。
また痙攣といった後遺症も、薬物治療により約半年で治まりました。
キイトルーダの副作用である「甲状腺機能障害」や、インライタの副作用である「手足症候群」、「下痢」に悩まされながらも、主治医との協力の基、別の薬による対処治療や減薬・休薬の組み合わせてQOL(生活の質)を維持出来るレベルを上手く調節しております。
2019年12月にはキイトルーダの治験規定投与回数35回が終了。
その後はインライタ単独投与としての治験(現在は製造販売後臨床試験に移行)を継続中で今に至ります。
現在は治療と仕事を両立しながら6週間毎の腫瘍科の診察と、約3カ月毎のペースでMRI検査、CT検査で肺と脳の定期観察を実施中です。
<詳細はプロフィール参照>
因みにアメブロに「デザイン」という機能があるのを知って、ちょっと使ってみました。
さて、本題です。
皆さん「PCR」って知っていますか?
コロナ渦になって、小学生でも知っている単語。
多くの方は「知っている!」と答えるでしょう。
そして「新型コロナウイルス感染症の検査方法」と答える方が大半でしょう。
一般の方は、この認識で十分です。
でも、本当の意味での「PCR」を理解していますか?
特にマスコミなどで「出来る限り多くの人がPCRを受けるべきだ!」などと言っている人(自称専門家含む)を見ていると、本質を本当に理解しているの!?と疑問を持つことが多々あります。
「感度」、「特異度」、「疑陽性」、「偽陰性」、「陽性と判定された人の行動制限」、「行動制限による経済的影響」等々、きちんと理解した上での発言ならば良いのですが、これらを理解せずに主張しているのならそれは「科学的」な議論ではなく、単なる感情論。
まあPCRに限らずコロナ渦に関する話題は個人的に色々と思うことがあるのですが、ここでお堅い話を続けるとこれ以上読む方はいないと思われるので(笑)、今日はちょっとPCRに関わるゆるい話をしようと思います。
先のとおり「PCR」は何か?と聞くと、
「新型コロナウイルス感染症の検査方法」
と答える人が大半だと思います。
しかし、この回答は半分は正解だけれど、半分は不正解。
これは、「車って何?」と聞いて
「スカイラインGT-R!」と答える様なもの。
確かに間違いではないが、「車とは何か」に対する本質的な回答では無いですよね。
ちょっと専門的な内容を含みますが、PCRとはウイルス感染の検査や、DNA型鑑定(遺伝子鑑定)などに使われる、微量の(特定の)RNAやDNAを増幅する技術を指します(PCR法ともいわれます)。
PCR法は、ポリメラーゼ チェーン リアクション(Polymerase chain reaction)の頭文字を取ってPCRと呼ばれております。
ポリメラーゼはDNA合成酵素、チェーンリアクションは連鎖反応(連続した反応)を意味します。
PCRを日本語に訳すと「DNA合成酵素連鎖反応」といったところでしょうか。
実は、このPCR法は1983年に米国人のキャリー・マリス(Kary Mullis)博士がアイデアを思いつき、後に分子生物学(遺伝子工学)における歴史を変えた画期的な技術となりました。
ここで、DNAとは何ぞや!?という疑問を持つ方がいるかも知れません。
皆さん、「遺伝子」という言葉は聞いたことがあると思います。
人間も含めた生き物は多くの「細胞」が組み合わさって出来ています。
たとえば、筋肉は筋肉の細胞から、骨は骨の細胞からできています。血液や脳もすべて細胞です。
これらの細胞を作り、働かせるためには正確な「設計図」が必要です。
その設計図となるのが、「遺伝子」です。
この遺伝子という正確な設計図があるからこそ、「人間」から「鳥」が生まれるようなことは起こらない訳です。
(ちなみに「がん」は遺伝子に生じた変異が原因で起こる病気ですが、これはまた別の機会に)
この遺伝子の本体となる物質がDNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれるものです。
(DNAの二重らせん構造のイメージ図)
DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)と呼ばれる4種類の物質(塩基)が長く連なってできています。
この物質の並び順は、それぞれを構成する塩基の頭文字A、T、G、Cで表した「文字列」で表すことができます。
(例えば、GATCCCATTGCAGACT・・・・・など)
この文字列のことを「塩基配列」といいます。
遺伝子の情報は塩基配列によって決まり、その情報に従って体内で「タンパク質」が作られます。
因みにスマホやパソコンなどの複雑なプログラムは、元をただせば単純に「0」と「1」の2つの電気信号が組み合わさって出来たものであることを知っている方も多いと思います。
人の体も未だに大部分が解明されていない複雑な構造・仕組みではありますが(完全に解明されていれば、がんの特効薬も作れることでしょう)、元をただせば単純な4つの記号の組み合わせの設計図から出来ているということです。
つまり、人を含めた生き物の構造・仕組みを解明するためにはその設計図であるDNA配列を知ることが必須となります。
しかし、人の体からDNAを一部取り出しても、あまりにも小さく微量であるためそのままでは設計図の解析は出来ません。
例えるなら、道端に落ちているお札が千円札か、二千円札か、五千円札か、はたまた1万円札かを上空10kmの飛行機から判別しようとするくらいに無理な話です。
(そんな高度なら、そもそも道端にお札が落ちているかどうかも分かりません(笑))
でも、仮にですがその道端に落ちているお札を、縦横10kmという、とてつもない大きさのコピー用紙に拡大コピーしたらどうでしょうか?
