セント・パトリックス・デー | カズモのロックなブルックリン▪︎ライフ!

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ブルックリン在住のシンガーソングライター、わたくしkazmo grooveが日々の暮らしや感じた事を綴っていきたいと思います。

今日もニューヨークの5番街では盛大にアイルランドのパレードが行われたのだろうか。

 

オレはいつも日曜日は仕事なので、こういう行事に参加出来るチャンスは少ない。

 

夕方、仕事を終え家に帰る。

 

ポーランドのウォッカをゼロ・シュガー・コークで薄めて飲む。

 

最近は直のショットを控えている。

 

流石に胃や十二指腸にこたえる。

 

もう52だ。

 

いや、まだ52だ、という風にも捉えらる。

 

どっちでもいいことだ。

 

アルコールがオレの血液中をまた、巡り始めた。

 

今夜もそうめんをすすりながら、家で映画を観るのか。

 

ハンバーグ食いてーな。

 

材料を近所のスーパーに買いに行く。

 

最低限の材料。

 

ビーフのひき肉、玉ねぎ。

 

それだけだ。

 

帰り道の途中にアイリッシュのバーがある。

 

せっかくだ、一杯寄っていくか。

 

割りと空いている。

 

バーカウンターのど真ん中に陣取った。

 

アイリッシュ・ウィスキーとギネスをオーダー。

 

周りの客がギャーギャー騒いでいる。

 

うるせーな。うぜー。

 

そんな風に感じながら、オレの記憶は22,3の頃に戻った。

 

当時、オレはロンドンに住んでいた。

 

語学学校に通っていた。

 

オレのクラスの先生はデイヴィッド。

 

アイルランド人だ。

 

彼はオレをよく飲みにつれていった。

 

うまいギネスがある店を教えてくれた。

 

勘定を払うのはいつもオレだった。

 

外国人相手の語学学校の教師。

 

給料なんて、二束三文だろう。

 

ある時、デイヴィッドとあるパブで飲んでいた時に

 

となりの席のイギリス人の酔った女の二人組が

 

オレをからかい始めた。

 

もう、めんどくさかったので

 

「ファック・ユー」と中指を突き立てた。

 

それにはみんな驚いて、

 

デイヴィッドとこの酔った馬鹿女たちの間で

 

論争が起こった。

 

これがイギリスだ。

 

ニューヨークでは中指を突き立てるなんて当たり前の事。

 

まあ、いい。

 

デイヴィッドは、

 

アイルランドの作家、ロディ・ドイルを教えてくれた。

 

オレはロディ・ドイルを読み漁った。

 

なかなか、面白い。

 

みんなも読んでみるといい。

 

ダブリンの近郊に架空の地域があって、そこで起こる日常の珍事件を取り上げる形の小説だ。

 

そんなある日、夏休みが訪れる。

 

デイヴィッドはアイルランドの実家に帰るらしい。

 

「よかったらオレの家に遊びに来いよ。」

 

「オーケー、そうする。」

 

ロンドンからダブリンまで飛行機で30分。

 

めちゃ近い。

 

ダブリンのトリニティー大学の寮に滞在する。

 

数々の有名な作家がここから巣立っていった。

 

シン・リジーやU2がアマチュア時代に演奏していたバーに立ち寄った。

 

ギネス・ビールの工場も見学した。

 

いや、やっぱり本場のものは違いまっせ。

 

それから、電車でぐるっと周って、デイヴィッドの実家のある

ゴルウェーに行った。

 

そこに滞在したのはいいんだけど、天候が悪くてね。

 

それで映画を観に行く事にした。

 

その時に上映していたのがジム・キャリーの「マスク」。

 

これが面白くてね。

 

マジでツボにハマった。

 

キャメロン・ディアスも可愛かったしね。

 

(キャメロンはたまにオレの店に買い物に来る。)

 

ある日、デイヴィッドはオレを車に乗せて、ドライブする。

 

もう誰もいない湿地地帯みたいなのがあってね。

 

この世の果て、みたいなところ。

 

ちょっとした池とコケとなんか見たこともない植物が生えていてね。

 

これは見るに値する風景だったかな、と今思う。

 

そんな事を考えていると、

 

若い女性二人が店に入ってきた。

 

一人の女の子はウィスキー&ソーダを頼んでいた。

 

彼女が戻ってきた。

 

バーテンダーに言う。

 

「もしかして、このドリンクのウィスキー、ジェイミソンじゃない?」

 

「ジェイミソンは私がこの世で唯一飲めないウィスキーなのよ。」

 

おいおい、大袈裟だな。

 

オレは彼女に言った。

 

「リッスン、ベイビー。オレが今、飲んでるのはタラモアデューという同じアイリッシュのウィスキーなんだけど、それトライしてみれば?結構スムースな感じで旨いよ。まあ、それも君の口に合うかはわからないけど。」

 

彼女はトライした。

 

「ああ、私、こっちの方が好きだわ!」

 

「そうかい。そりゃよかった。」

 

「あんた、名前なんていうんだい?」

 

「ニコルよ。あなたは?」

 

「カズだ。」

 

「Kで始まるカズ?」

 

「そうだ。」

 

「この辺に住んでんの?」

 

「そうよ。」

 

「じゃあ、また会うかもな。」

 

彼女は友達の元へ戻っていった。

 

すると右斜め前にはまた違う女が座っていた。

 

彼女はオレに話かけてきた。

 

「あんたねえ、自分がクールだと思ってそこに座ってるでしょ?」

 

「そんなことはねーよ。」

 

「あんたはね、自分がカッコいいと思ってそこに座ってるのよ。」

 

「そう努力してるよ。」

 

「あんたは努力なんかしてないわ。もうそうわかってそこに座ってるのよ。」

 

「ああ、そう?それはそれでいいや。オレに何か用?」

 

「インスタグラムやってる?」

 

「いちおうね。」

 

「あんたのアカウント教えて。」

 

オレはオレのアカウントを教えて彼女は店を出ていった。

 

だから、どうなんだ? っていう話だけども。