「手術・退院後~薬物治療開始までの経緯」(その2)<治験の選択の話> | 【ステージ4:治療6年目突入】腎臓がんと闘うスロッターkazuのブログ

【ステージ4:治療6年目突入】腎臓がんと闘うスロッターkazuのブログ

2017年 50歳で腎臓がん&肺転移を告知されました(追記:51歳で脳転移再発、55歳で骨髄転移・骨転移を再々発)
<「癌になることは不幸ではない!」製薬企業で長年医薬品開発を生業とした経験から、前向きに治療に取り組み、日々を幸せに過ごすことを伝えるブログです>

皆さん、こんばんは!!

kazuです。

 

今日は前置きは無く、いきなり本題に(#^^#)

 

 

ブログ「手術・退院後~薬物治療開始までの経緯」(その1)(泌尿器科から腫瘍科に転科した話)の続きの話です。

 

前回の泌尿器科の診察から4日後に、初めて腫瘍科を受診しました。

ちなみに、腫瘍科の診察は妻と一緒に受診しました。

(治療方針が決まってからは、私一人で受診しています)

 

腫瘍科のA医師(今の主治医)の診察は、衝撃の一言から始まったのを今でも覚えています。

A医師:

「初めまして、kazuさんですね」

(パソコンで、私の電子カルテを探しながら)

 

「ええと、kazuさんは、転移がない方ですよね?」

 

kazu:

(心の中で)「ええっ!!!」

思わず妻と顔を見合わせた後で一言。

「いえ、肺に転移しています」

 

A医師:

「(電子カルテを見つけて)・・・ああ、そうでしたね。失礼しました」

 

・・・もう、この時点で私は主治医に対して不安だらけ(笑)

 

心の中で

 

「事前に絶対カルテ見ていないだろ!」

 

「大丈夫か?この主治医は!」(; ・`д・´)

 

と思っていました。

 

しかし、今思えば主治医の失言はこの1回きりでした(笑)

今までの診察のやり取りを通じて、主治医は(製薬業に努める私から見ても)経験と実力と兼ね備えた信頼できる医師であると断言できます!

 

最初の診察の話に戻ります。

主治医から、肺転移した腫瘍について、主に3つの説明がありました。

 

まず1点目は、摘出した左腎臓がんの組織検査を行った結果、がんのタイプは「淡明細胞型腎細胞がん」という、腎臓がんの中で約8割近くを占める主要なタイプであったこと。

 

2点目は、肺転移した腫瘍は肺全体にちらばっており、手術で全て摘出することは出来ないため、外科的治療は行わずに薬物投与による全身療法を行うこと。

(これは、以前泌尿器科でも同じ説明を受けていました)

 

3点目は、今後の薬物治療は、現在腎臓がんの標準治療で一次治療薬として承認されている「分子標的薬」という、がんの血管新生を阻害する薬を用いることです。

 

この説明のあと、3点目の治療法に関して追加の提案がありました。

それは、現在腎臓がんで今まで化学治療を行ったことが無い患者に対して、(まだ承認されていない)新しい薬の臨床試験(いわゆる「治験」)が募集されており、もしkazuさんが希望するなら治験を受けられるかも知れない、ということでした。

 

治験の具体的な内容を確認すると、治験は2つの群(治療法)に分かれていて、一つは「免疫チェックポイント阻害剤」(キイトルーダ)という薬と「分子標的薬」(インライタ)の薬との併用治療であること。

もう一つは、現在ファーストラインの標準治療薬である「分子標的薬」(スーテント)であることです。

 

なお、2つの内どちらの治療法になるのかは製薬会社で無作為に決めるので、患者が選択することは出来ないこと、

また治験の治療費や検査費用は製薬会社が負担するので、原則無料であることの説明を受けました。

(但し、がん治療以外に使用する薬(例えば、副作用を抑えるための薬)は自己負担(3割負担)です)

 

主治医から、治験の説明を一通り受けた後で、

「kazuさんは治験に参加する意思はありますか?」

と聞かれました。

 

この場合、恐らく殆どの患者さんは即答はせずに、一旦持ち帰って検討すると思います。

 

しかし、私は即答で

「治験を希望します」

と返答しました。

 

即決した理由は主に4つです。

1点目は、「治験」の仕組みやメリット・デメリットについては、説明を受けるまでもなく製薬会社勤務という仕事柄、理解していたこと。

 

2点目は、当時腎臓がんの1次治療で承認されていなかった免疫チェックポイント阻害剤(後にノーベル賞を受賞した抗PD-1抗体)をいち早く使いたかったこと。

 