(現実可能か否かはともかくとして)これなら、上空10kmの飛行機からでも、どのお札か判別出来ます。
PCR法とは正にこの様なことを行う方法。
つまり、微量で存在すら分からないレベルのDNAをとんでもないくらいに大量にコピーして、解析可能なレベルまで増殖させる技術のことを指します。
ここで、(専門的にはなりますが)ちょっとだけPCR法の仕組みについて解説します。
PCR法の仕組みは、自体はとてもシンプルです。
増やしたいDNAが含まれたサンプルと、DNAの材料となる物質(アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4つの塩基)、そしてDNA合成酵素を加えた混合液を100℃近くまで温め、60℃くらいまで冷まし、また70℃くらいまで温める。
ほんの数分で済んでしまう作業で、この酵素反応で1本のDNAが2本になります。
では何が画期的だったのかというと、「DNAを連続で繰り返し増幅させることで膨大な量のDNAを作ることが可能になった点」です。
先の酵素反応を何度もくり返せば、2本が4本に、4本が8本に、8本が16本に……という具合に倍、倍になっていきます。
計算すると分かるのですが、これを30回繰り返すと、なんと元の約10億倍になります!
自動で温度を上下させる機械を使えば、ものの1時間でDNAが10億倍にもなるのです。
10億倍が如何に凄いことか、ピンとこない方もいるかも知れませんが、分かり易く株式投資で例えると・・・
「私が発明した株式投資自作プログラムを用いると、1時間で投資金額が10億倍に増える!」
「つまり、1円が1時間で10億円になる!」
といった、実はとんでもない発明なのです
「新型コロナウイルス感染症の検査方法」では、人の唾液等から採取したDNAを増幅して解析し、これが既に分かっている新型コロナウイルスの塩基配列と一致するか、否かで体内に新型コロナウイルスがあるか否かを判別しております。
注:コロナウイルスに関してある程度調べている方は、
「いやいや、新型コロナウイルスのゲノム構造って、DNAじゃなくてRNAじゃね!?説明間違ってないか?」
と思われるかも知れません。
確かにコロナウイルスの構造は(DNAとは対の構造である)RNAしか含まれていません。
(なので、新型コロナウイルスの「DNAを増幅する」とはあえて意図的に書いていません)
厳密には新型コロナウイルスのRNAを逆転写酵素を用いてRNA⇒DNAを作ってPCRを行う、いわゆるRT-PCR(reverse transcription PCR)を用いておりますが、専門的なことを書くと皆続きを読まなくなるので(笑)、かなり説明を簡略化している点はご了承下さい。
このPCR法の技術は今では産業面で幅広く応用され、先の「新型コロナウイルス感染症の検査方法」のみならず、医学、薬学、医療診断、考古学、犯罪捜査など途方もなく世の中で使われている技術です。
例えば、犯罪捜査で行われる「DNA鑑定」、或いは親子の関係を科学的に証明する「DNA鑑定」、これらは全てPCR法によるものです。
また、最近話題になったアサリ産地偽装問題。
「熊本産」とうたったアサリ31パックの内、30パックから海外(中国)産が認められたと報道されましたが、これもPCR法によるアサリのDNA鑑定から判明したものです。
また、がん患者では聞いたことがある人も多い「遺伝子パネル検査」。
これも、PCR法です。
また、分子標的薬は特定の遺伝子の発現をターゲットにした薬剤ですが、そもそもがんの原因となる「特定の遺伝子」を調べた方法、これもPCR法によるもの。
