ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが、ビートルズの曲のイントロを1秒聴いただけで、曲名を当てる、というのをやっていたけど、オレも多分ほとんどわかるんじゃないかな。
彼も一曲間違っていた。
幼いころ、父親のレコード棚から適当なレコードを抜き出してかけていた。
マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、キース・ジャレット、石原裕次郎。
裕次郎はよく聴いたので、今でも彼の曲は何曲かカラオケで歌える。
ああ、あと彼はウエスタンとジョン・ウエィンをこよなく愛したので、こんなシングルもあった。
そのレコード棚には何枚かビートルズのレコードも混じっていた。
確か、「ラバー・ソウル」、「アビー・ロード」、そして「ハロー・グッドバイ」のシングル。
父親によると、「初めて聴いた時は全然好きじゃなかった。ちゃらちゃらした音楽に女の子がキャーキャーわめいているだけの印象だった。」
「でもラバー・ソウルを聴いた時その印象が変わった。え?これあの同じグループ?その頃からビートルズの音楽を真面目に受け取るようになった。」
でも幼い頃のオレに「ラバー・ソウル」や「アビー・ロード」、ましてや「アイ・アム・ザ・ウォルラス」を理解するのは無理だった。適当に聴いて忘れてしまっていた。
時は経ち、オレは中学一年になっていた。
同じクラスの林君。(彼とは庭球部でダブルスのペアを組む事になる。)
彼も音楽にすごく興味がある男で、毎晩ラジオでいろんな曲を聴いていた。
ある日彼が訊いてきた。
「ねえ、ビートルズって知ってる?」
「ああ、知ってるよ。」
「どんな曲が良いの?」
「そうだね、イエスタデイとかレット・イット・ビーとかじゃない?」
オレはたまたま頭に思い浮かんだ曲を言った。
「その曲が入ってるレコード持ってる?」
「もちろん!」
オレは嘘をついた。ちょっと音楽通だ、というフリをしたかったのだろう。
「じゃあ、そのレコード貸してよ。是非聴いてみたいんだ。」
「いいよ。」
オレはナケナシの小遣いを片手に駅前のレコード屋に訪れた。
イエスタデイとレット・イット・ビーが収録されているレコードを買いに。
血眼になって探すと、あった。東芝EMIから出ている編集版が。
ありがとう、東芝EMI!
2800円ぐらいだったかな。
即座に買って、一回も聴かずに次の日、学校に持っていって林君に渡した。
「どうぞ。」
「おお、ありがとう!」
2週間後、林君がレコードを返しに来た。
「ありがとう、このレコード最高だよ!」
興奮した調子で話していた。
「どういたしまして。」
でも、オレはまだこのレコードを聴いた事が無い。
そんなに良かったのか。
オレも聴いてみるか。
家に帰って、このレコードに針を落とした。
「おお!、おおお!」
その瞬間からこのレコードの虜になった。
毎日聴いた。
それからビートルズのレコードを全部買った。
当時、ビートルズのファンクラブが日本にもあって、オレと林君はすぐさま会員になった。
俺達は山口に住んでいたが、一番近い会合が広島で行われた。
広島郵便貯金ホールだったろうか。
俺達は毎回参加した。
ビートルズの映画もその時に観た。
「ビートルズがやって来る、ヤア、ヤア、ヤア」だ。
一般的には「A Hard Days' Night」と知られている映画。
ジョンがやっぱりいいね。
反逆精神とユーモアとインテリジェンス。
オレにビートルズを再発見させてくれた、林君には感謝したい。
次はストーンズについて書こう。