3点目は、「免疫チェックポイント阻害剤」と「分子標的薬」について、何れも既に世の中に出回っている薬のため(未承認薬と比較して)安全性が確認されており、また効果が期待出来ることを事前に知っていたこと。

 

4点目は、高額な薬代が治験では実質タダになること。

ちなみに、当時「免疫チェックポイント阻害剤」(キイトルーダ)の薬代は年間(薬価ベースで)約1400万円、「分子標的薬」(インライタ)が年間約100万円の計1500万円です。

今の「国民皆保険制度」では原則医療費は3割負担なので、実際に1500万を払う訳では無く、また高額医療費制度を利用すればさらに減額されますが、それでも(私の場合)最低でも年間60万以上の医療費を負担することになります。

 

今挙げた4つの理由の中で、特に決め手となった理由が2つあります。

1つは、当時画期的ながん治療薬と言われていた「免疫チェックポイント阻害剤」を使いたかったという点。

もう1つは、がん保険に加入していなかったことから、高額となるがん治療費の負担をなるべく抑えたかったことでした。

 

但し、1点目の免疫チェックポイント阻害剤(+分子標的薬)の群が選ばれる確率は先に述べた通り50%であり、スーテントの群になる可能性も当然有り得ます。

 

しかし、仮に免疫チェックポイント阻害剤の群から外れたとしても(治験を選択しない場合に受けることになる)スーテントの治療費が実質タダで受けられるので、どちらの群に転んでも治験を選択する方が(私にとっては)メリットが高い!と思った次第です。

 

あと一つ。

3点目で「免疫チェックポイント阻害剤」と「分子標的薬」について事前に調べていたと書きましたが、実は手術を行う前に泌尿器科の主治医から手術後の薬物治療は分子標的薬(スーテント)か、場合によっては免疫チェックポイント阻害剤が使える可能性が有ることを言われていました。

 

最初に説明を受けた時は

「免疫チェックポイント阻害剤って何?」

「分子標的薬って何?」

という状態で、腎臓がんの薬物治療のことは何も知りませんでした。

(製薬会社勤務だからといって、世の中に出回っている全ての薬を把握している訳ではありません。特に私の場合、それまで癌に関わる研究はしたことが有りません)

 

そのため、これらの治療薬について家に帰ってからインターネットで調べまくりました。

 

治験薬で用いる免疫チェックポイント阻害剤は、実は腎がん以外の領域で既に米国や日本で承認・市販されている薬であることが分かりました。

既に承認されているということは、(他領域で)がんに対する薬の効果が認められていること、また安全性がきちんと評価されていることが理解できたので、安心して治験を受けようと思いました。

 

これが、今まで人に1度も人に投与されたことがない未承認薬で、効果もやってみないと分からない、副作用の出方もやってみないと分からないという治験薬だと、(仕事柄)治験のことを理解している私でも、ちょっと躊躇して治験参加は簡単に決められなかったと思います。

(がんが全身に転移して猶予が無い状況なら話は別ですが)

 

注:専門的な話になりますが、「安全性が評価されていること」と「副作用がない」ということはイコールではありません。

全く別の話なので誤解なさらない様にお願いします。

過去ブログで何度か触れていますが、そもそもどんな薬でも必ず副作用はあります。

(副作用はあっても体に症状が出ない事も当然有ります)

問題は副作用の重篤度合いと頻度になります。

 

さらに、治験を行うと決めた後で調べて分かったことがあります。

当時は腎細胞がんの1次治療で免疫チェックポイント阻害剤は未承認でした。

しかし、2次治療では(キイトルーダと同じ)免疫チェックポイント阻害剤であるオプジーボが既に承認されていました。

 

二次治療で承認されている薬なら、1次治療の腎がん患者にも絶対効果が有るはずだ!ということは仕事柄ある程度予測出来たのと、ノーベル賞に匹敵する画期的な治療薬であるという話も聞いていたので、効果に期待も込めて治験を受けようと思いました。

(その後、抗PD-1抗体が本当にノーベル賞を取るところまでは予想していませんでしたが)

 

注:理解されているとは思いますが、「腎がん患者にも絶対効果が有るはずだ!」は、「全ての腎がん患者に効果がある」という意味では有りません。

全ての腎がん患者に効果が全く無い、ということはまず無いだろうという意味です)

 

これまで製薬会社で医薬品開発を行っていて、長年プライベートをかなり犠牲にして仕事をしてきたと自分では感じていましたが、腎臓がんの治療を行うにあたり、初めてプライベートで仕事の知識が役立った気がします(笑)

 

さて、これで無事に治験開始!かと思いきや、

話はスムーズに進まず、また紆余曲折がありました。

 

それは、また次回にお話致します。

 

その3に続く>