また、人類の祖先は?動植物の進化は?といった疑問に科学的な証拠をもたらす技術として、例えば何万年も前に存在したネアンデルタール人の化石を調べるのにPCR法が使われています。
この様に、ゲノム解析/DNA・RNA・タンパク質の機能解析/遺伝病や感染病の診断・治療/生命進化の解析/犯罪捜査等々、実に幅広い分野でPCR法が用いられております。
実はPCR法が「世界最先端」の技術として世の中に出始めた時(1980年代後半)はちょうど私が学生だった頃で、このPCR法を使って、とある酵素の遺伝子配列の解析研究のお手伝いをしていました。
今では新型コロナウイルス感染症の検査では唾液や鼻咽頭ぬぐい液のサンプルを採取してから数時間で検出し判定することができますが、当時は作業がめちゃくちゃ大変でした。
昔は、DNAの材料となる(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)は放射能同位体元素でラベル化(標識化)したものを用いなければならず、実験する際には被爆防止のため放射線を遮断する鉛入りの遮蔽版を用いて実験していました。
(現在では蛍光物質で標識化するため、お手軽且つ安全に出来ますが、当時はとても大変でした)
その作業は「放射線管理区域」という場所で作業するのですが、気が付かない内に放射線同位体が入った微量の試薬が跳ねて着ている白衣に付いてしまい、管理区域から出る際にガイガーカウンター(放射線測定器)で汚染の有無をチェックするのですが、「ピー・ピー」と警告音を発することが何度かありました。(そうしたら、白衣は新しいものに着替えて古いものは交換です)
このように苦労して調製した試薬を用いてPCR法による酵素反応を行い、その後ゲル電気泳動させたものを暗室で写真感光材に感光させます。
その写真を人の目で見て塩基配列を判断し、「A,A,G,C,T,A,G,C・・・・・・」と100配列くらい地道に読み取ってを繰り返し行っていました。もう30年以上前の話で詳しくは覚えていないのですが、100配列読み取るだけでも多分数日がかりだったと記憶しています。
今は新型コロナウイルス感染症の検査でPCR法が誰でも簡単に短時間(早ければ1時間以内!)で判別出来ることを考えると、技術の凄まじい進歩を感じずにはいられません・・・
さて、ちょっと堅苦しい前置きが長くなりましたが、実はここからが本題です!
このPCR法、分子生物学の世界では「生命科学の革命」と言われるくらいインパクトのある発明であり、PCR法を発明したキャリー・マリス(Kary Mullis)博士は1993年にノーベル化学賞を受賞しました!
その偉大なるキャリー・マリス博士の写真がこちら。
ええっと、宇宙人ではありません・・・
これはちょっとお茶目というか、おふざけが過ぎていますね・・・
では真面目な写真として、ノーベル賞受賞の連絡を受けた時の取材陣に対応した時の写真をご覧ください。
うん、こっちは目に貝殻付けていなくて真面目ですね!
じゃないだろ!!
念のために言うと、(取材とは無関係の)サーフィンしている写真を張り付けた訳では決してありません。
ノーベル賞受賞の電話が来た当日(その後取材があるにも関わらず)友人からサーフィンに誘われて取り合えずサーフィンに出かけ(笑)、取材陣に「サーフィンに行くから来て」と言って取材を受けて、この写真を撮影したそうです。
皆さん、だんだんとキャリー・マリスさんの変人さ偉大さが分かってきましたね
(もう、「博士」とは呼ばずに「さん」づけにします(笑))
そう、私も過去には「趣味は研究、本業はパチプロ」と後輩にうそぶいたこともありましたが、そんな私と比較するのもおこがましい、正真正銘のぶっ飛びサイエンティストなのです!
