「手術・退院後~薬物治療開始までの経緯」(その3)<甲状腺疾患の「橋本病」に罹患していた話> | 【ステージ4:治療6年目突入】腎臓がんと闘うスロッターkazuのブログ

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2017年 50歳で腎臓がん&肺転移を告知されました(追記:51歳で脳転移再発、55歳で骨髄転移・骨転移を再々発)
<「癌になることは不幸ではない!」製薬企業で長年医薬品開発を生業とした経験から、前向きに治療に取り組み、日々を幸せに過ごすことを伝えるブログです>

皆さん、こんばんは!!

kazuです。ニコニコ

 

今日も前置きは無く、いきなり本題に(#^^#)

 

ブログ「手術・退院後~薬物治療開始までの経緯」(その2)<治験の選択の話>の続きの話です。

 

*****

 

 

さて、前回のブログで治験を行うことに同意しましたが、直ぐに治験開始!という訳にはいきませんでした。

まず、治験を行う・行わないに関わらず、薬物治療については手術後2~3ヶ月経過後に行うこととなりました。

(つまり、手術後直ぐには薬物治療は出来ないということ)

 

理由は以下の為。

 

薬物治療で使用する分子標的薬は「血管新生阻害剤」と言われるもので、要はがんが増殖する際に栄養を取り込むための新たな血管を作ること抑える薬です。

(この血管新生を抑えることで、結果としてがんの増殖を抑えます)。

そして、この薬はがん以外の正常な細胞の血管新生も一部阻害してしまいます。

 

手術後に傷口が治るためには、新たな細胞や血管が出来る必要がありますが、分子標的薬はそれを抑えてしまい治癒が遅れてしまいます。

つまり、手術直後に分子標的薬を投与してしまうと切除した腎臓部分を含む傷口の治癒を阻害することになります。

そのため、(体の内側のダメージも含めた)傷口が完全に治るまでの2~3ヶ月間は薬物治療は出来ず、経過観察(無治療)となります。

 

この無治療の期間に、治験への同意書へのサインや、治験患者の要件を満たしていることの確認の検査を行うこととなりました。

 

まず、私にとって一番重要だったのは、治験がキイトルーダ+インライタ群か、或いはスーテント群か、どちらに割り振けられるかということです。

仕事で治験に関わったことがあるので知っていたのですが、どちらの群に振り分けられるかは完全な未作為抽出になります。

(要は全くの運です!)

 

無神論者の私ですが、希望したキイトルーダ+インライタ群に当たる様に神頼みをしたところ、なんとその群に振り分けられました!

 

パチスロ・パチンコのギャンブルを長年していた経験から、私は人より運が付いていない星の元に生まれた「持っていない男」ということは重々承知していたのですが、人生ここ一番の分岐点での運はついていました!

 

これは、正直とても嬉しかったです!

・・・でも、この喜びは長く続きませんでした。

 

実は私が行う予定の治験では、患者に幾つかの条件が求められます。

一つは、今まで他の化学治療を受けたことが無い人。

これは、そもそも当てはまる人にしか病院は治験を提案しません。

よって、この条件については私が提案を受けた時点でクリア。

 

もう一つの条件は、他の重篤な疾患に罹患していないことです。

今までの会社の健康診断ではオールAだったので(それでも、腎がんはステージ4になっても健康診断では見つけられませんでしたが・・・)、癌以外の病気に罹患していることは、まず無いだろうとたかをくくっていました。

(恐らく主治医も、今までCTや血液検査で(癌以外は)特に問題のある数値では無かったので、クリアになると考えていたと思います)

 

しかし詳細な血液検査の結果、私は自己免疫疾患で甲状腺疾患の「橋本病」に罹患していることが判明しました。

 

今まで50年間生きてきて体に何の不調も無かったのに、実は慢性疾患に罹患していたというのはかなり衝撃的でした。

しかも、「橋本病ってそもそも何?」

という状況。

 

橋本病について調べてみると、自己免疫の異常による病気で、圧倒的に女性の罹患率が高いとのこと。(男女比は約1対20~30程度)

 

但し、橋本病だからといって直ぐに体に不調を来すものではないそうです。

甲状腺ホルモン数値が正常で自覚症状も無い場合は、特に治療の必要はないとのことです。

なので、自覚症状が無い場合は橋本病に罹患していることにも気が付かずに寿命を全うする場合も多いととのこと。

 

私の場合も甲状腺ホルモンの数値自体は特に問題は無かったので、今回がんに罹患していなければ、おそらく橋本病だと気が付かずに一生を終えていたでしょう。

 

今回私が橋本病に罹患しているのは何故問題になるのかというと、治験で投与する免疫チェックポイント阻害剤(キイトルーダ)の重篤な副作用としてirAE(自己免疫疾患関連副作用)が挙げられているためです。

そして、元々自己免疫疾患を有する人が免疫チェックポイント阻害剤を使うと、重篤な副作用が起こるリスクが(正常な人と比べて)高くなる恐れがあるためです。

 

つまり、橋本病に罹患している私は、免疫チェックポイント阻害剤の投与により重篤な副作用が出る可能性があります。

 

そのため、私が自己免疫疾患(橋本病)を抱えていることが判明したことで治験開始は一旦保留となり、製薬会社で治験を行うことが可能か否かを判断することになりました。

 

せっかく運よく免疫チェックポイントの治験に巡り合えて、さらに2分の1の確率を潜り抜けて免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬の群に振り分けられたというのに、最後の最後で自分も知らなかった「橋本病」の罹患が原因で治験を受けられないかも知れない・・・

 

結構テンション下がりまくりましたが、こればっかりは私自身の力で何とか出来るものでは有りません。

 

そこで治験が再開できる様に、またまた神頼みをしたところ(繰り返しますが、私は無神論者です(笑))、嬉しいことに製薬会社から治験実施許可が出たと治験コーディネータさんから連絡が有りました!

 

これは、本当に凄く嬉しかったです。

 

しかし、やはり「橋本病」という自己免疫疾患のハンデを背負って免疫チェックポイント阻害剤を投与したリスクの代償は大きく、「薬剤性甲状腺炎」という、irAE(自己免疫疾患関連副作用)を発症することになり、一生甲状腺ホルモン(チラージン)の薬を飲み続けなければならない体となったことは、以前のブログでも記したところです。

 

しかし(以前のブログでも書きましたが)、この治療は効果の期待とリスクを充分理解した上で自ら望んで選択したこと、またそのリスク(副作用)の代償として肺の腫瘍の縮小という非常に大きな効果が得られたので、全く後悔はしていません

 

さて話は戻って、治験を行うための検査結果が一応クリアとなり、後は手術から約3ヶ月後の2017年11月初旬に治験を開始する運びとなりました。

 

それまでは、無治療で手術の傷を癒すことになりました。

とはいうものの、手術から約1ヶ月後には仕事に復帰し、また3ヶ月経つ前には5km程のジョギングをするまでに体力は回復しました。

 

そして、治験を行う直前に(その後の治験での効果を確認するため)CT検査や骨シンチ検査などを行ったのですが、その中で1つ衝撃的なことがありました。

 

今回はここまでです。 

その衝撃の話は、次回にお話致します。

 

その4に続く>