写真から分かる通り、彼はサーファーです。
但し日々の気分転換として波と遊ぶだけのサーファーではなく、キャリー・マリス博士は正にリアルサーファー。
リアルサーファーとは、サーフィンの腕前がどうのこうのではなく、彼の生き方がサーファーライクなのです。
まず一般社会の枠にははまらない。
高価な物を所有して自分の権威を高めようとしない。
そして女性が好きで、酒が好きで、パーティーが好き、そしてドラッグも好き!?(と自ら公言しています)。
そう、彼はサーファーでありアウトローなノーベル賞受賞者なのです。
マリスさんはバイオベンチャー企業であるシータス社に入社し、そこでPCRの発明します。
シータス社がDNA合成ができる人材を募集した際にマリスさんが応募したのですが、マリスさんは過去にいろんな職種(レストランやコーヒーショップなど)を経験してきてはいるが、なんと本格的にDNA合成や核酸の化学を勉強した様子はなかったそうです。
ただ、――全く違う分野のことなのですが――、宇宙に関する論文をNature誌に単名で発表していて、念のため会社で確認したところ一応まともな論文だった(笑)ということで、多少不安はあったものの、彼を雇い入れたそうです。
因みにマリスさんが宇宙物理学ではなく、生化学を研究することを選択した理由として、後に自叙伝でこう述べております。
「私が生化学を選らんだ理由には、もう一つ不純な動機もあった」
「宇宙物理学はきわめて抽象的な話が多い」
「22歳の女性に対して会話が成り立つはずもない」
「生化学ならたとえば、クスリの話ができる」
「MDAの効果って知っているかい?これを飲むとなんとなく身体が熱くなり、服を脱ぎたくなるんだよ」
「それからゆっくり楽しい時間を過ごすことができる。という具合に」
・・・うん、明らかに欲望に誠実な方ですね(笑)
マリスさんは、シータス社に入社してから1982~1983年にかけて無事にDNA合成の役割を果たしていましたが、次第に周囲の研究室と折り合いが悪くなり、上司が間に入って仲裁を果さねばならなくなったようです。
そんなマリスさんは1983年、ガールフレンドとの夜のドライブデート中に突然PCRの構想を思いついたそうです!
(ちなみに車はホンダシビック)
しかしマリスさんのアイデアは良かったが、彼自身は口ばかりで、実験データで示すことが出来なかったそうです。
理由として、当時のPCRは加熱と冷却を手作業で行い、熱が冷めてから、タイミングよく試薬を加えなければならなかったのです。
そのサイクルを十数回も繰り返す繊細でとても大変な作業であったため、前述のマリスさんの自由奔放な性格には合わなかったのでしょう。
マリスさんの実験は、試薬を入れ忘れたりといった凡ミスが多かったようです。
とかく研究室では、アイデアが良くてもデータが伴わなければそれは証明されていないということで、自然消滅してしまうのが常であります。
ホテルで行われた社内発表会ではマリスさんは議論の末に(実験データを皆に批判されて)暴れて、ホテルの警備員に連れ出されるという一幕もあったそうです。
節目が変わったのは、上司が日系人テクニシャン(Randy Saiki)を雇ったこと。
この方は細心の注意を払って実験を行う、いわゆる“職人肌”の人でした。
そしてRandy Saikiさんは前人未到の実験に果敢に挑戦し、ついに1984年秋にPCRを最初に実現して見せました。
これにより、ようやく仮説だったマリスさんのアイデアを実験で実証することができて、そのデータにより最初の論文がScience誌に発表されました。
その後PCR開発のプロジェクトは順調に進んのですが、そんな中マリスさんは1986年9月に1万ドルの社内特許報奨金をもらって退社しています。
それは、彼の周囲の同僚から見れば、“やんちゃなマリス”の体(てい)の良いクビ切ともとれる退社だったそうです。
その後、マリスさんはあちこちのバイオベンチャーへ就職しますが、次々と早期に辞めてしまったそうです。
まあ今までの説明でも想像できますが、どうも自由奔放で周囲と上手くいかない人だったようです。
しかしながら、そのうち世界はついにPCR技術の凄さを知り、その利用は基礎研究へ広がり、1987年には(巨大製薬企業である)ロシュ社がこのPCR技術を高額(当時の金額で約200億)で購入するに及んでマリスさんの運の潮目は変わります。
マリスさんはPCR概念の発案者として世界各地から招待講演の声がかかり忙しくなります。
そして、ついに1993年のノーベル賞受賞へとつながったのです。
しかし、ノーベル賞を受賞しても彼の自由奔放さは変わりません。
その後の彼の幾つかのエピソードを紹介しましょう。
エピソード1:ノーベル賞受賞に際して
マリスさんはノーベル賞受賞者の中で最も論文数が少なく、また(研究では)無名の大学出身です。
当時はノーベル賞を確実視されていた一方、自身の言動(かつてLSDやマリファナを使用していたことを公言するなど)によって審査員らから危険人物扱いされるため、ノーベル賞には縁が無いと自身は思い込んでいたそうです。
ノーベル財団から受賞の連絡を受けた際には「もらう!もらうよ!」と大喜びしたそうな。
エピソード2:(ノーベル賞と同年に受賞した)国際科学技術財団による日本国際賞受賞に際して
「その手紙は日本国際賞に私が選ばれたとの知らせであった」
「日本国際賞の賞金は5000万円だった」
「私は日本に向けて出発した」
「授賞式では天皇と皇后に会うことができた」
「日本の皇后(美智子妃殿下)に向かって「スウィーティー(かわい子ちゃん)」と挨拶したのはたぶん後にも先にも私だけだろう」
「皇后は私の無礼に対してもまったく寛容な態度を示してくれた」
エピソード3:ノーベル賞受賞前にホワイトハウスに招待された際のこと
「ノーベル賞のアメリカ人受賞者はスウェーデンに行く前に、ホワイトハウスに招待された」
「(当時の)クリントン大統領は、昔マリファナのジョイントを吸ったことがあるとの疑惑を報道された」
「そのとき彼は、確かに口にはしたが吸い込みはしなかった、と答えている」
「そこで私(マリスさん)の質問はこうだ」
「大統領、あなたがジョイントを吸わなかったのを見て、回し飲みしていた仲間たちは、もう一度あなたにジョイントを回してくれましたか?」
「かわりにこう言いませんでしたか『おい、ビル、それって1オンス400ドルもするんだぜ、もったいないじゃないか』って」
「きっと彼はニヤリとせずにはいられなかったと思う」
エピソード4:ノーベル賞授与式に際して
「授与式には「彼女・前妻と2人の息子」を連れて参加」
(ちなみに4回結婚しています。PCR法のくっついたり、離れたりを私生活でも実践(笑))
エピソード5:ノーベル賞授賞式の晩餐会に際して
「ノーベル賞授賞式にてカール・グスタフ スウェーデン国王夫妻から晩餐会の歓待を受けた際、当時タブロイド紙を賑わせていたヴィクトリア王女を話題に、マリスさんはスウェーデン国王夫妻に対して」
「16歳の女の子なら、少し我慢するだけですぐに忘れますよ、大人になる為の良い教訓になるはずです」
「なんなら年頃の王女に私の息子の一人を婿として娶ってください」
「交換条件として領土の3分の1を私に頂きたい」
と提案した。
・・・まあ、どれもこれも奇想天外な発言・行動ですよね。
これ以外でも、学界の主流から外れた主張を繰り返すことが多く(例えばフロンガスによるオゾン層破壊や地球温暖化を否定することなどでも知られる)、「変人」として見られていたそうです。
そんなマリスさんも、2019年に鬼籍に入られました。
奇想天外な人物ではありますが、一方でPCR法という生命科学における革命ともいうべきとてつもない発明をした偉大な人でもあります。
一つ思うのは、もしマリスさんが日本人で国内で研究していたと仮定したら、とても研究者としてまともに社会で受け入れられなかっただろうということ。
そして、PCR法が実現されるにはもっと時間を要したであろうことが容易に想像できます。
その結果、ゲノム解析/DNA・RNA・タンパク質の機能解析などの開発が遅れて、今世の中にあるがん治療薬はもしかしたらまだ開発されていなかった可能性もあります。
つまり、今がん治療薬の恩恵を受けている自分を含めたがん患者の運命が大きく変わっていたかも知れません。
米国ではマリスさんのような変わり者を社会(会社)が受入れ、上司がサポートし、またテクニシャンを付けてマリスさんのアイデアを実験で実証するまでに至る米国の研究環境の懐の深さが、日本と米国の基礎研究力の差でもあるのかな、と感じるところではあります。
最後に、マリスさんのエピソードを1つ。
「メディアは科学者の思いのままだ」
「科学者の中には、メディアを実にうまく言いくるめる能力にたけた人々がいる」
「そしてそのような有能な科学者たちは、地球を守ろうなどとは露も思っていない」
「彼らがもっぱら考えているのは、地位や収入のことである」
これに関しては個人的には共感できる部分のある文言です。
まあ、現実には多くの科学者は至極真っ当だと思いますが、一部はこういった人がいるのは事実。
例えば「科学者」の部分を「インチキがん治療を行う医師」や「コロナを扱うワイドショーでトンデモ発言を行う自称専門家」に、また「地球」を「人の命」と言い換えてみれば納得出来るでしょう。
治療中の方は良い効果が得られますように!
経過観察中の方は、良好な状態がずっと続きますように!
こちらもクリック宜しくお願いします!